夜明け
「あんた、明日代表復帰して初めての一日オフだろ」
会議が終わり自分の政務室に戻ったところで横にいたシンが口を開いた。
「ああ。でもやらなければいけないことはたくさんある。明日家に持ち帰る資料を今から・・」
「だめだ。休みなんだから仕事はするな。休むときに休んでおかないと、また風邪でぶっ倒れるぞ」
シンに軽く睨み付けられた。
確かにそうだ。
自分が無理をすれば皆に迷惑をかける。
やりたいことは山ほどあるけれど、一日くらい頭をリセットするのも大事かもしれない。
「・・そうだな。またおまえに迷惑は掛けたくないし、のんびり過ごすよ」
「いや・・あの・・」
「どうした、シン」
カガリが顔を覗き込むとシンは赤い目を空に漂わせてから、カガリに視線を合わせて意を決したように言った。
「市街地に行かないか」
街の中心部は賑わっていた。
行き交う人々にまぎれて誰もカガリに気が付かない。
「もう昼過ぎてるし、どっか入ろう。あんた、何か食べたいものある?」
「そうだな、うーん・・」
カガリが飲食街を見まわして、ある一点で視線がとまった。
「シン、あの店に行くぞ!」
カガリが指さした先は・・・
「お姫様がケバブ・・」
「悪いかよ!って、お前ヨーグルトソースなんてかけるな!ケバブにはチリソースが一番なんだぞ!」
カガリはシンからヨーグルトソースをひったくって、チリソースをたっぷりとかける。
「馬鹿!掛け過ぎだろこれは!」
カガリが食べたいと言ったのはケバブだった。およそお姫様らしくないカガリらしいと言えばそうなんだけど、でも、もっと・・
「いいから食べろって」
カガリに睨まれて、シンはチリソースがたっぷりとかかったケパブを口にする。
「辛いけど、おいしい」
「だろ?!」
大きな目でケパブを食べるシンを見つめていたカガリが満円の笑みを浮かべて、シンはその輝くような笑みにドキッとする。
広場のベンチに並んで座ってテイクアウトしたケパブを食べている自分たちって、もしかして、デートしてるように見えるんじゃないかとか、変なことを考えてしまう。
それに今日のカガリの服装は緑色のシャツに白いショートパンツで、いつもの軍服を着ているときとは雰囲気が全然違う。
普通の可愛い女の子のようで・・
「どうかしたのか?」
「うわっ・・!」
急に赤くなって黙り込んでしまったシンをカガリが覗き込む。カガリの琥珀の瞳がすぐ目の前にあって、シンはさらに動揺してケパブを落としそうになる。
「な、なんでもない!」
「そうか?ならお前はやく食べろよ。まだ行きたいところあるんだから時間がもったいないだろ。」
それから二人は買い物してゲームセンターで遊んで、気が付ともう夕方だった。
「今日はありがとな、シン」
「別に、あんただけの為じゃない。俺だって久しぶりに遊びたかったし、それにあんたに少しは息抜きしてもらわないと。またこの前みたいに倒れられてら困るの俺だし」
夕暮れ時、アスハ邸に向かう車のなか、カガリにお礼を言われてもシンは素直になれなかった。
「そうか・・」
ふとカガリが目を細める。夕暮れの光がカガリの金色の髪と瞳をオレンジ色に染め上げる。
「でも、本当にこんな風に自由に街を歩くのは久しぶりだったんだ。」
シンは車を運転しながら、カガリの方に視線を向ける。
カガリは憂いを含んだ何とも言えない表情をしていた。
「街は賑やかだったな。とても活気があって、戦火に巻き込まれたあととは思えない。オーブの民は強いな」
〈あんたが頑張ってるからだよ〉
シンは本当はそう言いたかったけど、何故だか言葉が喉から出てこなかった。
「私は、それに応えなけれなならない」
静かな声だったけど、その言葉に確かな意思が感じられた。
揺るぎない確固たる意志。
隣にいる少女は本当にこの小さく細い身体で国を背負っていくつもりなのだ。
分かりきっていたことだけど、シンは初めてそれを心の奥から実感した。
それはどんなに重い責任だろう。
シンはブレーキをかけて車を急停車させた。
「シン?どうしっ・・」
