夜明け
「ザラ議員がオーブに?」
「そう、今度の式典にプラント代表としてくるんだって」
閣議が終わるまで護衛たちが待機する控え室。
そこにいる者たちは、国の要人の護衛をしている者たちばかり。
こうして控え室で一緒になったり大きなイベントでは協力しあって警備をすることもあるので、互いに顔なじみだ。
信頼しあい気心しれてる仲なので、控え室での会話はフランクだが、それぞれが要人の護衛なので、国の動向をいち早くつかめる。
そして要人の護衛を務めるにあたっては、情報に精通している方がいい。
そんな想いから、護衛たちは談話室で情報交換をするときもある。
「アスカ一佐はザラ議員とザフトで一緒だったんだろう?」
「ああ、まあ・・」
護衛たちはシンがかつてオーブを焼いたザフトの一員だと知っているが、憎むことはせず、同じ護衛の一員としてシンに接していた。
「やっぱり優秀かい?君の目から見たザラ議員はどういう人だ?」
「・・・」
アスランはシンの上司だった。
自分は彼に反発してばかりだった。
そう、彼の乗るMSを討ったこともある。
彼との記憶は自分の見たくない暗い過去を呼び起こすものだ。
「無口で真面目な人ですよ。」
シンは無感情にボソリと呟いた。
「でもアスラン・ザラって昔代表の護衛をしてたアレックス・ディノって噂ですよね」
「実際そうらしい。確かに彼は優秀だったが、何よりとびきりのいい男だったよな。女軍人がキャーキャー騒いでたの思い出すよ。代表の隣にいるハンサムは誰ってさ」
シンの態度を察して護衛たちが話を明るいほうにもっていこうとする。
「でもどうやら代表の恋人って話でみんながっくりしてたよね。」
代表の恋人?
「代表がつけてた赤い指輪は彼から贈られたって」
指輪?
「でも、今はどうなんだろう。互いにオーブとプラントだし、代表も今は指輪つけてないし。」
「まあ何にせよ、今度の式典は二人の久方ぶりの再開ってことだね」
和やかな空気が流れるなか、シンは呆然としていた。
カガリとアスランが恋人なんて思いもしていなかったのだ。
シンはミネルバでのことを思い出す。
カガリはアスランのことを心配して、常に傍に居たがっていた。でもそれはミネルバの中に頼れるのはアスランしかいなかったからで。
<そうじゃ・・なかったのか・・>
でも、アスランはその後自分たちのところにきて、彼女の愛する国と戦った。
<恋人が必死に守ろうとするものを、撃てるもんか>
―――戦争はヒーローごっこじゃない!
不意に彼の言葉が蘇る。
戦争はヒーローごっこじゃない。
だからアスランは私情を捨てて軍人としての責務でオーブ軍を攻撃していたのだろうか。
<だけど・・>
シンがカガリの護衛についたこの何か月で、カガリは一度もアスランの名前を口に出さなかった。
報告書で彼の名前が出てきても特に何も言わなかったし、閣議や要人との会話のなかで彼の名前が出てきても特別な反応をしていなかった。
感情が行動や表情に直結しやすいカガリに、そんな演技ができるはずもない。
もう、何もないのだ。あの二人は。
そう思いこむことで、シンは腹のなかを渦巻く黒い感情を抑え込んだ。
「そう、今度の式典にプラント代表としてくるんだって」
閣議が終わるまで護衛たちが待機する控え室。
そこにいる者たちは、国の要人の護衛をしている者たちばかり。
こうして控え室で一緒になったり大きなイベントでは協力しあって警備をすることもあるので、互いに顔なじみだ。
信頼しあい気心しれてる仲なので、控え室での会話はフランクだが、それぞれが要人の護衛なので、国の動向をいち早くつかめる。
そして要人の護衛を務めるにあたっては、情報に精通している方がいい。
そんな想いから、護衛たちは談話室で情報交換をするときもある。
「アスカ一佐はザラ議員とザフトで一緒だったんだろう?」
「ああ、まあ・・」
護衛たちはシンがかつてオーブを焼いたザフトの一員だと知っているが、憎むことはせず、同じ護衛の一員としてシンに接していた。
「やっぱり優秀かい?君の目から見たザラ議員はどういう人だ?」
「・・・」
アスランはシンの上司だった。
自分は彼に反発してばかりだった。
そう、彼の乗るMSを討ったこともある。
彼との記憶は自分の見たくない暗い過去を呼び起こすものだ。
「無口で真面目な人ですよ。」
シンは無感情にボソリと呟いた。
「でもアスラン・ザラって昔代表の護衛をしてたアレックス・ディノって噂ですよね」
「実際そうらしい。確かに彼は優秀だったが、何よりとびきりのいい男だったよな。女軍人がキャーキャー騒いでたの思い出すよ。代表の隣にいるハンサムは誰ってさ」
シンの態度を察して護衛たちが話を明るいほうにもっていこうとする。
「でもどうやら代表の恋人って話でみんながっくりしてたよね。」
代表の恋人?
「代表がつけてた赤い指輪は彼から贈られたって」
指輪?
「でも、今はどうなんだろう。互いにオーブとプラントだし、代表も今は指輪つけてないし。」
「まあ何にせよ、今度の式典は二人の久方ぶりの再開ってことだね」
和やかな空気が流れるなか、シンは呆然としていた。
カガリとアスランが恋人なんて思いもしていなかったのだ。
シンはミネルバでのことを思い出す。
カガリはアスランのことを心配して、常に傍に居たがっていた。でもそれはミネルバの中に頼れるのはアスランしかいなかったからで。
<そうじゃ・・なかったのか・・>
でも、アスランはその後自分たちのところにきて、彼女の愛する国と戦った。
<恋人が必死に守ろうとするものを、撃てるもんか>
―――戦争はヒーローごっこじゃない!
不意に彼の言葉が蘇る。
戦争はヒーローごっこじゃない。
だからアスランは私情を捨てて軍人としての責務でオーブ軍を攻撃していたのだろうか。
<だけど・・>
シンがカガリの護衛についたこの何か月で、カガリは一度もアスランの名前を口に出さなかった。
報告書で彼の名前が出てきても特に何も言わなかったし、閣議や要人との会話のなかで彼の名前が出てきても特別な反応をしていなかった。
感情が行動や表情に直結しやすいカガリに、そんな演技ができるはずもない。
もう、何もないのだ。あの二人は。
そう思いこむことで、シンは腹のなかを渦巻く黒い感情を抑え込んだ。