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暗くて、酷く寒い...
助けを求めて、手を伸ばしてもその手は宙を泳ぐばかりで何も掴めない。
もうダメだと諦めかけたその時、誰かが私の手を掴んでこの暗闇から引っ張り上げた。
私はこの手を知っている。
強くて優しい、この暖かい手を。
零さん...
どうか夢の中だけは、その名を呼ぶ事を許して...
目が覚めると、そこは病室だった。
部屋の明るさからして朝だろうか?
ふと右手に温もりを感じたが、もちろんそこには誰もいない。
零さんの夢を見ていたような気もするが、目が覚めた今はもう曖昧になってしまった。
だが、私の右手に残るこの温もりが夢じゃないと言っているかのようだった。
そういえば、子どもたちは無事だろうか?
零さんの声を聞いたら安心してしまい、子どもたちの無事を確認する前に気を失ってしまった。
でも、きっと零さんが来てくれたなら、皆無事だろう。
その時、扉をノックする音がして誰かが入ってきた。
起き上がって扉の方を見ると看護師さんだった。
「あら、目が覚めたんですね!よかった」
「あの、私...」
「みょうじさんは、低体温症になりかかって、ここに運び込まれたんですよ。今先生呼んできますね」
しばらくして、病室にやってきた先生は30歳くらいの若い女性だった。
そして一通り診察すると、先生はニッコリ笑った。
「うん、異常なし。今日退院して大丈夫そうだね。ただ背中を打ったみたいで打撲になってるから湿布出しておくね」
ありがとうございますとお礼を言うが、先生は何故かキラキラした目で私を見ていた。
そして先生の次の言葉で、私はむせそうになった。
「みょうじさんの彼氏、すっごくカッコいいわね!」
「か、彼氏?」
「そう!もうね、病院中のナースが噂してるわよ?意識のないあなたを彼がお姫様抱っこで救急まで運んできたって!処置が終わって病室に入ってからも、ずっとあなたの手を握って心配してたって様子を見に行ったナースが言ってたし」
顔から火が出そうだった。
今なら恥ずかしさで死ねるかも、そのくらい恥ずかしかった。
でもその反面、嬉しくてどうしようもなかった。
起きた時に残っていた手の温もりは、夢じゃなかった。零さんが私を病院まで運んで、病室で手を握っていてくれたのだ。
恥ずかしさと嬉しさで、どんな顔をすればいいか分からなくて、きっと私は変な顔をしていた事だろう。
「あんな王子様みたいなイケメン現実にいるのね〜あれはナース達が騒ぐのも無理ないわ」
恥ずかしさと嬉しさで悶える私に構わず、先生はうんうんと一人納得している。
「いや、あの人は...」
「あら、もうこんな時間!そろそろ行かなきゃ。みょうじさん、お大事にね」
彼氏ではない、と続けようとしたが、先生は腕時計を見ると慌ただしく病室から出て行ってしまった。
誤解解けなかったな...まぁでも病院中の噂だって言ってたから、先生一人の誤解を解いたところで焼け石に水か。
退院していいって言われたけど、何か手続きとかあるのだろうか?
勝手に帰るのはダメだよね。
とりあえず、荷物の片付けくらいはしておいた方がいいかなと思い、ベッドの傍の棚を開けると昨日私が来ていた服が綺麗に畳まれていた。
片付けると言っても荷物はこの服しかなかったので、私は今着ている病衣から自分の服に着替える事にした。
着替え終わってから、私はベッドに腰掛けて昨日の出来事を思い出していた。
零さん、彼氏に間違われるくらい心配してくれたんだ。
しかも意識がなかったからとはいえ、お姫様抱っこで病院まで運んでくれた。
そしてずっと手を...私の手を零さんが...
