アスラン・ザラと秘密の乙女
「ラクス・・酷いよ」
煙の中から現れたのは、茶色い髪の女の子だった。
紫色の丸い瞳が可愛らしい。
「だって、悪ふざけがすぎるんですもの。お仕置きするには、これが一番いいでしょう」
「全く・・解き方も分からないのに」
悪びれなくコロコロと鈴を鳴らしたように笑うラクスにキラは苦笑した。
大体何でラクスは秘密の部屋にはいることができたのだろう。
「それではアスランと協力しあって魔法を解く鍵を探すしかありませんね」
「それは御免だね」
「俺だって!」
キラとアスランの声が見事にはもる。
「女の子なんて冗談じゃない!お前が魔法を解く呪文や方法を知らなくても、先生方なら知っておられるはずだ」
付き合っていられないと、ザフトのクルーゼ先生のもとへ向かおうとしたアスランだったが。
「君たち、一体何やってるんだ?」
ポンっという破裂音と共に、煙のなかから二人の教師が現れた。
「マリュー先生、ムウ先生、こんにちは」
「こんにちはじゃないだろ、キラ。これは一体どういうことだ」
「まあ!それにザラ君まで・・!」
さすがSEED魔法学校で教鞭をとっているだけあり、二人はすぐに茶色と濃紺の髪の少女がキラとアスランだと分かったようだ。
「大体、四つの寮の生徒が一同に集まってるなんて、一体何がどうなっているんだ」
「まあ・・これには色々事情があって」
ムウの呆れ顔に、キラが苦笑いをする。
「フラガ先生!ちょうどいいとこに来てくださいました。状況説明は後でしますから、今すぐこの魔法を解いて下さい!」
ムウもマリューもアークエンジェル所属ではあるが、教員は教員だ。
生徒を助ける義務がある。
アスランはすがるように願い出た。
一刻も早くこの忌まわしい姿を何とかしたかった。
「悪いが、そんな魔法、俺たちも知らなくて。だから解き方も検討がつかない」
「私たちが知らない魔法だなんて、よっぽどのものよ。キラ君・・一体どこでそんな魔法を覚えたの」
「本に走り書きがされてるのを、見たことがあって・・でもすごい古い本だったから・・」
「もう廃却されてるだろうな」
ムウがため息をつくのと同時に、アスランは絶望に襲われた。
ザフトの生徒たちは、ムウとマリューをアークエンジェル所属の教員というだけだ馬鹿にしているが、アスランは二人がかなり上級の魔法使いだということを知っていた。
その二人がお手上げの魔法だなんて。
きっとザフトのクルーゼ先生やアデル先生のもとに行っても、結果は同じだろう。
アーサー先生なんて論外だ。
(そんな・・どうすれば・・)
「ところで、こんな悪質なイタズラをしたのは誰なんだ?」