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「コナンくん、すごーい!」
「なんか、ずりーぞ!コナン」
コナンくんが華麗にシュートを決めて、子どもたちは三者三様の反応だ。
私はといえば小学生のサッカーに混ざる元気はないので、隅っこで応援係だ。
今日はクリスマスで、今は博士の家にケーキが届くのを待つ間サッカーをして時間を潰しているところだ。
本当だったら一人でクリスマスを過ごす事になっていただろうが、先週子どもたちが遊びに来てくれた時に一緒にと誘ってくれた。
元気に走り回る子どもたちを眺めていると、私のすぐ隣を何かが勢いよく走り抜けていった。
ちょうど哀ちゃんにパスが渡りシュートを決めようとしていた時で、あっと思った瞬間にはボールを蹴り損なった哀ちゃんが尻もちをついていた。
勢いよく飛び出していったもの、それは猫だった。
哀ちゃんは笑って、その猫を抱き上げているのでどうやら怪我はなかったようだ。
「その猫、大尉じゃねーか」
「お前その猫知ってんのか?」
「あぁ、毛利探偵事務所のある五丁目あたりを根城にしている野良猫だよ。喫茶店のポアロの梓さんになついてて、夕方になるといつも餌をねだりに来るんだ」
おぉ、これがあの大尉か。
確かオスの三毛猫ってすごい珍しいんだよね。
原作でしか知らないから、実物に会えてちょっとだけ感動だ。
初めは大人しくしていた大尉だったが、突然暴れ出し哀ちゃんの腕から抜け出して、そのまま道路の方へ走って行ってしまった。
大丈夫だろうか?車に引かれたりしなければいいが...
子どもたちも同じ事を心配したようで、大尉を追いかけようという事になった。
「どこだ?」
「見当たりませんねぇ...」
道路の方に出てきてみたが、見失ってしまった。
猫は素早いからなぁ、と思っていると歩美ちゃんが声を上げた。
「あ、いたよ!車のうしろ!!」
大尉は宅配業者の車の後ろにいて、なんとコンテナの中に入ってしまった。
すぐに皆でその車のもとに行くが、運転手が近くにいないようなので、すぐに出るつもりで子どもたちと一緒に中に入った。
しかし荷台の中は暗いし配達予定の荷物がたくさんあって、大尉は見当たらない。
「大ちゃーん、どこー?」
にゃー
歩美ちゃんが呼ぶと奥から鳴き声がして、荷物の影を覗くと大尉がいた。
よかった、大尉が見つかったなら早く降りたほうがいい。
「みんな、運転手さん戻ってくるかもしれないから早く」
降りよう、と続けようとしたところで外から男の人たちの声がして、扉を閉められてしまった。
光彦くんが、すみませーんと呼びかけるが聞こえていないようで声はどんどん遠ざかっていく。
しまった。閉じ込められてしまった。
そこで私はハッとした。これってもしかして、原作のあの回では...
だとしたら、今哀ちゃんのセーターが...
「んなとこで何やってんだ?パンツ一丁で」
遅かったか。
コナンくんが腕時計で照らす先には下着姿で膝を抱える哀ちゃんの姿。
「コナンくん、照らすのはやめてあげた方が...」
「そうよ!セーターがほつれて全部持ってかれちゃったのよ!だから、照らさないでくれる!?」
コナンくん、頭はいいのに乙女心が分からないというか、無神経というか...
私は自身のコートをぎゅっと握りしめた。
「哀ちゃん、ちょっと大きいかもしれないけど、これ使って?」
「いいの?ありがとう、なまえさん」
幸いな事に、今日のコートはショート丈だから多少は大きいけど小学生でも引きずる程じゃないだろう。
「これなら外に出られるわ!」
「次に車が止まったら、運転手さんに言って降ろしてもらいましょう」
よかった、若干大きいがワンピースだと思えば大丈夫だろう。
あれ、でもこの話って確かこのコンテナの中に死体があるんじゃ...?
「そういう訳にもいかないみたいだぜ?ほら」
コナンくんがそう言って、一つの大きな箱の中を照らしていた。
そこにはきっと、男性の遺体があるのだろう。
私は思い浮かべただけで、吐き気にも似た感覚がして思わず後ずさった。
クリスマス、ケーキ、大尉、宅配業者のクール便、そして遺体...
どうしてもっと早く気づかなかったのだろう。
せめてコンテナに入ってしまう前に気づいていれば、子どもたちを危険な目に合わさずに済んだのに。
こんなんじゃ原作を知っていても何の役にも立たない。
それどころか、原作通りなら全員無事に助かるところを、イレギュラーな私のせいで誰かがもしくは全員が犠牲になったら...
そう考えただけで、血の気が引いていくようだった。
零さんの事もそうだが、こういう事が起こるのを恐れて、知っている情報を隠したり記憶を失くしたフリをしたりしているのに、まさか子どもたちまで巻き込んでしまうなんて...
しかしこうなってしまったら、私に出来ることは一つしかない。
なるべく原作に忠実に進むようにする事だ。
哀ちゃんにコートは貸してしまったが、それくらいなら問題ないだろう、と思いたい。
もし原作が変わってしまって犯人たちが子どもたちまで手にかけようとしたら、私だけで子どもたちを守れるだろうか?