訝しるカガリをそのまま掻き抱いた。
会議が終わり自分の政務室に戻ったところで横にいたシンが口を開いた。
「ああ。でもやらなければいけないことはたくさんある。明日家に持ち帰る資料を今から・・」
「だめだ。休みなんだから仕事はするな。休むときに休んでおかないと、また風邪でぶっ倒れるぞ」
シンに軽く睨み付けられた。
確かにそうだ。
自分が無理をすれば皆に迷惑をかける。
やりたいことは山ほどあるけれど、一日くらい頭をリセットするのも大事かもしれない。
「・・そうだな。またおまえに迷惑は掛けたくないし、のんびり過ごすよ」
「いや・・あの・・」
「どうした、シン」
カガリが顔を覗き込むとシンは赤い目を空に漂わせてから、カガリに視線を合わせて意を決したように言った。
「市街地に行かないか」
街の中心部は賑わっていた。
行き交う人々にまぎれて誰もカガリに気が付かない。
「もう昼過ぎてるし、どっか入ろう。あんた、何か食べたいものある?」
「そうだな、うーん・・」
カガリが飲食街を見まわして、ある一点で視線がとまった。
「シン、あの店に行くぞ!」
カガリが指さした先は・・・
「お姫様がケバブ・・」
「悪いかよ!って、お前ヨーグルトソースなんてかけるな!ケバブにはチリソースが一番なんだぞ!」
カガリはシンからヨーグルトソースをひったくって、チリソースをたっぷりとかける。
「馬鹿!掛け過ぎだろこれは!」
カガリが食べたいと言ったのはケバブだった。およそお姫様らしくないカガリらしいと言えばそうなんだけど、でも、もっと・・
「いいから食べろって」
カガリに睨まれて、シンはチリソースがたっぷりとかかったケパブを口にする。
「辛いけど、おいしい」
「だろ?!」
大きな目でケパブを食べるシンを見つめていたカガリが満円の笑みを浮かべて、シンはその輝くような笑みにドキッとする。
広場のベンチに並んで座ってテイクアウトしたケパブを食べている自分たちって、もしかして、デートしてるように見えるんじゃないかとか、変なことを考えてしまう。
それに今日のカガリの服装は緑色のシャツに白いショートパンツで、いつもの軍服を着ているときとは雰囲気が全然違う。
普通の可愛い女の子のようで・・
「どうかしたのか?」
「うわっ・・!」
急に赤くなって黙り込んでしまったシンをカガリが覗き込む。カガリの琥珀の瞳がすぐ目の前にあって、シンはさらに動揺してケパブを落としそうになる。
「な、なんでもない!」
「そうか?ならお前はやく食べろよ。まだ行きたいところあるんだから時間がもったいないだろ。」
それから二人は買い物してゲームセンターで遊んで、気が付ともう夕方だった。
「今日はありがとな、シン」
「別に、あんただけの為じゃない。俺だって久しぶりに遊びたかったし、それにあんたに少しは息抜きしてもらわないと。またこの前みたいに倒れられてら困るの俺だし」
夕暮れ時、アスハ邸に向かう車のなか、カガリにお礼を言われてもシンは素直になれなかった。
「そうか・・」
ふとカガリが目を細める。夕暮れの光がカガリの金色の髪と瞳をオレンジ色に染め上げる。
「でも、本当にこんな風に自由に街を歩くのは久しぶりだったんだ。」
シンは車を運転しながら、カガリの方に視線を向ける。
カガリは憂いを含んだ何とも言えない表情をしていた。
「街は賑やかだったな。とても活気があって、戦火に巻き込まれたあととは思えない。オーブの民は強いな」
〈あんたが頑張ってるからだよ〉
シンは本当はそう言いたかったけど、何故だか言葉が喉から出てこなかった。
「私は、それに応えなけれなならない」
静かな声だったけど、その言葉に確かな意思が感じられた。
揺るぎない確固たる意志。
隣にいる少女は本当にこの小さく細い身体で国を背負っていくつもりなのだ。
分かりきっていたことだけど、シンは初めてそれを心の奥から実感した。
それはどんなに重い責任だろう。
シンはブレーキをかけて車を急停車させた。
「シン?どうしっ・・」
訝しるカガリをそのまま掻き抱いた。