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「違う、この手はこうだ」
「はいっ」
ポアロのバイトが終わってから、さっそく赤井さんと護身術の稽古をしていた。
場所は人気のない山の中だ。
しかし集中しなきゃと思うほど、頭の中には昨日の零さんの少し寂しそうな表情。
「なまえ、集中が足りないぞ」
「すみませんっ!続き、お願いします!」
頭の中から零さんの顔を振り払うように、パンッと両手で頰を張った。
ダメだ。ちゃんと集中しなきゃ。
「いや、今日はここまでにしよう」
「私まだ出来ます!」
「最初から飛ばすと続かないぞ。そんなに焦って、どうした?」
「...」
「まぁいい。休憩しよう」
赤井さんは側にある木に寄り掛かって座ると、タバコに火をつけた。
私が立ち尽くしたままいると、なまえと呼ばれ、赤井さんの方に目を向けるとペットボトルが飛んできた。
キャッチして手の中のものを見ると、スポーツドリンクだった。
「こういう事は積み重ねが大切だ。1日2日で強くなれるものじゃない。焦る気持ちも分かるが、ゆっくりいこう」
「...昨日、零さんに一緒に暮らそうって言われたんです」
「一緒に住むのか?」
私は小さく首を横に振った。
昨日結局、断ってしまったのだ。もう少しだけ待ってほしいと。
その時の零さんがほんの少し一瞬だけ見せた傷ついたような悲しい表情がこびりついて忘れられない。
「赤井さん...私、今まで零さんをいっぱい傷つけたんです。嘘をついて、知らないふりをして...そしてまた、傷つけた」
「だが、それはなまえなりの守り方なんだろう?」
確かに、あれは私なりの愛し方だった。
零さんの申し出は凄く嬉しかった。でも、今のままで側にいる事を例え零さんが許しても自分自身が許せなかった。せめて、自分の身は自分で守れるくらいに強くなってからじゃないと、零さんの足手纏いになる。
「でも前に赤井さんが言ったように、それは零さんを信じていない事になる。私は結局また同じ間違いを繰り返して何一つ成長していない...」
零さんにあんな顔をさせてまで、我を通す程の事だったのか...?
私のしていることは、無意味でただ零さんを傷つけるだけなんじゃないか?
昨日から何度も何度も自問自答を繰り返したが、結局答えなんか出ない。
「なまえ」
俯いていると、赤井さんは優しい声で私の名前を呼んだ。
そっと顔を上げると、赤井さんの綺麗な瞳と目が合う。
私は零さんのグレーがかった青い瞳も好きだが、赤井さんの優しいモスグリーンの瞳も好きだ。
「人を愛するという事に、間違いも正解もない。だが、お前はなかなか苦労をするのが好きな性分のようだな」
「苦労したい訳ではないんですけど...」
「だったら、何も考えずに降谷君の胸に飛び込め。彼は愛する女の1人や2人受け止められる」
私だって、そんなこと分かっている。
まぁ零さんなら1人2人と言わず、3人でも5人でも受け止められそうだが。
「分かってますよ。結局これは私の意地なんですよね。零さんが好きで愛しくて、そう思う程に不安になる。私の知らない未来が怖くて仕方ない。でも、それが零さんを傷つけている。こんな風にしか愛せない自分が心底嫌いです」
赤井さん相手に何を言っているんだろう。
稽古をつけてもらっているくせに、弱音を吐いて愚痴まで零して...本当に自分が嫌になる。
鼻がツンとして涙が滲むが、唇をグッと噛んで堪えた。
ここで泣いたら余計に赤井さんに迷惑をかけてしまう。そんなの嫌だった。
「そんなに自分を責めるな。俺はそんな不器用ななまえも好きだ」
いつのまにか私の前に立っていた赤井さんは、ワシャワシャと私の頭をその大きな手で少し乱暴に撫でた。
私はいつからこんなに弱くなったのだろう?
