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あの後、あの車でなんとか工藤邸の近くまで戻ってきた頃には、月が大分高い位置で輝いていた。
一旦家の中に入り、コナンくんや新一パパと少し話をした。
コナンくんは、申し訳なさそうな顔をして私に謝ってくるし、新一パパも息子に協力してくれてありがとう、なんて言うから、私は怒るに怒れなくなってしまった。
そのあと赤井さんがマンションまで送ってくれると言うので、お言葉に甘えてマスタングに乗せてもらった。
零さんの車もいい匂いがしたが、赤井さんの車も負けず劣らずいい匂いがした。
マンションに到着すると、赤井さんは車を路肩に停めてハザードを焚いた。
「今日はすまなかったな。体はなんともないか?」
「体は大丈夫ですけど...」
「強めの睡眠薬を盛ったから、何か不調が出たら言ってくれ。それからなまえの記憶についてだが、今日のお詫びに降谷くんには黙っておこう」
何か理由があるんだろう?と言う赤井さんに、私は小さく頷いた。
「俺にはお前の抱えているものは分からんが、人間が1人で出来ることなんて、たかが知れている。だから、なんでも1人で頑張ろうとするな」
優しく大きな手で、私の頭を撫でてくれた赤井さん。
お前は1人じゃない、そう言われているようで、思わず涙が出た。
「赤井さん、いつか...話を聞いてくれませんか?」
「あぁ、俺はいつでもいい」
「ありがとうございます。じゃあ、また連絡します」
車を降りて、走り出したマスタングに手を振ると、赤井さんが手だけ窓から出してヒラヒラとしてくれた。
部屋に入ると、どっと疲れが襲ってきて私はベッドに倒れ込んだ。お風呂に入らなければと思うが、体がだるくて仕方ない。
もうお風呂は明日の朝にしようと諦めて、瞼を閉じるが、体は疲れているはずなのに早く寝なきゃと思うほど目が冴えて眠れない。
明日はポアロのバイトがあるのに...
結局眠れないまま朝になり、重たい体を引きずってポアロに出勤した。
外から店内を覗くと、すでに零さんが来ていて朝の仕込みに忙しそうだ。
そっと扉を開けると、零さんが凄い勢いで近づいてきた。
「なまえさん、おはようございます」
昨日の今日で、なんとなく気まずくて、目を合わせずに挨拶を返してしまった。
赤井さんは私に記憶がある事は黙っていてくれると言っていたが、きっと零さんは人質になった私を不審に思っているに違いない。
しかし零さんは私の目の前まで来ると、自分のせいで巻き込んでしまった、とそう言って頭を下げた。
なんで...どうして...零さんのせいじゃないのに...
むしろ私は、零さんの足を引っ張って邪魔をしたのに。
胸がギュウッと締め付けられて、苦しい。
無力な自分が情けなくて、何の役にも立てない自分が悔しくて、それなのに零さんに頭を下げさている自分が許せなかった。
気づいたときには、涙が頬を伝っていた。
やっと頭を上げてくれた零さんは、私の顔を見てギョッとしたように慌て出した。
「なまえさん!?大丈夫ですか?どこか痛いところでも...」
いつものニコニコした安室さんでも、冷静沈着な降谷さんでもない、アタフタと私の心配をしてくれる姿は初めて見る零さんだった。
零さんもこんな風に慌てる事があるんだなぁと思ったら、さっきまでの苦しさが嘘のように消えて今度は笑いが込み上げてきた。
彼の一挙一動で、私は幸にも不幸にもなれるのだ。
「なまえさん?」
「フフッ、あ、すみません。安室さんがアワアワしてるところなんて初めて見て、つい...」
不思議そうな顔で私を見る零さんに、笑いながら謝るが、零さんは私の顔をじっと見ている。
やがて、何かを諦めたように肩を竦めると、とても優しい目で見つめられた。
その瞳があまりにも柔らかくて、私は恥ずかしくなり外を掃除してくると言って逃げた。
「あんな顔するなんて、反則だよ...」
「何が、反則なの?」
「それは、あの顔に決まってるでしょ?...あれ?」
掃除をしながら独り言を呟いたら、何故か返事が返ってきて、会話をしていた。
パッと振り返ると、そこにはコナンくんがいて...
「おはよう、なまえさん」
「お、おはよう...」
「あのね、僕も色んな人に守られて今ここにいるんだ。だからなまえさんも何でも1人で頑張らなくていいんだよ?」
なんで、今なのだろう。
昨日の今日で心が弱っている時に、赤井さんもコナンくんも、2人してそんな優しい事言わないでほしい。
優しくされると弱くなる、いつか何かで聞いたフレーズがぴったりだった。
「きっと言っても信じられないよ」
「それが真実なら信じるよ」
「でも探偵は疑う事が仕事でしょ?」
「不可能なものを除外していって残ったものが、例えどんなに信じられなくても、それが真実なんだよ」
「...バイトが終わったら、連絡してもいい?」
「うん、待ってるね!」
そう言って手を振って店内に入っていくコナンくんの後ろ姿を見送った。
もう無理だと思った。
彼らに1人で頑張るなと言われ、零さんの優しい瞳に見つめられて、今までなんとか取り繕って守ってきた砦は、見事に崩れ去ってしまった。
全てを話せる訳じゃない。きっと言えない事の方が多いけど、それでも彼らは信じてくれるだろうか?
3年前の零さんが信じてくれたように。
彼らを信じてみよう...
