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「話はだいたい分かった」
「だから、なまえさんは記憶喪失のフリをしたんだね」
さすが頭のいい2人は、私が泣きながら勢いに任せて話した内容を、すぐに理解してくれた。
順序もバラバラで取り留めもなく話したから、非常に分かりづらかっただろうに、彼らは根気強く最後まで聞いてくれた。
「俺はなまえの心配は杞憂だと思う」
「僕もそう思う。安室さんなら大丈夫だよ」
「え、逆になんでそんな風に思えるの?」
何故そんなに簡単に大丈夫なんて言えるのか。
人は必ず死ぬ。そんな事は分かっている。
どんなに強くても、頭が良くても、それは変えることの出来ない事実。
ただ私は自分がその一因になる可能性がある事が恐ろしくて堪らないのだ。
「なまえさんは、安室さんの事信じてないの?」
「私が零さんを...信じて、ない...?」
「なまえさんはこの世界で起こる出来事とか色々な人の情報を知ってるんでしょ?でも、それは途中までだよね?」
「うん。結末までは知らない」
コナンくんが何を言いたいのか、分からない。
零さんの頭の良さも強さも、私は知っているつもりだ。彼の能力を疑った事など一度もない。
「結末を知らないのに、安室さんが死ぬかもしれないって思ってるって事だよね?それって、安室さんを信じてないって事じゃないかな」
「そんな...!私は零さんを...」
信じてる、そう思っていたはずなのに、ハッキリ言い切れなかった。
私は零さんを信じている”つもり”だったのかもしれない。
零さんを失うのが怖い、そんな私の心の弱さが皆を遠ざけようとした。
物語が変わってしまうかもとか、それで誰かが傷つくかもしれないとか、全ては皆の為にみたいな顔をして1人悲劇のヒロインぶって...こうして嘘を積み重ねた。
結局私は、自分が傷つくのが怖かっただけだ...
「なまえ」
そんな自分が情けなくて俯き手をギュッと握りしめていると、赤井さんが優しい声で私の名前を呼んだ。
「お前は自分がいる事で誰かが死ぬかもしれないという心配ばかりしているようだが、それは言い換えればなまえがいる事で誰かが助かるかもしれないという事にはならないか?」
「私がいる事で...誰かが助かる...?」
「あぁ、なまえの存在が未来にどう影響するのかなんて誰にも分からない。だから、そんな不確かな想像で自分を追い詰めるな」
工藤邸に来てから、私はどれだけ泣くのだろうか。
さっきまで散々泣いていたのに、涙は枯れる事を知らないようだ。
彼らの優しさに私の涙腺は壊れ、工藤邸から出る頃には目はすっかり腫れてしまっていた。
今日話した事は、周囲にバレると私の命が狙われる危険性がある為、とりあえずは私と赤井さん、コナンくんの3人の秘密という事になった。
そして零さんに話すかどうかは、私に任せると言われた。
でも今更、本当は記憶喪失じゃありませんでしたなんて、どんな顔して言えばいいのか...
零さんはなんて言うだろうか...?
————
「あちゃー」
朝起きて鏡を見ると、目が貯金箱のようになった自分がいた。
昨日あれだけ泣けば、仕方ないか...
しかし、困った。
今日はこれからポアロのバイトがあるのだが、こんな顔で行ったら絶対心配されてしまう。
それにこの顔で接客するのも気がひける。
とりあえず、冷やすか...
「いらっしゃいませ」
「こんにちはー!」
「なまえさーん、遊びに来てあげたわよー!って、なにその顔!?」
「何かあったのか!?」
お昼前に、女子高生3人組がやってきた。
実はポアロでバイトするようになってから、蘭ちゃん経由で園子ちゃんや世良ちゃんとも仲良くなり、今日みたいに休みの日や学校帰りにお茶しに来てくれるのだ。
そんな彼女たちは私の顔を見て驚いている。
冷やしたら少しはマシになったと思っていたのだが、やはりダメだったか。
出勤してすぐ零さんにも、大丈夫か?と心配された。
「ちょっと、泣ける映画を見ただけだよー」
零さんに言ったのと同じ言い訳をして、心配させてごめんね、と謝った。
蘭ちゃんと園子ちゃんは、それですっかり騙されてくれたようだが、世良ちゃんだけは今朝の零さんと同じような納得していないような顔をしていた。
どうして探偵は皆こんなに鋭いのだろうか...
