美味しい料理はハートも掴む
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執着云々は置いておいて、気付いていなかっただけで私が作った料理で誰かの心を動かせていたというのは純粋に嬉しいものがあって 前を行く、歩く度に綺麗な黒髪がさらさらと揺れるリヴァイ兵長の姿をにこにこと笑顔で眺めた。
そんな私の上機嫌な様子をちらりと見遣ったリヴァイ兵長は怪訝そうに顔を顰めた。私に対するマイナスの感情はすぐに表情に現れるのにどうしてプラスの分が出てこないのか…。
けれど今の私は何でも許せそうな程上機嫌なのでさらりと水に流そうと思う。
他者からの自分の評価というものは確固たる自信にも繋がる為、こんなにもしみじみと感じているのかもしれない。
付いて行くままに案内されたのは執務室だった。扉を開け、さっさと先に室内へと入って行ってしまったリヴァイ兵長に続いて私も恐々と室内へと足を踏み入れた。
こんな場所に入るのは初めてなので勝手が分からず、入り口から一歩入った所で立ち止まり、キョロキョロと室内を見渡した。
正面に見える大きな机には書類が積み重なっており、事務作業などをやった事の無い私には何だか新鮮に見えた。
簡素なキッチンも取り付けられているようで、紅茶を淹れる程度なら此処でも出来そうだ。
執務室に入った時からふわりと紅茶の香りが漂っていたが、どうやらリヴァイ兵長が自分で淹れて飲んでいたのか机の上には様々な書類と共にティーカップが置かれていた。
私がいつも淹れているアールグレイの紅茶の香りとはまた違った香りが漂っていて、何のフレーバーだろうかと思わず机に寄り、ティーカップの中を覗いた。
私が食堂に置いてもらっている茶葉はベルガモットだけの香り付けなのだがリヴァイ兵長の紅茶からはそれに加え甘い香りが混ざっている。確かこの香りは…。
「バニラですか?」
「ほう…、間抜けな面してるくせによく分かったな」
感心した様に瞳を僅か開いたリヴァイ兵長は
新たに紅茶を淹れたのか湯気の立つティーカップを持ちながら恐らく来客用に設置されているであろうソファーへと座った。「座れ」と隣へ座るよう促されたので少し迷った後、ちょこんと隣へ座らせてもらった。
自分で飲む為に淹れ直したのかと思っていたがどうやら私にくれるらしく、今し方リヴァイ兵長が手にしていた湯気の立つティーカップを目の前の机へ横からすっと差し出された。
驚きに目を瞬かせてティーカップとリヴァイ兵長を交互に見詰めると何だか居心地が悪そうに顔を顰められ、思わず笑ってしまった。
「何笑ってんだ、とっとと飲め。飲まねぇなら片付けるぞ」
「ふふ、飲みます。ありがとうございます」
あの人を人とも思っていなさそうなリヴァイ兵長から直々に紅茶を淹れてもらえたという事が何だか嬉しいのと面白いので、笑いながらティーカップを手に取った。
ベルガモットの爽やかな香りの中に甘いバニラの香りがふんわりと混ざり、とてもほっとする匂いだった。
紅茶の茶葉はそもそも高価な部類のものなのだが、私がいつも使っているもの以上に高価な茶葉なのだろうなと感じるとても品の良い組み合わせの香りの紅茶に口を付けると、やはりとても美味しく渋みも全く感じられない口当たりに思わず頬が緩んだ。
リヴァイ兵長は紅茶が好物だと聞いていたがやはり淹れるのも中々に拘っているのだろうと感じる味に「美味しい紅茶ですね、リヴァイ兵長も流石淹れるのが上手ですね!」と隣に座るリヴァイ兵長の方へ顔を向けると何故か眉間に皺を寄せながら此方をじっと見詰めていた。
何か変な事を言っただろうかとおろおろしているとリヴァイ兵長は徐に私の持っていたティーカップをいつもの独特な持ち方で奪い取るとそのまま紅茶を一口口に含んだ。