いや、守らなければならないのだ。私の命に代えても。
私がこの世界に来なければ、この子達と関わらなければ、助かる命なのだ。
それを私のせいで奪われるなんて事が許されていい訳がない。
私はそっと配達する荷物の影に座り、子どもたちを見守る事にした。
「なんか、ずりーぞ!コナン」
コナンくんが華麗にシュートを決めて、子どもたちは三者三様の反応だ。
私はといえば小学生のサッカーに混ざる元気はないので、隅っこで応援係だ。
今日はクリスマスで、今は博士の家にケーキが届くのを待つ間サッカーをして時間を潰しているところだ。
本当だったら一人でクリスマスを過ごす事になっていただろうが、先週子どもたちが遊びに来てくれた時に一緒にと誘ってくれた。
元気に走り回る子どもたちを眺めていると、私のすぐ隣を何かが勢いよく走り抜けていった。
ちょうど哀ちゃんにパスが渡りシュートを決めようとしていた時で、あっと思った瞬間にはボールを蹴り損なった哀ちゃんが尻もちをついていた。
勢いよく飛び出していったもの、それは猫だった。
哀ちゃんは笑って、その猫を抱き上げているのでどうやら怪我はなかったようだ。
「その猫、大尉じゃねーか」
「お前その猫知ってんのか?」
「あぁ、毛利探偵事務所のある五丁目あたりを根城にしている野良猫だよ。喫茶店のポアロの梓さんになついてて、夕方になるといつも餌をねだりに来るんだ」
おぉ、これがあの大尉か。
確かオスの三毛猫ってすごい珍しいんだよね。
原作でしか知らないから、実物に会えてちょっとだけ感動だ。
初めは大人しくしていた大尉だったが、突然暴れ出し哀ちゃんの腕から抜け出して、そのまま道路の方へ走って行ってしまった。
大丈夫だろうか?車に引かれたりしなければいいが...
子どもたちも同じ事を心配したようで、大尉を追いかけようという事になった。
「どこだ?」
「見当たりませんねぇ...」
道路の方に出てきてみたが、見失ってしまった。
猫は素早いからなぁ、と思っていると歩美ちゃんが声を上げた。
「あ、いたよ!車のうしろ!!」
大尉は宅配業者の車の後ろにいて、なんとコンテナの中に入ってしまった。
すぐに皆でその車のもとに行くが、運転手が近くにいないようなので、すぐに出るつもりで子どもたちと一緒に中に入った。
しかし荷台の中は暗いし配達予定の荷物がたくさんあって、大尉は見当たらない。
「大ちゃーん、どこー?」
にゃー
歩美ちゃんが呼ぶと奥から鳴き声がして、荷物の影を覗くと大尉がいた。
よかった、大尉が見つかったなら早く降りたほうがいい。
「みんな、運転手さん戻ってくるかもしれないから早く」
降りよう、と続けようとしたところで外から男の人たちの声がして、扉を閉められてしまった。
光彦くんが、すみませーんと呼びかけるが聞こえていないようで声はどんどん遠ざかっていく。
しまった。閉じ込められてしまった。
そこで私はハッとした。これってもしかして、原作のあの回では...
だとしたら、今哀ちゃんのセーターが...
「んなとこで何やってんだ?パンツ一丁で」
遅かったか。
コナンくんが腕時計で照らす先には下着姿で膝を抱える哀ちゃんの姿。
「コナンくん、照らすのはやめてあげた方が...」
「そうよ!セーターがほつれて全部持ってかれちゃったのよ!だから、照らさないでくれる!?」
コナンくん、頭はいいのに乙女心が分からないというか、無神経というか...
私は自身のコートをぎゅっと握りしめた。
「哀ちゃん、ちょっと大きいかもしれないけど、これ使って?」
「いいの?ありがとう、なまえさん」
幸いな事に、今日のコートはショート丈だから多少は大きいけど小学生でも引きずる程じゃないだろう。
「これなら外に出られるわ!」
「次に車が止まったら、運転手さんに言って降ろしてもらいましょう」
よかった、若干大きいがワンピースだと思えば大丈夫だろう。
あれ、でもこの話って確かこのコンテナの中に死体があるんじゃ...?
「そういう訳にもいかないみたいだぜ?ほら」
コナンくんがそう言って、一つの大きな箱の中を照らしていた。
そこにはきっと、男性の遺体があるのだろう。
私は思い浮かべただけで、吐き気にも似た感覚がして思わず後ずさった。
クリスマス、ケーキ、大尉、宅配業者のクール便、そして遺体...
どうしてもっと早く気づかなかったのだろう。
せめてコンテナに入ってしまう前に気づいていれば、子どもたちを危険な目に合わさずに済んだのに。
こんなんじゃ原作を知っていても何の役にも立たない。
それどころか、原作通りなら全員無事に助かるところを、イレギュラーな私のせいで誰かがもしくは全員が犠牲になったら...
そう考えただけで、血の気が引いていくようだった。
零さんの事もそうだが、こういう事が起こるのを恐れて、知っている情報を隠したり記憶を失くしたフリをしたりしているのに、まさか子どもたちまで巻き込んでしまうなんて...
しかしこうなってしまったら、私に出来ることは一つしかない。
なるべく原作に忠実に進むようにする事だ。
哀ちゃんにコートは貸してしまったが、それくらいなら問題ないだろう、と思いたい。
もし原作が変わってしまって犯人たちが子どもたちまで手にかけようとしたら、私だけで子どもたちを守れるだろうか?
いや、守らなければならないのだ。私の命に代えても。
私がこの世界に来なければ、この子達と関わらなければ、助かる命なのだ。
それを私のせいで奪われるなんて事が許されていい訳がない。
私はそっと配達する荷物の影に座り、子どもたちを見守る事にした。