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ついに来た...
このスマホに掛けてくるのは、ほとんどがコナンくんで、本当にごく稀に沖矢さんくらいだ。
だから今、ディスプレイに表示される知らないこの番号は、きっと彼しかいない。
「...も、もしもし」
「こんばんは。安室です」
「こんばんは...」
『バイトの件ですが、マスターから了承を貰いましたので、明後日から来られますか?』
明後日からって、そんな心の準備が...
というか、私ホントに大丈夫だろうか。
「なまえさん?大丈夫ですか?」
「...あの、安室さん...やっぱり、なんでもないです」
「そうですか。では、明後日の朝9時にポアロへ来てくださいね」
おやすみなさい、そう言って通話を切った。
切る直前に電話の向こうで零さんが笑った気配がして、それだけで私は幸せを感じた。
本当は一緒にいたい、電話越しじゃなくて直接零さんの笑顔を見たい。
零さんに、触れたい...
————
「おはようございまーす...」
朝9時ポアロの扉をそぅっと開けると、エプロンをつけた零さんと梓さんが出迎えてくれた。
「なまえさん、おはようこざいます!ロッカーを案内するので、こちらへどうぞ」
奥の扉を開けると休憩室になっていて、4つロッカーがあるうちの一番奥が私のロッカーだと言われた。
ちなみに、隣は零さんのロッカーだそうだ。
開けてみたいな、何入ってるのかな...きっと零さんの匂いでいっぱいに...
「なまえさん?聞いてます?」
「あ、開けたいなんて思ってませんっ!!」
人様のロッカーを勝手に開けたいなどと、いけない事を考えていると、名前を呼ばれて私は飛び上がってしまった。
これじゃ、イタズラが見つかった子どもと同じじゃないか。
そっと零さんの顔を見ると、口元に手を当てて笑いを堪えていた。
「そのロッカーはなまえさんのなので開けていいですよ?むしろ、新しいエプロン入れておいたので開けてください」
ごめんなさい。
私はあなたのロッカーが開けたかったんです...
恥ずかしくて恥ずかしくて、穴があったら入りたかった。
無言でロッカーを開けると、零さんが言った通り黒いエプロンが綺麗に畳まれて入っていた。
手に取って広げてみると、胸のあたりにポアロとプリントされていて零さんとお揃いだった。
それだけで、さっきの恥ずかしさも忘れて、私の顔はだらしなく緩んだ。
さっそく、エプロンを着けてみたのだが、後ろの腰紐が上手く縛れない。
後ろに腕を回して格闘していると、零さんが小さく笑うのが聞こえた。
ちょっとムッとして零さんを見たその瞬間、零さんと私の距離が一気に近くなった。
「え、ちょ、あむ、安室さん!?」
「じっとして」
耳元で囁かれて、私はそのままピシリと固まった。
だって、この体勢でイケメンに耳元で囁かれたら、女だったら誰だってこうなる。
いや零さんなら、男でもなる。
そう今の体勢は、零さんが私を前から抱き締めるように、腕を私の背中に回して腰紐を結んでくれている。
私の顔面は零さんの逞しい胸板に押し付けられていて、ここぞとばかりに大きく息を吸い込んだ。
いい匂い...こんなチャンス二度とないかもしれないと、犬並みにクンクンしまくった。
「何か匂いますか?」
「とってもいい匂いがします〜」
答えてからハッとした。
私誰に言ってるの?
ここには私と零さんしかいない。
零さんのいい匂いに包まれて、つい意識が飛んでいた。
沸騰したかのように、顔が一気に熱くなった。
「できましたよ。おや、真っ赤になって可愛いですね」
私から離れた零さんが、分かっているくせに顔を覗き込んできた。
なんか、さっきからバーボンな気がするのは気のせいだろうか?
まだポアロに来て10分程しか経っていないが、私の胸は高鳴りっぱなしだ。
こんなんで、今日1日大丈夫だろうか?
もう既に不安しかなかった。
やっとバイトの時間が終わり、ため息をつきながら休憩室でエプロンを外す。
結果からいうと、バイト初日は散々だった。
ここまで不器用だったのかと、自分で自分に呆れた。
零さんと梓さんは、フォローしてくれたり、優しく励ましてくれたが、正直引かれた自信がある。
たった1日でグラス3つに皿を2枚も割った。
挙句に、コーヒーをお客さんにぶちまけた。幸い、常連の優しいお客さんで「最初はそんなものよ」と笑って許してくれた。
もはや零さんにバレるとか、そんな話じゃない。
なんで零さんは、こんな私をバイトに誘ったのだろう...
