ギシリ・・とカガリの身体がベッドに沈んだ。
聞こえてくるのは天幕の向こうの潮騒と松明の燃ゆる音。



「カガリ・・本当にいいのか?」

カガリをベッドに横たえてから、それを追うようにアスランはカガリの上に覆いかぶさった。

「うるさいな・・何度も言わせる気かよ・・」

恥ずかしくなって、カガリはアスランから顔を背けた。
心臓がうるさいくらいに鳴っていて、彼に聞こえたらとどうしようと心配になる。

「ごめん・・」

そんなカガリの反応を可愛いと思いつつも、また彼女を怒らせてしまった自分にアスランは苦笑する。
幼いころからそうだった。
いつもくよくよ悩む自分をカガリは叱咤してくれていた。
何よりも愛しい、自分を導いてくれる金色の光。

「カガリ・・」

「アス・・う・・ん・・」

そっぽをむいてしまった白い蝶に、アスランは口づけを落とす。
甘く深い口づけ施しながら、アスランの男にしては繊細な細く長い指がカガリの衣服にかかり、その身体を露わにしていく。
南国自用の薄い衣服はいとも容易く、カガリの身体からほどけていく。

「ん・・」

長い口づけを解いて、アスランは上半身を起こすと、自分が組み敷く少女を見下ろした。

華奢な肩に細い腰。
曝された繊細な身体は羞恥の為か、かすかに震えている。


なんて、綺麗なんだろう・・


「アスラン・・?」

恥ずかしくて目を閉じていたカガリだったが、アスランの気配が動かないのを訝しんで瞳を開けると、彼はただただ一心に自分を見下ろしていた。

「あ・・すまない」

カガリの視線に気が付いて、アスランは我に返ったようだった。

「どうしたんだ、アスラン・・」

「いや・・」

カガリの問いに、アスランは小さく呟いた。

「いいのかなって・・思って」

こんな綺麗なものを、自分のものにしてしまって。

「え?」

「何でもない・・」

アスランは微笑を浮かべると、カガリの小さな耳を食んだ。

「あっ・・」

カガリの身体がピクンと揺れる。

その反応が、愛しい・・
その声が、その震えが、その存在全てが。

何度も、それこそ数えきれないくらいにカガリを抱いたはずなのに、アスランは緊張していた。
気を抜くと、身体が震えて、また泣いてしまいそうだった。
そんな情けない自分を知られたくなくて、アスランはカガリの背中に腕を差し込み、その身体を抱きしめた。

「アスラン・・お前・・」

カガリは少し驚いたようだったけれど、小さく息をつくと、アスランの広い背中に腕を回してくれた。
普段は鈍感なのに、こういうときは驚くほど人の心に敏感な少女なのだ。
きっと、自分の心の内は伝わっているのだろうとアスランは思った。
恥ずかしいけれど、でも・・幸せだ。
想いを受け入れてもらうということは。

カガリの身体を、体温をもっと感じたくて、アスランは名残惜しかったけれど、一度身体を起こして衣服を乱暴に脱ぎ去った。
そうしてすぐにまた、カガリと重なり合おうとしたのだが・・。

「カガリ・・?」

カガリが自分の身体を凝視していることに気が付いて、アスランは動きをとめた。

「なんだ?」

「いやっ・・あの・・その・・」

「・・?」

カガリがあたふたと視線を泳がせたが、やがて観念したようにそっぽを向いて、ボソリと言った。

「アスランの身体って・・そんなふうになってるんだなって・・」

今までカガリはアスランと触れ合いたいと、自分から彼を求めたことはなかった。
いつも一方的に奪われて、彼の身体なんてまじまじ観察することなんてなかったのだが、こうして見るとアスランの身体は細身なのに綺麗に筋肉がのっていて、とても綺麗だった。
広い胸板や、たくましい腕に何故だか胸が高鳴ってしまって、カガリは恥ずかしさのあまり目を逸らしていたけれど、勇気を出してゆっくりとアスランに視線を戻したのだが。

「アッ・・アスラン?」

思わず素っ頓狂な声を出してしまう。
アスランは手で口元を覆い、視線を斜め横に向けていて、その顔は真っ赤に染まっている。
明らかに狼狽している様子だった。

「何でお前が照れてるんだよっ・・」

「悪かったな・・」

「ぷっ・・」

照れ隠しの為か機嫌の悪そうな喋り方をするアスランが可愛くて、カガリはついつい噴き出してしまった。

「カガリ・・!」

「あははっ・・ごめん・・」

なかなか笑いの収まらないカガリを、不機嫌そうに眺めていたアスランだったが、やがて小さくため息をついた。

「そんな風にされたら、仕返しにいじめたくなるだろ」

「えっ・あっ・んん・・」

アスランは生意気なお姫様に、お仕置きとばかりに少し乱暴に口付けた。

「優しくしたいんだ、カガリ・・。だからあんまり、怒らせないでくれるか?」

「アスラン・・」

口づけのせいか、目を潤ませ大人しくなったカガリに、いい子だというように軽く頬にキスをして、アスランはそのまま唇を首筋に滑らせた。
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