美味しい料理はハートも掴む
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消灯時間を過ぎた頃、私はお腹を空かせてふらりと食堂にやって来る来訪者や、寝付けず話し相手等を求めて抜け出してくる来訪者の対応をする為食堂でうつらうつらとしながら蝋燭の灯りを見詰めていた。
私が勤務にあたるまでは、育ち盛りの訓練生や業務に追われ夕食にありつけなかった人が食堂にこっそりと訪れては勝手に食べ物を物色していたそうで。
その事実を知った私は食料庫管理と気持ち程度の軽食を提供する為こうして毎日食堂で微睡んでいる。訓練兵団の食堂に居ない時でも私の事を見付けてこっそりやって来る最近の常連は勿論食いしん坊で有名なサシャで次点にジャン、ライナーやベルトルトなどだった。ほんのたまにエルヴィン団長やハンジさんも訪れる事がある。
サシャは常時お腹を空かせている様なものなので一時は毎日此処へと顔を出していたが、本当にお腹が空いてどうしようもない時だけしか食事は与えないと強く言って聞かせた所、雨に濡れた子犬の様な瞳をしたものの渋々了承してくれた。
眠れなくて困っている人には温かいミルクを提供し、眠くなるまで話し相手になってあげる事もしばしばあった。
夜の闇も深まり私の眠気もピークに達した頃、ギィと扉が開く音がした。舟を漕いでいた頭をそっと上げ、寝惚け眼で闇を見詰めると、そこには野戦食料を齧りながら此方へと歩いてくるリヴァイ兵長の姿があった。
そう言えば今日の夕食時には姿を見掛けなかったなと思い返しながら、お疲れ様です、と声を掛けた。
今何か用意しますね、と立ち上がろうとした所ふと野戦食料が目に留まり、兵士に支給される野戦食料は一般人の私はあまり目にする事も無く、勿論味も知らない。料理を作る者としては未知の食べ物には興味をそそられるそれを見詰めているとそんな私の視線にリヴァイ兵長は気が付いたのか、半分程食べかけてある野戦食料を唐突に私の口の中へと押し込んだ。
唐突の出来事に呻き声が漏れるがまたとない機会にしっかりと味わおうと一齧りしたーーーのだが
「ゔ……ぐ、何これ…」
サクッとした食感は良かった。が、齧った瞬間鼻をふわりと抜けるのは土臭い様な木の皮の様な何とも形容し難い、言うなれば甲虫の味だった。いや、甲虫を食べた事があるかと言われれば無いが甲虫から漂うあの匂いが口内と鼻腔を支配している。
そこにビスケットの様な素朴な甘さがやってくる。美味しくも不味くもない(どちらかと言えば不味い)野戦食料を咀嚼しては飲み込む。
これまで美味しいものを食べてきた肥えた舌には中々堪えるものがあり、出来れば進んでは食べたくない。だが戦闘時におけるエネルギー補給の食事としては申し分ないのだろう。きっとこれを食べている時には味わう余裕は無いのであろうが何とか味をもっと美味しくできないだろうかという思いが浮かんできた。
「あの…、ちょっとそこまで美味しくないのでお返しします」
とこれ以上食べたくないと意思を示すもリヴァイ兵長は心底不快そうな顔をしながら、あ?と圧の篭った低い声を出して此方を睨んでくる。
「他人が口付けた食い物なんかいらねえよ気色悪ぃな」
「これ元はリヴァイ兵長の食べ掛けですよ!?」
余りにも理不尽な言葉に思わず語気を荒げ反抗するも虚しく「ごちゃごちゃうるせぇなテメェは。いいからとっとと飯を作れ」と一蹴されてしまい、ぐうぅ…と声にならない呻き声を上げた後まさかリヴァイ兵長に逆らえる訳も無く、項垂れながら蝋燭を手にすごすごとキッチンへと向かったのだった。