この世界に来てから、私は泣き虫になった。
「どうしても、どうにもならなくなったら、その時は俺が何とかしてやる。だから、お前は好きに生きろ」
「赤井さんって、やっぱりいい人ですね」
「そこは、いい男と言ってもらいたいがな」
「フフッ、私にとってのいい男は零さん1人なので」
それは妬けるな、と優しく目を細めた赤井さんに私も涙を拭って笑みを返した。
「はいっ」
ポアロのバイトが終わってから、さっそく赤井さんと護身術の稽古をしていた。
場所は人気のない山の中だ。
しかし集中しなきゃと思うほど、頭の中には昨日の零さんの少し寂しそうな表情。
「なまえ、集中が足りないぞ」
「すみませんっ!続き、お願いします!」
頭の中から零さんの顔を振り払うように、パンッと両手で頰を張った。
ダメだ。ちゃんと集中しなきゃ。
「いや、今日はここまでにしよう」
「私まだ出来ます!」
「最初から飛ばすと続かないぞ。そんなに焦って、どうした?」
「...」
「まぁいい。休憩しよう」
赤井さんは側にある木に寄り掛かって座ると、タバコに火をつけた。
私が立ち尽くしたままいると、なまえと呼ばれ、赤井さんの方に目を向けるとペットボトルが飛んできた。
キャッチして手の中のものを見ると、スポーツドリンクだった。
「こういう事は積み重ねが大切だ。1日2日で強くなれるものじゃない。焦る気持ちも分かるが、ゆっくりいこう」
「...昨日、零さんに一緒に暮らそうって言われたんです」
「一緒に住むのか?」
私は小さく首を横に振った。
昨日結局、断ってしまったのだ。もう少しだけ待ってほしいと。
その時の零さんがほんの少し一瞬だけ見せた傷ついたような悲しい表情がこびりついて忘れられない。
「赤井さん...私、今まで零さんをいっぱい傷つけたんです。嘘をついて、知らないふりをして...そしてまた、傷つけた」
「だが、それはなまえなりの守り方なんだろう?」
確かに、あれは私なりの愛し方だった。
零さんの申し出は凄く嬉しかった。でも、今のままで側にいる事を例え零さんが許しても自分自身が許せなかった。せめて、自分の身は自分で守れるくらいに強くなってからじゃないと、零さんの足手纏いになる。
「でも前に赤井さんが言ったように、それは零さんを信じていない事になる。私は結局また同じ間違いを繰り返して何一つ成長していない...」
零さんにあんな顔をさせてまで、我を通す程の事だったのか...?
私のしていることは、無意味でただ零さんを傷つけるだけなんじゃないか?
昨日から何度も何度も自問自答を繰り返したが、結局答えなんか出ない。
「なまえ」
俯いていると、赤井さんは優しい声で私の名前を呼んだ。
そっと顔を上げると、赤井さんの綺麗な瞳と目が合う。
私は零さんのグレーがかった青い瞳も好きだが、赤井さんの優しいモスグリーンの瞳も好きだ。
「人を愛するという事に、間違いも正解もない。だが、お前はなかなか苦労をするのが好きな性分のようだな」
「苦労したい訳ではないんですけど...」
「だったら、何も考えずに降谷君の胸に飛び込め。彼は愛する女の1人や2人受け止められる」
私だって、そんなこと分かっている。
まぁ零さんなら1人2人と言わず、3人でも5人でも受け止められそうだが。
「分かってますよ。結局これは私の意地なんですよね。零さんが好きで愛しくて、そう思う程に不安になる。私の知らない未来が怖くて仕方ない。でも、それが零さんを傷つけている。こんな風にしか愛せない自分が心底嫌いです」
赤井さん相手に何を言っているんだろう。
稽古をつけてもらっているくせに、弱音を吐いて愚痴まで零して...本当に自分が嫌になる。
鼻がツンとして涙が滲むが、唇をグッと噛んで堪えた。
ここで泣いたら余計に赤井さんに迷惑をかけてしまう。そんなの嫌だった。
「そんなに自分を責めるな。俺はそんな不器用ななまえも好きだ」
いつのまにか私の前に立っていた赤井さんは、ワシャワシャと私の頭をその大きな手で少し乱暴に撫でた。
私はいつからこんなに弱くなったのだろう?
この世界に来てから、私は泣き虫になった。
「どうしても、どうにもならなくなったら、その時は俺が何とかしてやる。だから、お前は好きに生きろ」
「赤井さんって、やっぱりいい人ですね」
「そこは、いい男と言ってもらいたいがな」
「フフッ、私にとってのいい男は零さん1人なので」
それは妬けるな、と優しく目を細めた赤井さんに私も涙を拭って笑みを返した。
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