悔しくて、情けなくて、外したエプロンをギュッと握りしめた。
その時、扉が開き誰かが入ってきた。
「なまえさん?」
「梓さん...今日はご迷惑ばかりお掛けして本当にすみません...」
休憩室に入ってきた梓さんに名前を呼ばれたが、すっかり自信をなくしてしまった私は謝ることしかできなかった。
梓さん怒ってたら、どうしよう?
漫画では凄く優しい人だったけど、いくら彼女でも今日の私の酷さじゃイライラしても仕方ない、そう思うレベルだった。
「私も最初は失敗ばっかりでしたよ、なーんて人に言われても、やっぱり落ち込んじゃいますよね」
そんな私の心配を他所に、梓さんは優しい笑顔でそう言った。
そして何故か自信満々に人差し指を立てた。
「でも、大丈夫です!なまえさんには、安室さんがいます!!」
「な、なんでそこで、あ、安室さんが出てくるんですかっ!?」
梓さんの予想外な発言に、驚いてつい大きな声が出てしまった。
梓さんが慌てたように、しーっとして私の手を取って休憩室の奥に引っ張った。
「だって、なまえさんと安室さんって、すっごくいい雰囲気じゃないですか!それに、ここ最近の安室さんは、なんとなくボンヤリしてて心配してたんですけど、なまえさんが来たら、すっかり元気になったし」
私の目は誤魔化せませんよ?と、梓さんは得意げな顔をしている。
零さんの事はさておき、大丈夫と笑う彼女を見ていると、本当に大丈夫な気がしてくるから不思議だ。
梓さんは強いな...私とは違う。
「明日も、一緒に頑張りましょうね!お疲れ様でした」
「はい。今日はありがとうございました。明日もよろしくお願いします」
皆に挨拶をしてポアロを出て、なんとも言えない気持ちでマンションへの道を歩いた。
きっと彼を支えられるのは、梓さんのような太陽みたいに明るくて、芯が強い人だ。
自分で決めた事すらも、少しの事で決心が揺らぐような私ではきっとダメだ。
私はいつも自分の事ばかりで、だから気づくことが出来なかった。
零さんが赤井さんの正体に近付こうとしている事に...
それぞれがそれぞれの大切な思いのために動き始めていた事に...
このスマホに掛けてくるのは、ほとんどがコナンくんで、本当にごく稀に沖矢さんくらいだ。
だから今、ディスプレイに表示される知らないこの番号は、きっと彼しかいない。
「...も、もしもし」
「こんばんは。安室です」
「こんばんは...」
『バイトの件ですが、マスターから了承を貰いましたので、明後日から来られますか?』
明後日からって、そんな心の準備が...
というか、私ホントに大丈夫だろうか。
「なまえさん?大丈夫ですか?」
「...あの、安室さん...やっぱり、なんでもないです」
「そうですか。では、明後日の朝9時にポアロへ来てくださいね」
おやすみなさい、そう言って通話を切った。
切る直前に電話の向こうで零さんが笑った気配がして、それだけで私は幸せを感じた。
本当は一緒にいたい、電話越しじゃなくて直接零さんの笑顔を見たい。
零さんに、触れたい...
————
「おはようございまーす...」
朝9時ポアロの扉をそぅっと開けると、エプロンをつけた零さんと梓さんが出迎えてくれた。
「なまえさん、おはようこざいます!ロッカーを案内するので、こちらへどうぞ」
奥の扉を開けると休憩室になっていて、4つロッカーがあるうちの一番奥が私のロッカーだと言われた。
ちなみに、隣は零さんのロッカーだそうだ。
開けてみたいな、何入ってるのかな...きっと零さんの匂いでいっぱいに...
「なまえさん?聞いてます?」
「あ、開けたいなんて思ってませんっ!!」
人様のロッカーを勝手に開けたいなどと、いけない事を考えていると、名前を呼ばれて私は飛び上がってしまった。
これじゃ、イタズラが見つかった子どもと同じじゃないか。
そっと零さんの顔を見ると、口元に手を当てて笑いを堪えていた。
「そのロッカーはなまえさんのなので開けていいですよ?むしろ、新しいエプロン入れておいたので開けてください」
ごめんなさい。
私はあなたのロッカーが開けたかったんです...
