ご利用は計画的に
「……は?」
アスランが発した言葉の意味が理解できず、カガリは二、三度瞳を瞬かせた。
そんなカガリの様子に、アスランは畳み掛けるように言った。
「返済できなかった場合は、俺と結婚すること。それが条件だ」
いつの間にか、アスランの口調から敬語が抜けていたが、そんなことに気が付く余裕は無かった。
アスラン・ザラは一体何を言っているのだろう。
これは冗談だろうかと、彼の顔を見つめても、彼は緩い笑みを浮かべたままだ。
「……それは、どういう意味でしょうか」
「どうって、言葉通りの意味だ」
「結婚って……」
「そうだ。俺と結婚してもらう」
「ふざけるのはやめてください!」
カガリは勢いにまかせて立ち上がり、掌をテーブルに叩きつけた。
その衝撃に、グラスからワインが毀れそうになる。
「私は真剣にザラ取締役に融資のお願いをしにきたんです。それをそんなっ」
「心外だな。俺はふざけてなんていない」
アスランはそう言ってすっと立ち上がると、テーブルを回って、カガリの横に立った。
そうして叩きつけられたままの細い手首を取る。
「なっ……、何だよ、放せっ」
少し怯えたようなカガリは、それでも負けん気を発揮して腕を引いたが、アスランに掴まれた手首は動かなかった。
「俺は真面目な話をしている。で、君はこの取引を飲むのか?」
「こんな取引はおかしい、だって、どうして私と結婚なんて」
そこまで言ったカガリだったが、ゆるりと嗤うアスランに閃くものがあった。
ザラ・ホールディングスは、オーブ進出の機会を狙っているのだ。
しかし、自国の経済を護る為に、オーブはプラントを含む他国からの資本輸入を制限している。
オーブ以外の国の企業が、オーブで富を築くのは不可能といっていい。
だから表向きはアスハ・コーポレーションの名を残し、しかし内情はザラ・ホールディングスの傘下に置く。
それがアスラン・ザラの計画なのだろう。
カガリはぎゅっと唇をかんだ。
彼の思惑が分かっていても、この取引を突っぱねるわけにはいかなかった。
アスハを立て直すには、どうしてもこの融資が必要だ。
それ以外に道はない。
「なんて卑怯な奴……」
すぐ傍にあるエメラルドを、カガリはありったけの憎悪を込めて睨み付けた。
「すごく優しくて誠実で、紳士な人だと思っていたのに」
ほんの数分前までは、アスラン・ザラに好感すら抱いていたのに。
くやしくて、琥珀の瞳に涙が滲む。
「君こそ同級生という繋がりを利用したじゃないか。俺は楽しく昔話をするものだと思って楽しみにしていたのに、結局は融資のお願いだろう。俺だった騙された。お互い様だろ」
「それは……」
アスラン・ザラの冷たい声と視線に、カガリは顔を背けた。
彼の言うことは最もだった。
同級生という細い繋がりにすら縋らずにはいられなかった現状が情けない。
「でも……、結婚は!」
何としてでも避けたくて、カガリは訴えるようにアスランを見つめた。
自分の瞳にみるみる涙が溜まっていくのが分かる。
借金の代わりに結婚だなんて、一体いつの時代の話だというのか。
カガリも卑怯だったが、アスランの提案に比べたら可愛いものだ。
「ちゃんと返してくれれば良い話だ。アスハを立て直して必ず返すと、さっき自分で言ってたじゃないか」
「それは、そうだが……」
「立て直すんだろう、アスハを」
カガリを射抜くアスランは、真剣な表情だった。
その様子に、カガリは覚悟を決めた。
アスハを必ず立て直す。
血反吐を吐こうが、この男の前に借金全額を叩き返し、あっと驚かせてやる。
オーブにプラントの資本を参入させてたまるものか。
カガリは瞳を閉じると、しばらくしてからゆっくりと頷いた。
「期待しているよ」
満足そうなアスランに、静かな闘志を燃やしていたカガリだったが、次の言葉に再び身体を固くした。
「この取引の利子は君の身体だ。頻度は、そうだな月三回くらいか」
