目が覚めたら、知らない部屋のベッドにいた。

あれ、私昨日飲みに行ったっけ？
いや、昨日は仕事から帰ってきて、ビールを1本だけ飲んでそのまま寝たはず。

とにかく、私はベッドから起き上がり状況を把握することにした。

枕元にあるデジタル時計を見ると、2:00と表示されている。
ふと、足元を見ると壁にギターが立て掛けてあった。

部屋を見回してみて分かったことは、今が深夜2:00で、この部屋の家主はギターが（おそらく）弾けて、この部屋はシックな感じにまとめてあり、とてもセンスがいいということくらいだった。
あと、この部屋とってもいい匂いする。

なぜこの家にいるのかは分からないが、今日も仕事があるし、とにかく家主に挨拶して帰らなければ。

てか、私いつも家で着ている部屋着なんだけど、この格好でここまで来たの？
とにかく自分の家に帰ろう...

そっと扉を開けて、隣の部屋を覗くが誰もいない。ソファで寝てるのかとも思ったが、誰かがそこで寝たような形跡もない。

どうしよう、勝手に帰ってもいいかな。
書き置きしとけば大丈夫かな。
私こんな格好だし、暗いうちに帰りたい。

レースのカーテンから、月の光が入り込み、室内は夜にしては明るい。
何気なくカーテンを開けると、まん丸のお月様が暗い夜空にポッカリ浮かんでいるのが見えた。
今夜は、満月か。

さらにベランダにはプランターがあり、トマトやセロリなどが育てられていた。
トマトはそろそろ食べ頃だなぁなんて思ったその時、鍵を開けるガチャリという音がした。

玄関を開ける音がして、廊下を歩く足音がだんだん近づいてくる。
しかし私がいるリビングのドアの前まで来ると、それがピタリと止まり一向に開ける気配がない。

とにかく早く帰りたかった私は、こちらからドアを開けることにした。
しかし、ドアを開けた先にいた人物に、私は息をするのも忘れて動けなくなってしまった。

そして、あっと思った瞬間には、私は手首を捻り上げられて、床に押し付けられていた。

「お前は何者だ？」

その人が冷たい声で問いかけてくるが、私はそれどころじゃない。

なぜなら、その人、つまりこの家の家主は…あの安室透だったのだから...