眠っていない体は重だるいのに、何故か心は晴れやかだった。
一旦家の中に入り、コナンくんや新一パパと少し話をした。
コナンくんは、申し訳なさそうな顔をして私に謝ってくるし、新一パパも息子に協力してくれてありがとう、なんて言うから、私は怒るに怒れなくなってしまった。
そのあと赤井さんがマンションまで送ってくれると言うので、お言葉に甘えてマスタングに乗せてもらった。
零さんの車もいい匂いがしたが、赤井さんの車も負けず劣らずいい匂いがした。
マンションに到着すると、赤井さんは車を路肩に停めてハザードを焚いた。
「今日はすまなかったな。体はなんともないか?」
「体は大丈夫ですけど...」
「強めの睡眠薬を盛ったから、何か不調が出たら言ってくれ。それからなまえの記憶についてだが、今日のお詫びに降谷くんには黙っておこう」
何か理由があるんだろう?と言う赤井さんに、私は小さく頷いた。
「俺にはお前の抱えているものは分からんが、人間が1人で出来ることなんて、たかが知れている。だから、なんでも1人で頑張ろうとするな」
優しく大きな手で、私の頭を撫でてくれた赤井さん。
お前は1人じゃない、そう言われているようで、思わず涙が出た。
「赤井さん、いつか...話を聞いてくれませんか?」
「あぁ、俺はいつでもいい」
「ありがとうございます。じゃあ、また連絡します」
車を降りて、走り出したマスタングに手を振ると、赤井さんが手だけ窓から出してヒラヒラとしてくれた。
部屋に入ると、どっと疲れが襲ってきて私はベッドに倒れ込んだ。お風呂に入らなければと思うが、体がだるくて仕方ない。
もうお風呂は明日の朝にしようと諦めて、瞼を閉じるが、体は疲れているはずなのに早く寝なきゃと思うほど目が冴えて眠れない。
明日はポアロのバイトがあるのに...
結局眠れないまま朝になり、重たい体を引きずってポアロに出勤した。
外から店内を覗くと、すでに零さんが来ていて朝の仕込みに忙しそうだ。
そっと扉を開けると、零さんが凄い勢いで近づいてきた。
「なまえさん、おはようございます」
昨日の今日で、なんとなく気まずくて、目を合わせずに挨拶を返してしまった。
赤井さんは私に記憶がある事は黙っていてくれると言っていたが、きっと零さんは人質になった私を不審に思っているに違いない。
しかし零さんは私の目の前まで来ると、自分のせいで巻き込んでしまった、とそう言って頭を下げた。
なんで...どうして...零さんのせいじゃないのに...
むしろ私は、零さんの足を引っ張って邪魔をしたのに。
胸がギュウッと締め付けられて、苦しい。
無力な自分が情けなくて、何の役にも立てない自分が悔しくて、それなのに零さんに頭を下げさている自分が許せなかった。
気づいたときには、涙が頬を伝っていた。
やっと頭を上げてくれた零さんは、私の顔を見てギョッとしたように慌て出した。
「なまえさん!?大丈夫ですか?どこか痛いところでも...」
いつものニコニコした安室さんでも、冷静沈着な降谷さんでもない、アタフタと私の心配をしてくれる姿は初めて見る零さんだった。
零さんもこんな風に慌てる事があるんだなぁと思ったら、さっきまでの苦しさが嘘のように消えて今度は笑いが込み上げてきた。
彼の一挙一動で、私は幸にも不幸にもなれるのだ。
「なまえさん?」
「フフッ、あ、すみません。安室さんがアワアワしてるところなんて初めて見て、つい...」
不思議そうな顔で私を見る零さんに、笑いながら謝るが、零さんは私の顔をじっと見ている。
やがて、何かを諦めたように肩を竦めると、とても優しい目で見つめられた。
その瞳があまりにも柔らかくて、私は恥ずかしくなり外を掃除してくると言って逃げた。
「あんな顔するなんて、反則だよ...」
「何が、反則なの?」
「それは、あの顔に決まってるでしょ?...あれ?」
掃除をしながら独り言を呟いたら、何故か返事が返ってきて、会話をしていた。
パッと振り返ると、そこにはコナンくんがいて...
「おはよう、なまえさん」
「お、おはよう...」
「あのね、僕も色んな人に守られて今ここにいるんだ。だからなまえさんも何でも1人で頑張らなくていいんだよ?」
なんで、今なのだろう。
昨日の今日で心が弱っている時に、赤井さんもコナンくんも、2人してそんな優しい事言わないでほしい。
優しくされると弱くなる、いつか何かで聞いたフレーズがぴったりだった。
「きっと言っても信じられないよ」
「それが真実なら信じるよ」
「でも探偵は疑う事が仕事でしょ?」
「不可能なものを除外していって残ったものが、例えどんなに信じられなくても、それが真実なんだよ」
「...バイトが終わったら、連絡してもいい?」
「うん、待ってるね!」
そう言って手を振って店内に入っていくコナンくんの後ろ姿を見送った。
もう無理だと思った。
彼らに1人で頑張るなと言われ、零さんの優しい瞳に見つめられて、今までなんとか取り繕って守ってきた砦は、見事に崩れ去ってしまった。
全てを話せる訳じゃない。きっと言えない事の方が多いけど、それでも彼らは信じてくれるだろうか?
3年前の零さんが信じてくれたように。
彼らを信じてみよう...
眠っていない体は重だるいのに、何故か心は晴れやかだった。