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「無理って、一体どうしたんだ。体調が悪いのか」

「そういうわけじゃない、大丈夫だ」

「でも」

カガリは横を向き、アスランの視線から逃げた。
それでも、アスランは心配そうにカガリを見つめている。
察してくれないアスランが恨めしかった。

「だからっ、月のものがっ」

言いながら、顏がかっと熱くなった。
異性に自分の体調のことを告げるのは初めての経験だった。
アスランは一瞬きょとんした顏でカガリを見て、次いで慌てたように身を引いた。

「あっ、そうか、すまない」

謝罪を無視し、カガリはそっぽを向いたまま動かない。
恥ずかしくて、アスランの顏がまともに見られなかった。

「ごめん、俺鈍くて」

「そういうわけだから、今日は勘弁してくれ。他の日に振り替えていいから」

そう言い捨て、さっさとひとり寝室に向かえば、アスランが慌ててついてきた。

「家の者には今日泊まりだと伝えてしまったから、悪いがこのままこの部屋に泊まらせてもらう」

自分でもひどくぶっきら棒な言い方だと思った。

「もちろん構わないが、俺はソファで寝たほうがいいかな」

「何でだ?」

ベッドに腰掛けて問い返せば、アスランは気まずそうに下を向いた。

「いや、女性はそういうとき、異性がいると嫌なんじゃないのか」

予想外の答えに、カガリは思わずまじまじとアスランの顏を見つめた。
二人の上下関係ははっきりとしているというのに、アスランは何故こうも気を使うのか。
自分の好きなように振舞って構わないのだ。
カガリはアスランに逆らえないのだから。
一方的な契約を取り付けたくせに、アスランは面倒見がよく優しくて、カガリはごくたまに自分の立場を忘れるときがあった。

「別に気にするな」

洗面所で薬を飲んだのに腹の痛みが出てきて、カガリはベッドの上で丸くなった。

「腹痛いのか」

隣に横たわるアスランが、背中越しに声を掛けてくる。

「いつものことだから、大丈夫だ」

カガリの生理痛はいつも大層重かった。
というのも、カガリは昼夜激務の為ひどい生理不順なのだ。
数か月来ないというのもざらで、その為一回一回がひどく重い。
社長という肩書を持ち、男性社会で働かねばならないカガリは、否応なしに女性であることを突きつけられていた。

「でも、すごく辛そうだ。下腹が痛いのか」

「下腹と、腰」

気丈に振舞う余裕がなくなり、呻くように言うと、大きな手がそっと腰に触れた。

「さすったら、少しは良くなるか」

「ちょっ、アスラ……」

肩越しに振り返ると、こちらを見つめるアスランと目が合った。
その眼差しが優しくて、月のものとは違う違和感が胸に走り、カガリは慌てて顔の向きを戻した。

「そんなことしなくていいから、寝てろよ。大丈夫だって」

「いいから、カガリはじっとしていろ」

それが幼子を宥めるような口調だったので、腹の痛みもあり、カガリは大人しくアスランに身を委ねることにした。
確かに丁寧な動きで腰をさすられると、痛みが幾分和らいでいくのだ。

「本当に女は損だ」

「え?」

こんなもの、なければいいのに。
聞き返してきたアスランには応えず、カガリは唇を噛んだ。
男性に負けないような身体が欲しかった。
経済界で生きていくには、女性はハンデが多すぎる。
男性と同じ時間働けるだけの体力があれば、アスハもこんなことにならなかったのかもしれない。
そう思うと、カガリはいつも悔しくて堪らなくなる、

「お前も損だよな」

「俺が?」

「女を呼びつけておいて、やれないなんてさ」

皮肉のつもりだったが、背中越しにアスランが柔らかく微笑んだのが分かった。

「そりゃ、君のことは抱きたいけど、こうしているだけでも、俺は充分なんだ」

不意打ちな答えに、カガリは思わず黙ってしまった。
どう解釈していいか分からなかった。

「君が頑張っているのはよく分かっている。だから、たまには甘えていいんだ」

何故お前なんかに。
そう悪態をつきたかったのに、薬のせいもあるだろうが、ゆっくりと背中をさする手が心地よくて、瞼が重くなってくる。
誰かに労わりながら触れてもらうことが、こんなに暖かいなんて知らなかった。
アスランの手のぬくもりが心地よくて、幸せな眠気に逆らわず、カガリはゆっくりと目を閉じた。
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