結婚前夜 【CE71】
こんなふうに、この日を迎えるだなんて、思いもしなかった
嫌だ・・大嫌いだ、こんな醜い私は
アスランとカガリの結婚式前日。
前夜祭と称し、互いの友人だけを招待したパーティーが、若者に人気のクラブを貸し切って行われた。
数か月前に催された、政界人や著名人が多く参列した婚約披露パーティーとは異なる、若者だけのパーティーは雰囲気も砕けていて、参加者たちは皆、楽しんでいたが。
本来ならば、この場の中心にいて一番明るい顔をしているはずの少女は、目立たない柱の陰で浮かない顔をしていた。
明るい雰囲気に、とても入っていける気分ではなかった。
それでも、その少女、カガリの目線は、フロアの中心で、友人たちに囲まれた藍色の髪の人物に引き寄せられていく。
まるで磁石に吸い寄せられるように。
(アスラン・・・)
心のなかで、視線の先にいる彼の名を呟いた。
何度も何度も、心の中で呼んだ、愛する人の名前。
そして、明日から生涯を共にする人の名前だが、その名前を繰り返し心のなかで呼んでも、彼が振り向くことはない。
あっという間だった。
アスランと婚約してから、今日までの日々は。
その間、カガリがどう足掻いても、二人の距離を縮めることはできず。
むしろカガリがアスランに近づこうとすればするほど、彼は態度を硬化させた。
特にカガリがザラ邸で暮らすようになってからは、それが顕著になり。
結婚式を明日に控えた今、二人の距離は今までで一番遠かった。
(だけどそれが、アスランの望む形なんだ・・・)
アスランは未来の妻にさえ、自分の深いところへ踏み込ませる気はないのだ。
いや、それだけならまだいい。
愛する気さえないのだ。
(私さえ、アスランを諦めれば・・)
アスランへの恋心をカガリが捨てさえすれば、この結婚は上手くいく。
政略結婚にふさわしく、互いに何の感情も持たず、国の為だけに結婚という名の契約を結ぶことができる。
アスランもそれを望んでいる。
(だけど・・)
どうしても、カガリにはそれができないのだ。
休暇が明け、アスランがザフトに戻っていってから、カガリはアスランを諦めるのだと何度も自分に言い聞かせた。
しかし既にアスランへの想いは、カガリの心の奥深くに根付いてしまっていた。
好きなのだ、アスランのことが、どうしても。
そんな捨てられない想いに苛まれ苦しみながら、カガリは今日という日を迎えていた。
「どうしましたの、こんな暗いところで」
苦しそうにアスランを見つめていたカガリだったが、声のした方に顔を向けると、パーティーに出席してくれたものの、現れるなりファンに囲まれてしまい、到底話ができる状況ではなかった親友がいつのまにか横に立っていた。
「ラクス・・」
「カガリさんは今日の主役ではありませんか」
人垣から解放され一番いカガリのところに来てくれたのだ王、にっこりとほほ笑むラクスの笑顔はとても美しかった。
「ハロ!マイド!」
カガリの視線は、綻ぶ花のようなラクスの微笑みではなく、彼女の足元で飛び跳ねるペットロボへと吸い寄せられた。
嫌だ・・大嫌いだ、こんな醜い私は
アスランとカガリの結婚式前日。
前夜祭と称し、互いの友人だけを招待したパーティーが、若者に人気のクラブを貸し切って行われた。
数か月前に催された、政界人や著名人が多く参列した婚約披露パーティーとは異なる、若者だけのパーティーは雰囲気も砕けていて、参加者たちは皆、楽しんでいたが。
本来ならば、この場の中心にいて一番明るい顔をしているはずの少女は、目立たない柱の陰で浮かない顔をしていた。
明るい雰囲気に、とても入っていける気分ではなかった。
それでも、その少女、カガリの目線は、フロアの中心で、友人たちに囲まれた藍色の髪の人物に引き寄せられていく。
まるで磁石に吸い寄せられるように。
(アスラン・・・)
心のなかで、視線の先にいる彼の名を呟いた。
何度も何度も、心の中で呼んだ、愛する人の名前。
そして、明日から生涯を共にする人の名前だが、その名前を繰り返し心のなかで呼んでも、彼が振り向くことはない。
あっという間だった。
アスランと婚約してから、今日までの日々は。
その間、カガリがどう足掻いても、二人の距離を縮めることはできず。
むしろカガリがアスランに近づこうとすればするほど、彼は態度を硬化させた。
特にカガリがザラ邸で暮らすようになってからは、それが顕著になり。
結婚式を明日に控えた今、二人の距離は今までで一番遠かった。
(だけどそれが、アスランの望む形なんだ・・・)
アスランは未来の妻にさえ、自分の深いところへ踏み込ませる気はないのだ。
いや、それだけならまだいい。
愛する気さえないのだ。
(私さえ、アスランを諦めれば・・)
アスランへの恋心をカガリが捨てさえすれば、この結婚は上手くいく。
政略結婚にふさわしく、互いに何の感情も持たず、国の為だけに結婚という名の契約を結ぶことができる。
アスランもそれを望んでいる。
(だけど・・)
どうしても、カガリにはそれができないのだ。
休暇が明け、アスランがザフトに戻っていってから、カガリはアスランを諦めるのだと何度も自分に言い聞かせた。
しかし既にアスランへの想いは、カガリの心の奥深くに根付いてしまっていた。
好きなのだ、アスランのことが、どうしても。
そんな捨てられない想いに苛まれ苦しみながら、カガリは今日という日を迎えていた。
「どうしましたの、こんな暗いところで」
苦しそうにアスランを見つめていたカガリだったが、声のした方に顔を向けると、パーティーに出席してくれたものの、現れるなりファンに囲まれてしまい、到底話ができる状況ではなかった親友がいつのまにか横に立っていた。
「ラクス・・」
「カガリさんは今日の主役ではありませんか」
人垣から解放され一番いカガリのところに来てくれたのだ王、にっこりとほほ笑むラクスの笑顔はとても美しかった。
「ハロ!マイド!」
カガリの視線は、綻ぶ花のようなラクスの微笑みではなく、彼女の足元で飛び跳ねるペットロボへと吸い寄せられた。