アスラン・ザラと秘密の乙女

ほっそりとした身体。
折れそうに細い腰。
波打つ濃紺の長い髪は、扇形に広がって。
顔も身体も一際華奢になってしまったアスランの顔立もまた、少年だったときとは微妙にバランスを変えて、神様が丁寧に作り上げた芸術品のようで。
カガリは思わず息をとめた。

「こんな体にされて。こんな服を着て。こんな情けない姿を君に見られるなんて、たまらない。耐えられないよ」

アスランは涙ぐんで、シーツを握りしめる指に力を込めた。
濃く長い睫が、小刻みに揺れている。

「アスラン・・ごめん・・」

悲しみにくれるアスランは、薄幸の美少女そのもので。
美しすぎる容姿に目を奪われていたカガリだったが、自分の愚かさに、堪らない気持ちになる。

「ごめんカガリ・・君が謝ることはない。君は騙されていただけで、ちっとも悪くないのに。俺のほうこそ、すまない。少し、感傷的になったいるみたいだ。まだ・・受け入れられないみたいで」

カガリは悪くない。
アスランもそれはよく分かっている。
むしろ自分の為を思って魔法をかけてくれたのだ。
ただ、その魔法が・・・

(どうして、よりによって・・)

先ほどまではカガリを罰則から守る余裕もあったアスランだったが、こうして現実と向き合ってしまうと、死にたいくらいの絶望感に苛まれてしまっていた。
カガリに自分のせいで辛い思いをさせたくない。
そう思うのに、カガリを思いやるような言動ができない。
今の状況が耐えられなくて。

女の子になってしまうだけなら、まだ、我慢できた。
いずれ魔法も解けるだろう。
だけどそれを、好きな女の子に見られるのは、堪らなかった。

(カガリに・・カガリに見られたくない・・嫌だ・・)

こんな屈辱が他にあるだろうか。

「ごめん。少しでいい。一人にしてくれないか」

「アスラン・・」

カガリは傷ついたようだったが、出て行ってくれと言わなかっただけ、アスランは自分を褒めてやりたかった。

(ごめんカガリ・・すぐに気持ちを整えるから・・)

早く出て行ってほしい。
その瞳に映っていたくない。
アスランはそう強く思ったが。

「アスラン!落ち込むことないぞ!!アスランはすっごい綺麗なんだからな!」

「は?」

励ますような声に、アスランは思わず目を丸くしてしまった。
しかし呆気にとられるその顔でさえ、見とれるほどに美しい。

「綺麗すぎてドキドキする・・私だって同じ女なのに、こうも違うのか・・」

「カガリ・・あの・・」

「だから自信を持て!!アスラン」

カガリはぐっと拳を握りしめ、見当違いな方向でアスランを励まし、とどめとばかりに力強く言った。

「お前は私が守るぞ!」

悲しみに暮れるアスランの姿は、儚げで、か細くて。
風にも耐えぬ花のようなアスランを見て、カガリは心を打たれ、強く心に誓ったのだった。
この美少女は、自分が守ってやるのだと。
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