飲みかけですよ、と言う暇も無く流れる様に行われた行為に大丈夫なのだろうかとぽかんと口を開けてリヴァイ兵長の顔を見詰めていると「違ぇ」とぼそりと小さな声で呟いたのが聞こえた。
「違うって何がですか?」
意味が分からず首を傾げるとリヴァイ兵長は私にティーカップを押し付ける様に返すと口を開いた。
「お前が淹れた様に美味くならねぇんだ。何かが違う」
「美味しかったですよ、リヴァイ兵長の淹れた紅茶」
頭に疑問符を浮かべながら先程の紅茶の味を思い返すも不味かったという感想はどこにも無い。どうやら私が淹れた紅茶の味に近付けたいらしく頑なに違うと言い張り、何が違うのか等と根掘り葉掘り質問されるも感覚のままに紅茶を淹れているので自分でもよく分からない。
悩んだ末に私は実際に私とリヴァイ兵長、何が違うのかをお互いに実践で確認してみる事にした。
交代で紅茶を淹れる作業をしてみたが、特にお互い変わった所は無かった。
好みで蒸らす時間や茶葉の量などは多少、差があったがほとんどの工程が同じだった為更に頭を悩ませる事となった。
「う〜ん…、特におかしな所はありませんよね。何ででしょうか」
やはり私が淹れた紅茶の味の方が好みだと言ってリヴァイ兵長は、先程のバニラのフレーバーが混ざった茶葉で私が淹れた紅茶を飲んでいる。その横で私はキッチンの壁に背を預け凭れ掛かり、腕を組みながら首を捻っていた。
その様子をリヴァイ兵長は横目で眺めているがどうやら諦めた様で何も言葉を発しなかった。
手順の他に気を付けている事…、大事にしている事…。何かあっただろうかと思い浮かべてみると当たり前過ぎて気にした事も無かった、たった一つの一番大事な事を思い出した。
「リヴァイ兵長。料理をする時…、えっと、紅茶を淹れる時って何を考えてますか?」
「特に何も考えてねぇな」
「多分、それだと思います」
私の質問に怪訝な顔をしながらもすぐに答えてくれたリヴァイ兵長に確信めいたものを感じ、私はリヴァイ兵長の真ん前に後ろ手を組みながら躍り出た。ティーカップから口を離し意味が分からないといった顔をするリヴァイ兵長の空いている腕の手首を掴み軽くキッチンの方へと引っ張れば特に抵抗される事も無く容易く身体を動かしてくれた。
「私が何かを作る時に一番大事にしている事は、作ったものを口にしてくれる人の事を考えるって事なんです」
掴んでいた手首を離し、再びキッチンへと向き直ると隣に立つリヴァイ兵長の顔を覗き込みながら私は人差し指を立てた。
片眉を上げ、此方へと視線だけを向けたリヴァイ兵長はだから何だと言わんばかりの表情である。
「私が作ったものを食べたり飲んだりした事で元気になってほしい、笑顔になってほしい、疲れた心を癒してほしい、そして幸せな気持ちになってほしい。そんな気持ちを込めてその時の一回一回を大事に、心を込めて作っているんです」
どんな料理にも作った人の想いや愛情というものは必ずしも良い形で現れると私は思っている。それは食べ物でも飲み物でも、簡単な何かでも同じで。二つの同じ美味しい料理を並べても愛情や想いが籠っているか否かでは差が出てくるものなのではないか。
だからきっと食堂で知り合った様々な兵士から聞く母親の愛情の籠もった手料理というものは皆が恋しがるものであり、何にも勝る一番のご馳走になるのだろう。
そんな私の言葉を聞いたリヴァイ兵長は「そうか」と呟いた後、手にしている先程私が淹れた紅茶が入ったティーカップへと視線を落とした。
「じゃあ、この紅茶にもさっきお前が言った心とやらも籠もってんのか」
「勿論、籠もってますよ!」
胸を張ってそう言えば、リヴァイ兵長は再びティーカップへと口を付け、紅茶を一口飲んだ。
