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身体を重ねて、心も重ねて。
互いの境界線が分からなくなるくらい溶け合ってしまえば
二人の鼓動が、絡み打つ。




数えきれない程の夜を過ごしたはずだった。
彼女の身体で知らないところはないと言えるほど。
それなのに、知らなかった。
律動の最中、自らの肩に、背中にしがみ付いてくるその手の愛しさを。
初めてだったのだ。
いつも頑なにシーツを握っていたその手が、自らの身体に伸ばされたのは。


だからだろうか。
涙がこみ上げてくるのは。
触れ合うたびに、心の傷が癒えていく。




アスランにとって、今までそれは求めるだけの、一方的な行為だった。
逃げるカガリを追って追って、追い詰めて。
想いを共有したことなど一度もなかった。
心は伴っていないのに、快楽に逆らえ切れず上り詰めるカガリに一時的に満足しても、すぐに心は乾いていく。
夢中になればなるほど、その後に襲ってくる虚無感。
だから彼女を何度抱いても、満たされることはなかった。

だから、アスランは今、初めて知った。
この行為が愛し合うということだと。
そして、愛し合うということが、どんなに幸せなことかと。








しばらく何も言わずに、ただ抱きしめあって、互いの感触と体温と鼓動を感じていた。
薄暗い天幕のなか、潮騒と松明の弾ける音に、二人の呼吸が重なっていた。
その呼吸も段々と落ち着いて、身体を起こしたアスランが心配そうにカガリの顔を覗き込んだ。

「カガリ・・大丈夫か・・?」

「ん・・アスラン・・」

「その、つらくない・・?」

「大丈夫だ・・」

前は意識を無くすまで容赦なく抱いてくれていたくせに、よく言うよ・・。
そんなことを思って、でも眉を下げて聞いてくるアスランが愛しくて、カガリは彼を安心させるように微笑んだ。

「カガリ・・」

それなのにアスランはますます眉を下げて泣き笑いのような表情になる。

「大丈夫だっていってるだろう。お前、さっきから泣きすぎだぞ」

「すまない・・でも・・幸せで・・こんなに幸せでいいのかって思うくらい幸せで・・」

「アスラン・・」

「分かっているさ。情けないよな。俺・・」

目を伏せ、緑の瞳を隠すように垂れた前髪を、カガリは優しく梳いてくれた。

「アスラン・・私はここにいるぞ」

「カガリ・・」

「だから大丈夫だ・・」

カガリの言葉にアスランは微笑むと、ベッドとカガリの背中に手を差し込み、彼女を抱きしめた。
トクトクと伝わってくる、愛しい人の鼓動。

「あったかいな・・カガリの身体・・」

「アスランも・・」

こうしていられることが幸せすぎて、自分は夢を見ているのではないかとアスランは思う。
でも愛しい体温と鼓動は確かに自らの腕のなかにあって。


オーブでクーデターが起き、カガリを北の塔に閉じ込めてから、ゆっくりと眠れた夜はなかった。
いつも苦しみに耐え、人知れず涙を流し、心が安らぐときなどなかったから。


だけど今、愛する人のぬくもりの中で、アスランは幸せな眠りに落ちていった。




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