63 降谷side
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
物の位置も家具の配置も、全部そのままにしていた。それはなまえさんの為だけじゃない。
俺自身の為だ。なまえさんがこの部屋にいたという証があれば、いつか彼女が帰ってくる...そんな所詮は願掛けのようなもの。
しかし、そんなものに縋りたくなる程に俺には彼女が必要だった。
「なまえさん、またここに住みませんか?」
抱きついてきたなまえさんに、そう問いかければ、彼女は勢いよく顔を上げた。
一瞬とても嬉しそうな顔をしたが、次の瞬間には苦しそうな表情になった。
彼女は幸せになる事を、自分の心に誰かを入れる事を怖れている。
俺にはその気持ちがよく分かった。
幸せになる程、大切な人が増える程、いつか失うのではないかと怖くなるのだ。
だが、今は失くす事よりもなまえさんが側にいない事の方が苦しい。
だから、俺は命を懸けて彼女を守る。
「ここにいれば、僕があなたを守れる。FBIに頼る必要なんてありません」
「知って、いたんですか...」
俺が知らないはずがないだろう。
なまえさんが戻ってきたと分かった時、彼女の身辺は全て調べ上げた。
彼女がFBIに保護されていると分かった時は、正直自分を見失いそうになるくらい嫉妬した。
「そういう事は僕の専門ですからね。そもそもどうして僕を頼らなかったんですか?記憶喪失なんていう嘘までついて、よりにもよって赤井を頼るなんて」
今俺はひどい顔をしているだろう。
嫉妬に塗れた男の顔なんて見れたものじゃない。
彼女は小さな声で、ごめんなさい...と言って俯いている。
違う、俺は責めたいわけじゃない。
理由が知りたいのだ。俺を頼らなかった、記憶喪失なんて嘘をついた訳を。
それだけは、いくら考えても分からなかったのだ。
「...二度目にトリップした時、最初に会ったのが赤井さんだったからです。深い意味はありません」
「なら、なんで嘘をつく必要があったんですか?」
それは...と口籠る彼女。
嘘だとバレバレなのに、それでも隠そうとする。そうまでして隠す理由が分からない。
だが、今これ以上問い詰めても、彼女は決して口を割らないだろう。
「では、先にさっきの答え合わせをしましょう」
俺は話題を変えることにした。
急な話題転換になまえさんは戸惑った様子で、首を傾げている。
「答え合わせ、ですか?」
「私たちは付き合っていると思っていいのだろうか?というやつです」
彼女は思い出したかのように、一気に頰が赤く染まった。
やっぱりなまえさんは分かりやすい。
そんな彼女の腕を掴んで引き寄せると、驚いてポカンと薄く開いたその唇を奪った。
チュッと触れるだけのキスをして、そっと離れる。
「これが答えです」
彼女の瞳を見つめて、そう告げれば瞬く間に頰を上気させ口をパクパクしている。
「なまえさん、伝わりましたか?」
「...そんなの、反則です...そんなんじゃ全然分かりません」
頰を染めたまま目を伏せて、少し拗ねたような顔をするなまえさん。
そんな顔をされると、余計に虐めたくなる。
俺は小学生か...
「では、なまえさんも嘘をついた本当の理由を教えてくれますか?」
これでなまえさんが理由を教えてくれるとは思わないが、つい赤井を頼った事への仕返しをしたくなった。
この世界で、なまえさんが頼るのは俺だけでいい。
そこまで考えて、俺は自分の心が狭いことを実感して思わずため息をついた。
なまえさんは視線を忙しなく彷徨わせ、誰が見ても分かるくらい困っているようだった。
照れたような表情をしたかと思えば、今度は辛そうな顔をする。コロコロと表情が変わり、まさに百面相だった。
そんなに言えない、言いたくない理由なのか?
終いには、だんだん泣きそうな顔になってきたなまえさんに、さすがにやり過ぎたかと思い始めた。
仕方ない、今日は諦めるか...
普段、公安でも探偵でも組織でも、自分から引く事なんてないが、惚れた弱みというやつか...