何だかその時のリヴァイ兵長の瞳がどこか哀愁を帯びておりどうしたのだろうかと一つ瞬きをした直後には普段の涼し気な瞳に戻ったので、見間違いだろうかと思わず目を擦ればやはりそこには普段通り怪訝そうに此方を見ては眉間に皺を寄せるリヴァイ兵長の姿しかなかったのだった。
そんな私の上機嫌な様子をちらりと見遣ったリヴァイ兵長は怪訝そうに顔を顰めた。私に対するマイナスの感情はすぐに表情に現れるのにどうしてプラスの分が出てこないのか…。
けれど今の私は何でも許せそうな程上機嫌なのでさらりと水に流そうと思う。
他者からの自分の評価というものは確固たる自信にも繋がる為、こんなにもしみじみと感じているのかもしれない。
付いて行くままに案内されたのは執務室だった。扉を開け、さっさと先に室内へと入って行ってしまったリヴァイ兵長に続いて私も恐々と室内へと足を踏み入れた。
こんな場所に入るのは初めてなので勝手が分からず、入り口から一歩入った所で立ち止まり、キョロキョロと室内を見渡した。
正面に見える大きな机には書類が積み重なっており、事務作業などをやった事の無い私には何だか新鮮に見えた。
簡素なキッチンも取り付けられているようで、紅茶を淹れる程度なら此処でも出来そうだ。
執務室に入った時からふわりと紅茶の香りが漂っていたが、どうやらリヴァイ兵長が自分で淹れて飲んでいたのか机の上には様々な書類と共にティーカップが置かれていた。
私がいつも淹れているアールグレイの紅茶の香りとはまた違った香りが漂っていて、何のフレーバーだろうかと思わず机に寄り、ティーカップの中を覗いた。
私が食堂に置いてもらっている茶葉はベルガモットだけの香り付けなのだがリヴァイ兵長の紅茶からはそれに加え甘い香りが混ざっている。確かこの香りは…。
「バニラですか?」
「ほう…、間抜けな面してるくせによく分かったな」
感心した様に瞳を僅か開いたリヴァイ兵長は
新たに紅茶を淹れたのか湯気の立つティーカップを持ちながら恐らく来客用に設置されているであろうソファーへと座った。「座れ」と隣へ座るよう促されたので少し迷った後、ちょこんと隣へ座らせてもらった。
自分で飲む為に淹れ直したのかと思っていたがどうやら私にくれるらしく、今し方リヴァイ兵長が手にしていた湯気の立つティーカップを目の前の机へ横からすっと差し出された。
驚きに目を瞬かせてティーカップとリヴァイ兵長を交互に見詰めると何だか居心地が悪そうに顔を顰められ、思わず笑ってしまった。
「何笑ってんだ、とっとと飲め。飲まねぇなら片付けるぞ」
「ふふ、飲みます。ありがとうございます」
あの人を人とも思っていなさそうなリヴァイ兵長から直々に紅茶を淹れてもらえたという事が何だか嬉しいのと面白いので、笑いながらティーカップを手に取った。
ベルガモットの爽やかな香りの中に甘いバニラの香りがふんわりと混ざり、とてもほっとする匂いだった。
紅茶の茶葉はそもそも高価な部類のものなのだが、私がいつも使っているもの以上に高価な茶葉なのだろうなと感じるとても品の良い組み合わせの香りの紅茶に口を付けると、やはりとても美味しく渋みも全く感じられない口当たりに思わず頬が緩んだ。
リヴァイ兵長は紅茶が好物だと聞いていたがやはり淹れるのも中々に拘っているのだろうと感じる味に「美味しい紅茶ですね、リヴァイ兵長も流石淹れるのが上手ですね!」と隣に座るリヴァイ兵長の方へ顔を向けると何故か眉間に皺を寄せながら此方をじっと見詰めていた。
何か変な事を言っただろうかとおろおろしているとリヴァイ兵長は徐に私の持っていたティーカップをいつもの独特な持ち方で奪い取るとそのまま紅茶を一口口に含んだ。
飲みかけですよ、と言う暇も無く流れる様に行われた行為に大丈夫なのだろうかとぽかんと口を開けてリヴァイ兵長の顔を見詰めていると「違ぇ」とぼそりと小さな声で呟いたのが聞こえた。