「イケメンすぎる...」
嬉しくて嬉しくて自分の手を見つめてニヤニヤしていた私は、人が入ってきた事に気づかなかった。
「...なまえさん、なにしてるの?」
突然声をかけられて、パッと顔を手から上げるとそこには笑顔が引き攣ったコナンくんがいた。
「い、いつからそこに...」
「僕なんにも見てないよ」
「...」
絶対ニヤニヤしてたとこ見られた。
小学生に気を遣われる私って...いや中身は高校生なんだけども。
「それより大丈夫そうでよかった!今沖矢さんが退院の手続きしてくれてるから、終わったら一緒に帰ろう」
「え?沖矢さんが?」
「うん。車出してもらったんだ」
マンションから生活費まで何から何までFBIにお世話になっているのに、さらに迷惑まで掛けてしまった。
そんな気持ちが顔に出ていたのか、コナンくんが私の顔を覗き込んできた。
「なまえさん、昨日は僕たちを守ろうとしてくれてありがとう」
「いや、私なんて結局何もできなかったし...」
「ううん。あの時なまえさんが体を張って時間を稼いでくれたから、通りがかった安室さんに助けを求める事ができたんだ」
「そっか、皆が無事でよかった」
コナンくんに励まされていると、扉がノックされて沖矢さんが顔を出した。
「退院の手続きは終わりました。なまえさん、体は大丈夫ですか?」
「沖矢さん、ご迷惑をお掛けしてすみません。体はもう何ともないです」
「それなら良かった。ですが、あまり無茶をしてはいけませんよ」
沖矢さんはそう言って、一瞬だけモスグリーンの瞳を覗かせた。
あれ、もしかして赤井さん怒ってる?
やっぱり迷惑掛けたから?
手間かけさせんなよ的な感じ?
どうしよう、なんてお詫びしたらいいのだろうか。
アワアワと慌て出した私を見て、彼らは顔を見合わせてから何故かため息をついた。
「ダメだよ、沖矢さん。なまえさん全然伝わってないみたい」
「そうみたいですね...割とストレートに言ったつもりだったのですが。女性は難しい」
彼らの会話の意味が全く分からなくて、私は首を傾げるしかない。
「あのねなまえさん。沖矢さんは、心配したって言いたいんだよ」
沖矢さんの方を見れば、その通りだと言わんばかりに頷いていた。
そして私の方へ手を伸ばし、まるで子どもにするように頭を撫でられた。
「気になる女性が無茶をしたら、心配するのは当然でしょう」
ボンッと音がしそうな勢いで、私は真っ赤になったと思う。
湯気が出そうな頭で、私は小さく「ありがとうございます...」と言う事しかできなかった。
以前から手を繋いできたり、頭を撫でたり、沖矢さんはいちいち反則だと思う。
それにいちいちドキドキしてしまう、私も私だけれど。
「いいえ。では、帰りましょう」
沖矢さんにそう促されて、私たちは病室を後にした。
助けを求めて、手を伸ばしてもその手は宙を泳ぐばかりで何も掴めない。
もうダメだと諦めかけたその時、誰かが私の手を掴んでこの暗闇から引っ張り上げた。
私はこの手を知っている。
強くて優しい、この暖かい手を。
零さん...
どうか夢の中だけは、その名を呼ぶ事を許して...
目が覚めると、そこは病室だった。
部屋の明るさからして朝だろうか?
ふと右手に温もりを感じたが、もちろんそこには誰もいない。
零さんの夢を見ていたような気もするが、目が覚めた今はもう曖昧になってしまった。
だが、私の右手に残るこの温もりが夢じゃないと言っているかのようだった。
そういえば、子どもたちは無事だろうか?
零さんの声を聞いたら安心してしまい、子どもたちの無事を確認する前に気を失ってしまった。
でも、きっと零さんが来てくれたなら、皆無事だろう。
その時、扉をノックする音がして誰かが入ってきた。
起き上がって扉の方を見ると看護師さんだった。
「あら、目が覚めたんですね!よかった」
「あの、私...」
「みょうじさんは、低体温症になりかかって、ここに運び込まれたんですよ。今先生呼んできますね」
しばらくして、病室にやってきた先生は30歳くらいの若い女性だった。
そして一通り診察すると、先生はニッコリ笑った。
「うん、異常なし。今日退院して大丈夫そうだね。ただ背中を打ったみたいで打撲になってるから湿布出しておくね」
ありがとうございますとお礼を言うが、先生は何故かキラキラした目で私を見ていた。
そして先生の次の言葉で、私はむせそうになった。
「みょうじさんの彼氏、すっごくカッコいいわね!」
「か、彼氏?」
「そう!もうね、病院中のナースが噂してるわよ?意識のないあなたを彼がお姫様抱っこで救急まで運んできたって!処置が終わって病室に入ってからも、ずっとあなたの手を握って心配してたって様子を見に行ったナースが言ってたし」
顔から火が出そうだった。
今なら恥ずかしさで死ねるかも、そのくらい恥ずかしかった。
でもその反面、嬉しくてどうしようもなかった。
起きた時に残っていた手の温もりは、夢じゃなかった。零さんが私を病院まで運んで、病室で手を握っていてくれたのだ。
恥ずかしさと嬉しさで、どんな顔をすればいいか分からなくて、きっと私は変な顔をしていた事だろう。
「あんな王子様みたいなイケメン現実にいるのね〜あれはナース達が騒ぐのも無理ないわ」
恥ずかしさと嬉しさで悶える私に構わず、先生はうんうんと一人納得している。
「いや、あの人は...」
「あら、もうこんな時間!そろそろ行かなきゃ。みょうじさん、お大事にね」
彼氏ではない、と続けようとしたが、先生は腕時計を見ると慌ただしく病室から出て行ってしまった。
誤解解けなかったな...まぁでも病院中の噂だって言ってたから、先生一人の誤解を解いたところで焼け石に水か。
退院していいって言われたけど、何か手続きとかあるのだろうか?