そんな世良ちゃんの探るような視線には気づかなかったフリをし、彼女たちをテーブル席へ案内した。
「なまえさんも、すっかり慣れたわね。最初はポアロの食器がなくなっちゃうかもと思ったけど!」
「ちょっと、園子!なまえさん気にしないで下さいね?」
笑顔でなかなか辛辣な事を言う園子ちゃんと、フォローしようとしてくれている蘭ちゃんに苦笑いを返す。
「まぁね...私も今日こそはクビだーって思いながら仕事してたよ」
園子ちゃんの言う通り私は毎日のように皿やカップを割っていて、今日こそクビになるのでは...とヒヤヒヤしていた。
その度に、零さんや梓さんがさり気なくフォローしてくれたおかげで今日まで首の皮が繋がっているのだ。
それから、注文が決まったら呼んでねと声をかけて、私は彼女たちのテーブルを離れた。
「だから、なまえさんは記憶喪失のフリをしたんだね」
さすが頭のいい2人は、私が泣きながら勢いに任せて話した内容を、すぐに理解してくれた。
順序もバラバラで取り留めもなく話したから、非常に分かりづらかっただろうに、彼らは根気強く最後まで聞いてくれた。
「俺はなまえの心配は杞憂だと思う」
「僕もそう思う。安室さんなら大丈夫だよ」
「え、逆になんでそんな風に思えるの?」
何故そんなに簡単に大丈夫なんて言えるのか。
人は必ず死ぬ。そんな事は分かっている。
どんなに強くても、頭が良くても、それは変えることの出来ない事実。
ただ私は自分がその一因になる可能性がある事が恐ろしくて堪らないのだ。
「なまえさんは、安室さんの事信じてないの?」
「私が零さんを...信じて、ない...?」
「なまえさんはこの世界で起こる出来事とか色々な人の情報を知ってるんでしょ?でも、それは途中までだよね?」
「うん。結末までは知らない」
コナンくんが何を言いたいのか、分からない。
零さんの頭の良さも強さも、私は知っているつもりだ。彼の能力を疑った事など一度もない。
「結末を知らないのに、安室さんが死ぬかもしれないって思ってるって事だよね?それって、安室さんを信じてないって事じゃないかな」
「そんな...!私は零さんを...」
信じてる、そう思っていたはずなのに、ハッキリ言い切れなかった。
私は零さんを信じている”つもり”だったのかもしれない。
零さんを失うのが怖い、そんな私の心の弱さが皆を遠ざけようとした。
物語が変わってしまうかもとか、それで誰かが傷つくかもしれないとか、全ては皆の為にみたいな顔をして1人悲劇のヒロインぶって...こうして嘘を積み重ねた。
結局私は、自分が傷つくのが怖かっただけだ...
「なまえ」
そんな自分が情けなくて俯き手をギュッと握りしめていると、赤井さんが優しい声で私の名前を呼んだ。
「お前は自分がいる事で誰かが死ぬかもしれないという心配ばかりしているようだが、それは言い換えればなまえがいる事で誰かが助かるかもしれないという事にはならないか?」
「私がいる事で...誰かが助かる...?」
「あぁ、なまえの存在が未来にどう影響するのかなんて誰にも分からない。だから、そんな不確かな想像で自分を追い詰めるな」
工藤邸に来てから、私はどれだけ泣くのだろうか。
さっきまで散々泣いていたのに、涙は枯れる事を知らないようだ。
彼らの優しさに私の涙腺は壊れ、工藤邸から出る頃には目はすっかり腫れてしまっていた。
今日話した事は、周囲にバレると私の命が狙われる危険性がある為、とりあえずは私と赤井さん、コナンくんの3人の秘密という事になった。
そして零さんに話すかどうかは、私に任せると言われた。
でも今更、本当は記憶喪失じゃありませんでしたなんて、どんな顔して言えばいいのか...
零さんはなんて言うだろうか...?
————
「あちゃー」
朝起きて鏡を見ると、目が貯金箱のようになった自分がいた。
昨日あれだけ泣けば、仕方ないか...
しかし、困った。
今日はこれからポアロのバイトがあるのだが、こんな顔で行ったら絶対心配されてしまう。
それにこの顔で接客するのも気がひける。
とりあえず、冷やすか...
「いらっしゃいませ」
「こんにちはー!」
「なまえさーん、遊びに来てあげたわよー!って、なにその顔!?」
「何かあったのか!?」
お昼前に、女子高生3人組がやってきた。
実はポアロでバイトするようになってから、蘭ちゃん経由で園子ちゃんや世良ちゃんとも仲良くなり、今日みたいに休みの日や学校帰りにお茶しに来てくれるのだ。
そんな彼女たちは私の顔を見て驚いている。
冷やしたら少しはマシになったと思っていたのだが、やはりダメだったか。
出勤してすぐ零さんにも、大丈夫か?と心配された。
「ちょっと、泣ける映画を見ただけだよー」
零さんに言ったのと同じ言い訳をして、心配させてごめんね、と謝った。
蘭ちゃんと園子ちゃんは、それですっかり騙されてくれたようだが、世良ちゃんだけは今朝の零さんと同じような納得していないような顔をしていた。
どうして探偵は皆こんなに鋭いのだろうか...
そんな世良ちゃんの探るような視線には気づかなかったフリをし、彼女たちをテーブル席へ案内した。
「なまえさんも、すっかり慣れたわね。最初はポアロの食器がなくなっちゃうかもと思ったけど!」
「ちょっと、園子!なまえさん気にしないで下さいね?」
笑顔でなかなか辛辣な事を言う園子ちゃんと、フォローしようとしてくれている蘭ちゃんに苦笑いを返す。
「まぁね...私も今日こそはクビだーって思いながら仕事してたよ」
園子ちゃんの言う通り私は毎日のように皿やカップを割っていて、今日こそクビになるのでは...とヒヤヒヤしていた。
その度に、零さんや梓さんがさり気なくフォローしてくれたおかげで今日まで首の皮が繋がっているのだ。
それから、注文が決まったら呼んでねと声をかけて、私は彼女たちのテーブルを離れた。