「なまえさんも今日は疲れたでしょう。とりあえず、自宅までお送り、しっ」
します、そう言いかけた時、なまえさんが俺の腕を引いた。
突然の事に俺は、なまえさんに引っ張られるままに少し前屈みになる。
そして、ほんの一瞬唇に柔らかいものが触れた。
そう、なまえさんからキスをされた。
「こ、これが理由です!」
パッとすぐに離れたなまえさんは、目は涙で潤み顔を真っ赤にして、そう言い放った。
正直、全然説明になっていないし、結局嘘をついた理由も分からないが、そんな彼女が愛おしくて仕方ない。
「やっぱり、あなたには敵わないな」
俺自身の為だ。なまえさんがこの部屋にいたという証があれば、いつか彼女が帰ってくる...そんな所詮は願掛けのようなもの。
しかし、そんなものに縋りたくなる程に俺には彼女が必要だった。
「なまえさん、またここに住みませんか?」
抱きついてきたなまえさんに、そう問いかければ、彼女は勢いよく顔を上げた。
一瞬とても嬉しそうな顔をしたが、次の瞬間には苦しそうな表情になった。
彼女は幸せになる事を、自分の心に誰かを入れる事を怖れている。
俺にはその気持ちがよく分かった。
幸せになる程、大切な人が増える程、いつか失うのではないかと怖くなるのだ。
だが、今は失くす事よりもなまえさんが側にいない事の方が苦しい。
だから、俺は命を懸けて彼女を守る。
「ここにいれば、僕があなたを守れる。FBIに頼る必要なんてありません」
「知って、いたんですか...」
俺が知らないはずがないだろう。
なまえさんが戻ってきたと分かった時、彼女の身辺は全て調べ上げた。
彼女がFBIに保護されていると分かった時は、正直自分を見失いそうになるくらい嫉妬した。
「そういう事は僕の専門ですからね。そもそもどうして僕を頼らなかったんですか?記憶喪失なんていう嘘までついて、よりにもよって赤井を頼るなんて」
今俺はひどい顔をしているだろう。
嫉妬に塗れた男の顔なんて見れたものじゃない。
彼女は小さな声で、ごめんなさい...と言って俯いている。
違う、俺は責めたいわけじゃない。
理由が知りたいのだ。俺を頼らなかった、記憶喪失なんて嘘をついた訳を。
それだけは、いくら考えても分からなかったのだ。
「...二度目にトリップした時、最初に会ったのが赤井さんだったからです。深い意味はありません」
「なら、なんで嘘をつく必要があったんですか?」
それは...と口籠る彼女。
嘘だとバレバレなのに、それでも隠そうとする。そうまでして隠す理由が分からない。
だが、今これ以上問い詰めても、彼女は決して口を割らないだろう。
「では、先にさっきの答え合わせをしましょう」
俺は話題を変えることにした。
急な話題転換になまえさんは戸惑った様子で、首を傾げている。
「答え合わせ、ですか?」
「私たちは付き合っていると思っていいのだろうか?というやつです」
彼女は思い出したかのように、一気に頰が赤く染まった。
やっぱりなまえさんは分かりやすい。
そんな彼女の腕を掴んで引き寄せると、驚いてポカンと薄く開いたその唇を奪った。
チュッと触れるだけのキスをして、そっと離れる。
「これが答えです」
彼女の瞳を見つめて、そう告げれば瞬く間に頰を上気させ口をパクパクしている。
「なまえさん、伝わりましたか?」
「...そんなの、反則です...そんなんじゃ全然分かりません」
頰を染めたまま目を伏せて、少し拗ねたような顔をするなまえさん。
そんな顔をされると、余計に虐めたくなる。
俺は小学生か...
「では、なまえさんも嘘をついた本当の理由を教えてくれますか?」
これでなまえさんが理由を教えてくれるとは思わないが、つい赤井を頼った事への仕返しをしたくなった。
この世界で、なまえさんが頼るのは俺だけでいい。
そこまで考えて、俺は自分の心が狭いことを実感して思わずため息をついた。
なまえさんは視線を忙しなく彷徨わせ、誰が見ても分かるくらい困っているようだった。
照れたような表情をしたかと思えば、今度は辛そうな顔をする。コロコロと表情が変わり、まさに百面相だった。
そんなに言えない、言いたくない理由なのか?
終いには、だんだん泣きそうな顔になってきたなまえさんに、さすがにやり過ぎたかと思い始めた。
仕方ない、今日は諦めるか...
普段、公安でも探偵でも組織でも、自分から引く事なんてないが、惚れた弱みというやつか...
「なまえさんも今日は疲れたでしょう。とりあえず、自宅までお送り、しっ」
します、そう言いかけた時、なまえさんが俺の腕を引いた。
突然の事に俺は、なまえさんに引っ張られるままに少し前屈みになる。
そして、ほんの一瞬唇に柔らかいものが触れた。
そう、なまえさんからキスをされた。
「こ、これが理由です!」
パッとすぐに離れたなまえさんは、目は涙で潤み顔を真っ赤にして、そう言い放った。
正直、全然説明になっていないし、結局嘘をついた理由も分からないが、そんな彼女が愛おしくて仕方ない。
「やっぱり、あなたには敵わないな」