いくら野戦食料が微妙な味だからといって捨てる訳にもいかず、何とか口に押し込んで水と共に流し込んだ。恨めし気に食堂の椅子に腰掛けているであろうリヴァイ兵長を睨むが、当の本人は壁際の椅子に腰掛け腕を組みながら瞳を閉じていた。
余程疲れているのだろうか、蝋燭の灯りでほのかに照らされる闇から静かな寝息が聞こえてくる。リヴァイ兵長とはそこまで面識がある程でもないし、当たり前だが仲良くも無い為、彼がくつろいでいる所や仮眠をしている所など無防備な所を一切見た事が無く、その光景はとても新鮮だった。
その前にこの人に友達が居るのか、睡眠をちゃを取っているのか等謎な事は沢山あるが。
もうきっと夜中の一時頃だろう、手早く作ってしまおうと以前自作した食パンを戸棚から取り出し、丁度良い厚さに二枚切り落とす。その二枚の食パンの表面にマスタードを薄く塗り、今日の夕食の余りのマッシュポテトを乗せた。少し物足りないと思った私はチーズも戸棚から取り出し、一枚薄くスライスしてから片方のパンの上に乗せた。それをサンドイッチ状に挟めば対角線上に包丁を入れ、彩りとしては微妙だがせめてもと見栄えが良い様にオシャレに重ねてお皿に乗せた。
これで簡単な夜食の出来上がりである。
ついでにと紅茶も淹れた私はサンドイッチが乗ったお皿と紅茶が入ったティーカップを持ってリヴァイ兵長のテーブルの前へと移動するとリヴァイ兵長は薄く瞳を開けた。
お疲れ様です、ちゃんと寝てるのか分かりませんけどベッドでちゃんと寝てくださいね、と声を掛けながらサンドイッチの乗ったお皿とティーカップを置けばリヴァイ兵長は此方へちらりと視線だけを向けただけだった。
そんな通常運転のリヴァイ兵長に、私は小さく溜息を吐きながらキッチンに蝋燭を取りに戻ろうと踵を返すと
「大丈夫だ」
と小さな声が背中から聞こえ、咄嗟に後ろを振り向けば何とも無い顔でサンドイッチを口にしているリヴァイ兵長が見えたので
「だから背が小さいんじゃないですか?」
と軽口を叩けば本気の殺意の篭った瞳で睨まれた為、私は脱兎の如くキッチンへと駆けたのだった。
私が勤務にあたるまでは、育ち盛りの訓練生や業務に追われ夕食にありつけなかった人が食堂にこっそりと訪れては勝手に食べ物を物色していたそうで。
その事実を知った私は食料庫管理と気持ち程度の軽食を提供する為こうして毎日食堂で微睡んでいる。訓練兵団の食堂に居ない時でも私の事を見付けてこっそりやって来る最近の常連は勿論食いしん坊で有名なサシャで次点にジャン、ライナーやベルトルトなどだった。ほんのたまにエルヴィン団長やハンジさんも訪れる事がある。
サシャは常時お腹を空かせている様なものなので一時は毎日此処へと顔を出していたが、本当にお腹が空いてどうしようもない時だけしか食事は与えないと強く言って聞かせた所、雨に濡れた子犬の様な瞳をしたものの渋々了承してくれた。
眠れなくて困っている人には温かいミルクを提供し、眠くなるまで話し相手になってあげる事もしばしばあった。
夜の闇も深まり私の眠気もピークに達した頃、ギィと扉が開く音がした。舟を漕いでいた頭をそっと上げ、寝惚け眼で闇を見詰めると、そこには野戦食料を齧りながら此方へと歩いてくるリヴァイ兵長の姿があった。
そう言えば今日の夕食時には姿を見掛けなかったなと思い返しながら、お疲れ様です、と声を掛けた。
今何か用意しますね、と立ち上がろうとした所ふと野戦食料が目に留まり、兵士に支給される野戦食料は一般人の私はあまり目にする事も無く、勿論味も知らない。料理を作る者としては未知の食べ物には興味をそそられるそれを見詰めているとそんな私の視線にリヴァイ兵長は気が付いたのか、半分程食べかけてある野戦食料を唐突に私の口の中へと押し込んだ。
