それは、遠い昔の夢。









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夜も更けアスランがそろそろ寝ようと、就寝の支度をしているときだった。

部屋をノックする音にこんな時間に一体誰だろうと訝しみながらドアを開けると、そこにいたのはパジャマ姿の愛しい金髪の少女。

「カガリ・・」

「アスラン、起きてたか?」

まるでアスランの様子を伺うかのような声に、いつもの彼女の快活さは見当たらない。

「どうしたんだ・・こんな時間に」

もう11時を回っている。普段のカガリだったらとっくに夢の世界だ。

アスランが少し眉を潜めると、カガリはびくりと震え縮みこんでしまった。

「あの・・その・・」

「こっちにおいで、カガリ」

その様子にアスランは仕方ないなと険しい顔を引っ込めて、なるべく穏やかな声を出した。

「うん・・」

とぼとぼと顔を俯かせて部屋に入ってきたカガリを居間のソファに座らせ、アスランもその隣に腰を下ろす。

しばし沈黙が流れて、カガリがおずおずと切り出した。

「昼間のこと、まだ怒っているか?」

今日の昼間、カガリはザフトの武器庫に忍び込み武器を物色していた。
正義感が強く身体を動かすことが好きなカガリはザフトに入隊したかったのだが、応募規定の10歳になっていてもプラント国籍でないと入隊することはできない。
それならば武器だけでも欲しいとアスランに言ったのだが、危ないからと絶対に武器庫に近づいては駄目だときつく言われてしまった。
しかしそんなことで諦めるカガリではなく、アスランに内緒で武器庫に忍び込んだのまではよかったが。
不用意に触った火薬が暴発し、たまたまやってきたアスランに助けられなかったら、カガリは危うく大けがするところだったのだ。

散々家庭教師に怒られてカガリは大いに落ち込み反省したが、それよりもカガリの心を沈ませているのはアスランの態度。

あれから今日一日アスランは自分に冷たいのだ。

「うん・・怒ってるよ」

「アスラン・・」

アスランの言葉にカガリの顔が悲しそうに歪み、大きな琥珀の瞳にみるみる涙が溜まっていく。

「ごめんカガリ・・泣かないで・・」

確かに怒っているけれど、カガリの泣き顔は見たくない。
まして自分のせいで泣かせたくなんかない。
アスランはカガリを抱き寄せた。

「カガリ・・お願いだからもう危ないことはしないで…もしカガリに何かあったらと思うと、俺は気が気じゃないんだよ…」

カガリを抱きしめたまま、アスランは震える声で囁いた。

「うん・・」

アスランに抱きしめられていて、カガリには彼がどんな表情をしているのかは分からない。

けれどその声がとても苦しそうで辛そうで、自分がどれほど彼に心配を掛けたか考えると胸がしくしくと痛んだ。

「ごめんな・・アスラン」
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