第四夜

カガリへ


     
今日は父とたまたま休暇が被ったので、二人で母の墓参りに行きました。
白い百合の花を墓前に捧げて、父と並んで手を合わせ、母に近況報告をしました。
その帰り道、相変わらず寡黙な父が珍しく、俺が幼かったころの話をしてくれました。

俺が産まれた日、父はどうしても抜けられない仕事があったらしいのですが、母から陣痛の連絡を貰ったときに、周りの方たちが帰るように言ってくれ、走って病院まで向かったこと。
滅多に泣かない赤ん坊だった俺が、何故か父に抱かれると大泣きしたこと。
クリスマスに電子ペットをプレゼントしようとしたけれど、当日どの店も売り切れで、おもちゃ屋さんを何軒も回ったこと。
(この頃から、俺は電子ペットが好きだったみたいです)

俺をあやす父を想像すると、なんだかおかしくて笑ってしまいそうですが、それよりも気恥ずかしい気持ちが勝っています。
気難しい父が俺の世話をしていただなんて、むずがゆいような・・そんな気持ちになります。
母が死んでから長い間、距離を置いていたからでしょうか。
けれども不思議なもので、父とこうして二人で色々話すのは気恥ずかしくむずがゆいのですが、嫌ではありません。
それは父も同じようで、少しずつですが、今回のように色々と話をしてくれるようになりました。


君が言ってくれたように、やはり俺は、父に関心を持ってもらえず、寂しかったのでしょう。

今こうして父と分かり合えたのは、君のおかげですね、有難う。











だけどカガリ、俺は今、あのときより比べものにならないくらい寂しいです。

あのときは、「寂しい」と言われても、よくその感情が理解できなかったけれど、今ならそれがよく分かります。

「寂しい」ことが、こんなに辛く苦しいものだと、身をもって実感しています。

あのとき、俺の為に泣いてくれた君を部屋から追い出してしまったことも、ちゃんと謝りたい。









カガリ


本当に辛くて苦しくて、堪らないんだ。





これじゃあどんなに父と分かり合えたって意味がない



辛くて、苦しくて

どうにかなってしまいそうだ





死んだほうが遥かにマシだとさえ思う












だから早くカガリ




早くしないと追いつけなくなる










怖いんだ俺は

一人で時を刻










































すまない。
少し感情的になってしまったようだ。
こんなに気持ちのいい天気なのに、俺はしょうがないな。
本当にすまない。



そうだ、明日からプラントは『梅雨入り』なんだ。
地球の四季を模した催しなんだが、なかなか面白いだろう?




CE74 6/2 ディゼンベル 気温:23度 天候:晴れ 






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