唐突の出来事に呻き声が漏れるがまたとない機会にしっかりと味わおうと一齧りしたーーーのだが
「ゔ……ぐ、何これ…」
サクッとした食感は良かった。が、齧った瞬間鼻をふわりと抜けるのは土臭い様な木の皮の様な何とも形容し難い、言うなれば甲虫の味だった。いや、甲虫を食べた事があるかと言われれば無いが甲虫から漂うあの匂いが口内と鼻腔を支配している。
そこにビスケットの様な素朴な甘さがやってくる。美味しくも不味くもない(どちらかと言えば不味い)野戦食料を咀嚼しては飲み込む。
これまで美味しいものを食べてきた肥えた舌には中々堪えるものがあり、出来れば進んでは食べたくない。だが戦闘時におけるエネルギー補給の食事としては申し分ないのだろう。きっとこれを食べている時には味わう余裕は無いのであろうが何とか味をもっと美味しくできないだろうかという思いが浮かんできた。
「あの…、ちょっとそこまで美味しくないのでお返しします」
とこれ以上食べたくないと意思を示すもリヴァイ兵長は心底不快そうな顔をしながら、あ?と圧の篭った低い声を出して此方を睨んでくる。
「他人が口付けた食い物なんかいらねえよ気色悪ぃな」
「これ元はリヴァイ兵長の食べ掛けですよ!?」
余りにも理不尽な言葉に思わず語気を荒げ反抗するも虚しく「ごちゃごちゃうるせぇなテメェは。いいからとっとと飯を作れ」と一蹴されてしまい、ぐうぅ…と声にならない呻き声を上げた後まさかリヴァイ兵長に逆らえる訳も無く、項垂れながら蝋燭を手にすごすごとキッチンへと向かったのだった。
いくら野戦食料が微妙な味だからといって捨てる訳にもいかず、何とか口に押し込んで水と共に流し込んだ。恨めし気に食堂の椅子に腰掛けているであろうリヴァイ兵長を睨むが、当の本人は壁際の椅子に腰掛け腕を組みながら瞳を閉じていた。
余程疲れているのだろうか、蝋燭の灯りでほのかに照らされる闇から静かな寝息が聞こえてくる。リヴァイ兵長とはそこまで面識がある程でもないし、当たり前だが仲良くも無い為、彼がくつろいでいる所や仮眠をしている所など無防備な所を一切見た事が無く、その光景はとても新鮮だった。
その前にこの人に友達が居るのか、睡眠をちゃを取っているのか等謎な事は沢山あるが。
もうきっと夜中の一時頃だろう、手早く作ってしまおうと以前自作した食パンを戸棚から取り出し、丁度良い厚さに二枚切り落とす。その二枚の食パンの表面にマスタードを薄く塗り、今日の夕食の余りのマッシュポテトを乗せた。少し物足りないと思った私はチーズも戸棚から取り出し、一枚薄くスライスしてから片方のパンの上に乗せた。それをサンドイッチ状に挟めば対角線上に包丁を入れ、彩りとしては微妙だがせめてもと見栄えが良い様にオシャレに重ねてお皿に乗せた。
これで簡単な夜食の出来上がりである。
ついでにと紅茶も淹れた私はサンドイッチが乗ったお皿と紅茶が入ったティーカップを持ってリヴァイ兵長のテーブルの前へと移動するとリヴァイ兵長は薄く瞳を開けた。
お疲れ様です、ちゃんと寝てるのか分かりませんけどベッドでちゃんと寝てくださいね、と声を掛けながらサンドイッチの乗ったお皿とティーカップを置けばリヴァイ兵長は此方へちらりと視線だけを向けただけだった。
そんな通常運転のリヴァイ兵長に、私は小さく溜息を吐きながらキッチンに蝋燭を取りに戻ろうと踵を返すと
「大丈夫だ」
と小さな声が背中から聞こえ、咄嗟に後ろを振り向けば何とも無い顔でサンドイッチを口にしているリヴァイ兵長が見えたので
「だから背が小さいんじゃないですか?」
と軽口を叩けば本気の殺意の篭った瞳で睨まれた為、私は脱兎の如くキッチンへと駆けたのだった。