勝手に帰るのはダメだよね。
とりあえず、荷物の片付けくらいはしておいた方がいいかなと思い、ベッドの傍の棚を開けると昨日私が来ていた服が綺麗に畳まれていた。
片付けると言っても荷物はこの服しかなかったので、私は今着ている病衣から自分の服に着替える事にした。
着替え終わってから、私はベッドに腰掛けて昨日の出来事を思い出していた。
零さん、彼氏に間違われるくらい心配してくれたんだ。
しかも意識がなかったからとはいえ、お姫様抱っこで病院まで運んでくれた。
そしてずっと手を...私の手を零さんが...
「イケメンすぎる...」
嬉しくて嬉しくて自分の手を見つめてニヤニヤしていた私は、人が入ってきた事に気づかなかった。
「...なまえさん、なにしてるの?」
突然声をかけられて、パッと顔を手から上げるとそこには笑顔が引き攣ったコナンくんがいた。
「い、いつからそこに...」
「僕なんにも見てないよ」
「...」
絶対ニヤニヤしてたとこ見られた。
小学生に気を遣われる私って...いや中身は高校生なんだけども。
「それより大丈夫そうでよかった!今沖矢さんが退院の手続きしてくれてるから、終わったら一緒に帰ろう」
「え?沖矢さんが?」
「うん。車出してもらったんだ」
マンションから生活費まで何から何までFBIにお世話になっているのに、さらに迷惑まで掛けてしまった。
そんな気持ちが顔に出ていたのか、コナンくんが私の顔を覗き込んできた。
「なまえさん、昨日は僕たちを守ろうとしてくれてありがとう」
「いや、私なんて結局何もできなかったし...」
「ううん。あの時なまえさんが体を張って時間を稼いでくれたから、通りがかった安室さんに助けを求める事ができたんだ」
「そっか、皆が無事でよかった」
コナンくんに励まされていると、扉がノックされて沖矢さんが顔を出した。
「退院の手続きは終わりました。なまえさん、体は大丈夫ですか?」
「沖矢さん、ご迷惑をお掛けしてすみません。体はもう何ともないです」
「それなら良かった。ですが、あまり無茶をしてはいけませんよ」
沖矢さんはそう言って、一瞬だけモスグリーンの瞳を覗かせた。
あれ、もしかして赤井さん怒ってる?
やっぱり迷惑掛けたから?
手間かけさせんなよ的な感じ?
どうしよう、なんてお詫びしたらいいのだろうか。
アワアワと慌て出した私を見て、彼らは顔を見合わせてから何故かため息をついた。
「ダメだよ、沖矢さん。なまえさん全然伝わってないみたい」
「そうみたいですね...割とストレートに言ったつもりだったのですが。女性は難しい」
彼らの会話の意味が全く分からなくて、私は首を傾げるしかない。
「あのねなまえさん。沖矢さんは、心配したって言いたいんだよ」
沖矢さんの方を見れば、その通りだと言わんばかりに頷いていた。
そして私の方へ手を伸ばし、まるで子どもにするように頭を撫でられた。
「気になる女性が無茶をしたら、心配するのは当然でしょう」
ボンッと音がしそうな勢いで、私は真っ赤になったと思う。
湯気が出そうな頭で、私は小さく「ありがとうございます...」と言う事しかできなかった。
以前から手を繋いできたり、頭を撫でたり、沖矢さんはいちいち反則だと思う。
それにいちいちドキドキしてしまう、私も私だけれど。
「いいえ。では、帰りましょう」
沖矢さんにそう促されて、私たちは病室を後にした。