「違うって何がですか?」
意味が分からず首を傾げるとリヴァイ兵長は私にティーカップを押し付ける様に返すと口を開いた。
「お前が淹れた様に美味くならねぇんだ。何かが違う」
「美味しかったですよ、リヴァイ兵長の淹れた紅茶」
頭に疑問符を浮かべながら先程の紅茶の味を思い返すも不味かったという感想はどこにも無い。どうやら私が淹れた紅茶の味に近付けたいらしく頑なに違うと言い張り、何が違うのか等と根掘り葉掘り質問されるも感覚のままに紅茶を淹れているので自分でもよく分からない。
悩んだ末に私は実際に私とリヴァイ兵長、何が違うのかをお互いに実践で確認してみる事にした。
交代で紅茶を淹れる作業をしてみたが、特にお互い変わった所は無かった。
好みで蒸らす時間や茶葉の量などは多少、差があったがほとんどの工程が同じだった為更に頭を悩ませる事となった。
「う〜ん…、特におかしな所はありませんよね。何ででしょうか」
やはり私が淹れた紅茶の味の方が好みだと言ってリヴァイ兵長は、先程のバニラのフレーバーが混ざった茶葉で私が淹れた紅茶を飲んでいる。その横で私はキッチンの壁に背を預け凭れ掛かり、腕を組みながら首を捻っていた。
その様子をリヴァイ兵長は横目で眺めているがどうやら諦めた様で何も言葉を発しなかった。
手順の他に気を付けている事…、大事にしている事…。何かあっただろうかと思い浮かべてみると当たり前過ぎて気にした事も無かった、たった一つの一番大事な事を思い出した。
「リヴァイ兵長。料理をする時…、えっと、紅茶を淹れる時って何を考えてますか?」
「特に何も考えてねぇな」
「多分、それだと思います」
私の質問に怪訝な顔をしながらもすぐに答えてくれたリヴァイ兵長に確信めいたものを感じ、私はリヴァイ兵長の真ん前に後ろ手を組みながら躍り出た。ティーカップから口を離し意味が分からないといった顔をするリヴァイ兵長の空いている腕の手首を掴み軽くキッチンの方へと引っ張れば特に抵抗される事も無く容易く身体を動かしてくれた。
「私が何かを作る時に一番大事にしている事は、作ったものを口にしてくれる人の事を考えるって事なんです」
掴んでいた手首を離し、再びキッチンへと向き直ると隣に立つリヴァイ兵長の顔を覗き込みながら私は人差し指を立てた。
片眉を上げ、此方へと視線だけを向けたリヴァイ兵長はだから何だと言わんばかりの表情である。
「私が作ったものを食べたり飲んだりした事で元気になってほしい、笑顔になってほしい、疲れた心を癒してほしい、そして幸せな気持ちになってほしい。そんな気持ちを込めてその時の一回一回を大事に、心を込めて作っているんです」
どんな料理にも作った人の想いや愛情というものは必ずしも良い形で現れると私は思っている。それは食べ物でも飲み物でも、簡単な何かでも同じで。二つの同じ美味しい料理を並べても愛情や想いが籠っているか否かでは差が出てくるものなのではないか。
だからきっと食堂で知り合った様々な兵士から聞く母親の愛情の籠もった手料理というものは皆が恋しがるものであり、何にも勝る一番のご馳走になるのだろう。
そんな私の言葉を聞いたリヴァイ兵長は「そうか」と呟いた後、手にしている先程私が淹れた紅茶が入ったティーカップへと視線を落とした。
「じゃあ、この紅茶にもさっきお前が言った心とやらも籠もってんのか」
「勿論、籠もってますよ!」
胸を張ってそう言えば、リヴァイ兵長は再びティーカップへと口を付け、紅茶を一口飲んだ。
何だかその時のリヴァイ兵長の瞳がどこか哀愁を帯びておりどうしたのだろうかと一つ瞬きをした直後には普段の涼し気な瞳に戻ったので、見間違いだろうかと思わず目を擦ればやはりそこには普段通り怪訝そうに此方を見ては眉間に皺を寄せるリヴァイ兵長の姿しかなかったのだった。