恥ずかしくて恥ずかしくて、穴があったら入りたかった。
無言でロッカーを開けると、零さんが言った通り黒いエプロンが綺麗に畳まれて入っていた。
手に取って広げてみると、胸のあたりにポアロとプリントされていて零さんとお揃いだった。
それだけで、さっきの恥ずかしさも忘れて、私の顔はだらしなく緩んだ。
さっそく、エプロンを着けてみたのだが、後ろの腰紐が上手く縛れない。
後ろに腕を回して格闘していると、零さんが小さく笑うのが聞こえた。
ちょっとムッとして零さんを見たその瞬間、零さんと私の距離が一気に近くなった。
「え、ちょ、あむ、安室さん!?」
「じっとして」
耳元で囁かれて、私はそのままピシリと固まった。
だって、この体勢でイケメンに耳元で囁かれたら、女だったら誰だってこうなる。
いや零さんなら、男でもなる。
そう今の体勢は、零さんが私を前から抱き締めるように、腕を私の背中に回して腰紐を結んでくれている。
私の顔面は零さんの逞しい胸板に押し付けられていて、ここぞとばかりに大きく息を吸い込んだ。
いい匂い...こんなチャンス二度とないかもしれないと、犬並みにクンクンしまくった。
「何か匂いますか?」
「とってもいい匂いがします〜」
答えてからハッとした。
私誰に言ってるの?
ここには私と零さんしかいない。
零さんのいい匂いに包まれて、つい意識が飛んでいた。
沸騰したかのように、顔が一気に熱くなった。
「できましたよ。おや、真っ赤になって可愛いですね」
私から離れた零さんが、分かっているくせに顔を覗き込んできた。
なんか、さっきからバーボンな気がするのは気のせいだろうか?
まだポアロに来て10分程しか経っていないが、私の胸は高鳴りっぱなしだ。
こんなんで、今日1日大丈夫だろうか?
もう既に不安しかなかった。
やっとバイトの時間が終わり、ため息をつきながら休憩室でエプロンを外す。
結果からいうと、バイト初日は散々だった。
ここまで不器用だったのかと、自分で自分に呆れた。
零さんと梓さんは、フォローしてくれたり、優しく励ましてくれたが、正直引かれた自信がある。
たった1日でグラス3つに皿を2枚も割った。
挙句に、コーヒーをお客さんにぶちまけた。幸い、常連の優しいお客さんで「最初はそんなものよ」と笑って許してくれた。
もはや零さんにバレるとか、そんな話じゃない。
なんで零さんは、こんな私をバイトに誘ったのだろう...
悔しくて、情けなくて、外したエプロンをギュッと握りしめた。
その時、扉が開き誰かが入ってきた。
「なまえさん?」
「梓さん...今日はご迷惑ばかりお掛けして本当にすみません...」
休憩室に入ってきた梓さんに名前を呼ばれたが、すっかり自信をなくしてしまった私は謝ることしかできなかった。
梓さん怒ってたら、どうしよう?
漫画では凄く優しい人だったけど、いくら彼女でも今日の私の酷さじゃイライラしても仕方ない、そう思うレベルだった。
「私も最初は失敗ばっかりでしたよ、なーんて人に言われても、やっぱり落ち込んじゃいますよね」
そんな私の心配を他所に、梓さんは優しい笑顔でそう言った。
そして何故か自信満々に人差し指を立てた。
「でも、大丈夫です!なまえさんには、安室さんがいます!!」
「な、なんでそこで、あ、安室さんが出てくるんですかっ!?」
梓さんの予想外な発言に、驚いてつい大きな声が出てしまった。
梓さんが慌てたように、しーっとして私の手を取って休憩室の奥に引っ張った。
「だって、なまえさんと安室さんって、すっごくいい雰囲気じゃないですか!それに、ここ最近の安室さんは、なんとなくボンヤリしてて心配してたんですけど、なまえさんが来たら、すっかり元気になったし」
私の目は誤魔化せませんよ?と、梓さんは得意げな顔をしている。
零さんの事はさておき、大丈夫と笑う彼女を見ていると、本当に大丈夫な気がしてくるから不思議だ。
梓さんは強いな...私とは違う。
「明日も、一緒に頑張りましょうね!お疲れ様でした」
「はい。今日はありがとうございました。明日もよろしくお願いします」
皆に挨拶をしてポアロを出て、なんとも言えない気持ちでマンションへの道を歩いた。
きっと彼を支えられるのは、梓さんのような太陽みたいに明るくて、芯が強い人だ。
自分で決めた事すらも、少しの事で決心が揺らぐような私ではきっとダメだ。
私はいつも自分の事ばかりで、だから気づくことが出来なかった。
零さんが赤井さんの正体に近付こうとしている事に...
それぞれがそれぞれの大切な思いのために動き始めていた事に...