「それにしてもアスラン、あいつ一体何をしたんだ?」

テーブルに並んだお菓子も半分になり、紅茶も皆おかわりしたところで、カガリはふと気になっていたことを口にした。

「アスランがどうかしたの?」

「何か女の子を怒らせるようなことしたみたいなんだよ。あいつのパートナーになってから、よく女の子に睨まれるんだ。とばっちりもいいとこだよ」

カガリが迷惑そうに眉根を寄せたが、残りの三人はぽかんとした顔をしている。

「・・おい?」

反応がないのを訝しんでカガリが呼びかけると、三人は堰を切ったように笑い出した。

「あ~もうあんた本当面白い!!」

「何なんだよ!一体」

カガリは訳が分からない。
てっきり情報通のフレイがアスランのしでかしたことを教えてくれると思っていたのに、こうも笑われるなんて予想外だ。

「あ~本当に鈍いのね、あんた」

フレイが目尻に溜まった涙を拭きながらカガリに視線を向ける。

「だから何がだよ!」

「女の子が睨んでるのは、あんたがアスランのパートナーだからよ。アスランが何かしたとかじゃなくて」

「私のことを怒っているのか?」

「怒っているわけではなくて、皆様カガリ様のことが羨ましいのですわ」

くすくす笑っていたメイリンも大分呼吸が落ち着いたようだ。

「羨ましいって・・何で?」

「だからあんたがアスランのパートナーなのがよ」

アスランのパートナーだと何故羨ましがられるのか。
意味が分からなくて、眉根を寄せるカガリにフレイがずいっと顔を近づける。

「あのね、アスランは眉目秀麗、頭脳明晰、おまけにザフト一の剣の腕前!!プラントの女性がこぞって憧れる王子様なのよ!!」

「まあ・・王子だからな、あいつは実際」

拳を握りしめ勢いよく言い切ったフレイだが、当のカガリはいまいち意味が掴めていないようだ。
カガリの少しずれた発言にフレイはかくっと頭を落とした。

「確かにそうですけれど、フレイさんの仰った王子様とはそういう意味ではありませんの」

テーブルにつっぷしたフレイに変わって、ラクスが続けた。

「プラントの女性にとってアスランは憧れの存在という意味ですわ」

「憧れの・・存在・・」

いつも隣にいる、アスランが?

「おこがましいと分かっていても、女性なら誰でもアスラン様の恋人がもし自分だったらと一度は想像するものです」

そう言って恥ずかしそうにうつむくメイリンの頬が赤く染まっていた。

「世間一般的に見てアスランはプラント一のイイ男なのよ。まぁ、私のタイプじゃないけどね」

フレイにはサイという許嫁がいて、二人はデビュタントボールのパートナーでもある。

「そういうことなので、カガリさんが女の子たちに睨まれてしまうわけが分かりました?」


プラントの女性がこぞって憧れる王子様。
アスランが?
実感が湧かないが、カガリは曖昧に頷いた。





「だけどプラント一のイイ男だからって、恋愛が上手くいくわけじゃないのが面白いところよね~」

「天然の白い蝶の姫に、美貌の王子が形無しですわね」

「きっとそういうところもお好きなんでしょうね」

三人がまたカガリが付いていけない話を始める。
自分の名前が出てくるのだが、カガリには内容がよく解らない。
それなのに三人ともすごく楽しそうだ。

「何の話だ?」

「なんでもな~い」

「そろそろ日没ですし、お茶会はお開きにしましょうか」

少女たちはくすくす笑いながら、カップとお皿を片付け始めた。
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