アスランが発した言葉の意味が理解できず、カガリは二、三度瞳を瞬かせた。
そんなカガリの様子に、アスランは畳み掛けるように言った。
「返済できなかった場合は、俺と結婚すること。それが条件だ」
いつの間にか、アスランの口調から敬語が抜けていたが、そんなことに気が付く余裕は無かった。
アスラン・ザラは一体何を言っているのだろう。
これは冗談だろうかと、彼の顔を見つめても、彼は緩い笑みを浮かべたままだ。
「……それは、どういう意味でしょうか」
「どうって、言葉通りの意味だ」
「結婚って……」
「そうだ。俺と結婚してもらう」
「ふざけるのはやめてください!」
カガリは勢いにまかせて立ち上がり、掌をテーブルに叩きつけた。
その衝撃に、グラスからワインが毀れそうになる。
「私は真剣にザラ取締役に融資のお願いをしにきたんです。それをそんなっ」
「心外だな。俺はふざけてなんていない」
アスランはそう言ってすっと立ち上がると、テーブルを回って、カガリの横に立った。
そうして叩きつけられたままの細い手首を取る。
「なっ……、何だよ、放せっ」
少し怯えたようなカガリは、それでも負けん気を発揮して腕を引いたが、アスランに掴まれた手首は動かなかった。
「俺は真面目な話をしている。で、君はこの取引を飲むのか?」
「こんな取引はおかしい、だって、どうして私と結婚なんて」
そこまで言ったカガリだったが、ゆるりと嗤うアスランに閃くものがあった。
ザラ・ホールディングスは、オーブ進出の機会を狙っているのだ。
しかし、自国の経済を護る為に、オーブはプラントを含む他国からの資本輸入を制限している。
オーブ以外の国の企業が、オーブで富を築くのは不可能といっていい。
だから表向きはアスハ・コーポレーションの名を残し、しかし内情はザラ・ホールディングスの傘下に置く。
それがアスラン・ザラの計画なのだろう。
カガリはぎゅっと唇をかんだ。
彼の思惑が分かっていても、この取引を突っぱねるわけにはいかなかった。
アスハを立て直すには、どうしてもこの融資が必要だ。
それ以外に道はない。
「なんて卑怯な奴……」
すぐ傍にあるエメラルドを、カガリはありったけの憎悪を込めて睨み付けた。
「すごく優しくて誠実で、紳士な人だと思っていたのに」
ほんの数分前までは、アスラン・ザラに好感すら抱いていたのに。
くやしくて、琥珀の瞳に涙が滲む。
「君こそ同級生という繋がりを利用したじゃないか。俺は楽しく昔話をするものだと思って楽しみにしていたのに、結局は融資のお願いだろう。俺だった騙された。お互い様だろ」
「それは……」
アスラン・ザラの冷たい声と視線に、カガリは顔を背けた。
彼の言うことは最もだった。
同級生という細い繋がりにすら縋らずにはいられなかった現状が情けない。
「でも……、結婚は!」
何としてでも避けたくて、カガリは訴えるようにアスランを見つめた。
自分の瞳にみるみる涙が溜まっていくのが分かる。
借金の代わりに結婚だなんて、一体いつの時代の話だというのか。
カガリも卑怯だったが、アスランの提案に比べたら可愛いものだ。
「ちゃんと返してくれれば良い話だ。アスハを立て直して必ず返すと、さっき自分で言ってたじゃないか」
「それは、そうだが……」
「立て直すんだろう、アスハを」
カガリを射抜くアスランは、真剣な表情だった。
その様子に、カガリは覚悟を決めた。
アスハを必ず立て直す。
血反吐を吐こうが、この男の前に借金全額を叩き返し、あっと驚かせてやる。
オーブにプラントの資本を参入させてたまるものか。
カガリは瞳を閉じると、しばらくしてからゆっくりと頷いた。
「期待しているよ」
満足そうなアスランに、静かな闘志を燃やしていたカガリだったが、次の言葉に再び身体を固くした。
「この取引の利子は君の身体だ。頻度は、そうだな月三回くらいか」