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お、重い...
私の両手にはパンパンにジュースやお菓子が入ったレジ袋がぶら下がっている。
先日、赤井さんからマンションの用意が出来たと連絡があり、つい昨日引っ越したのだ。
セキュリティーは万全だし、家具家電まで全て用意していただき、引っ越しは私がホテルからマンションへ移動するだけでよかった。
本当に有難いことで、FBI様様、赤井様様だ。
さっそく明日、少年探偵団の子どもたちが遊びに来る事になり、先ほどジュースやらお菓子やらを買いに近所のスーパーに行ったのだ。
しかし、あれもこれもと選んでいるうちに気づいた時にはカゴいっぱいになっていて、今こんな有り様だ。
はぁ、お菓子も大量だがとにかくジュース類が重い。
でもきっと元太くんはいっぱい食べそうだし、もし足りなかったら可哀想だ。
よしっと気合を入れたその時、急に両手からレジ袋が消えた。
びっくりして振り返ると、そこには私のレジ袋を軽々と持つ沖矢さんがいた。
「お、沖矢さん!?」
「一人でこんなに食べるんですか?」
首を傾げてそう尋ねてくる彼に、私は苦笑いを返した。
「いえ、明日少年探偵団の子どもたちがマンションに遊びに来るんです」
「あぁ、なるほど!特に元太くんはたくさん食べますからね。この間は、前日の夕飯のカレーが少し残っていたのですが、彼が綺麗に平らげてくれました」
え?お菓子だけじゃ足りない感じ?
でも、私料理苦手だからなぁ。
まさか人様の子どもにカップ麺とかインスタント食品を食べさせる訳にもいかないし...
「フフ...これだけあれば、いくら彼でも足りると思いますよ?」
よほど困ったような顔をしていたのか、沖矢さんに笑われてしまった。
でも、まぁ足りそうならよかった。
「では、行きましょう」
「え?どこに行くんですか?」
「家に帰るんじゃないんですか?」
どうやら沖矢さんは荷物を私の家まで運んでくれるつもりらしい。
でも、こんなイケメンに荷物持ちなんてさせたらバチが当りそうだ。
「いやいや、私なら大丈夫です!お気になさらず」
お断りして荷物を受け取ろうと袋に手を伸ばすと、沖矢さんは両手に持っていた袋を左手にまとめて持ち直した。
どうしたのだろう、と思っていると、なんと沖矢さんは空いた右手で私の手を取った。
「な、な、何してるんですか!?」
「やはり大丈夫ではないようです」
沖矢さんに手を握られているこの状況が大丈夫ではない。
もうパニック寸前、鼻血が出そうだ。
「ほら、手がこんなに赤くなってしまっている」
「え、あ、手...?」
そう言われて見ると、確かに赤くなってはいるが、別に気にする程じゃない。
重い荷物を持ったら仕方ないことだ。
そう思って首を傾げていると、沖矢さんはそのまま私の手を握って歩き出した。
「え、ちょ、沖矢さん!?」
「僕と手を繋ぐのは嫌ですか?」
そう言って沖矢さんはしゅんとしたような顔をして、私の顔を覗き込んできた。
突如近づいた距離に、私は思わず後ずさろうとしたが手をしっかり握られている為それはできなかった。
嫌とかじゃない、ただなぜ沖矢さんが私と手を繋ぐのか分からなかった。
それになにより恥ずかしい。
「なまえさん?」
「...嫌じゃ、ないです」
イケメンに手を繋がれて、しかも縋るような顔までされたら嫌がるほうが無理だ。
そもそも、赤井さんなら絶対にこんな顔しない。
いや、してほしい気もするけど、今は沖矢さんだからってこんな顔をするのはずるい...
「それなら、よかった。さぁ帰りましょう」
もう好きにしてくれ。
実はFBIが用意してくれたマンションは、沖矢さんが住む工藤邸と毛利探偵事務所のちょうど中間地点にあるのだ。
だから、今後彼らに道でばったりなんて事もあるだろうなぁ、とは覚悟していた。
だがしかし、沖矢さんと手を繋ぐ事になるなんて...
沖矢さんもやっぱりイケメンだな。
もちろん私にとっての一番は零さんだが、イケメンは別腹なのだ。
しかし沖矢さんには悪いが、もしこれが零さんの手だったらもっと幸せだっただろうなと考えて思わず頬が緩んだ。
こんなイケメンと手を繋いでおいて、零さんの事ばかり考えている私はきっと重症だ。
「どうかしましたか?」
「えっ?」
「僕の手をじっと見ているようだったので。それになんだか、とても幸せそうな顔をしている」
「幸せそう...?」
「もしかしたら、記憶を失くす前のあなたには恋人がいたのかもしれないですね。繋いだ手をとても愛おしそうに見ていた。こちらが妬いてしまいそうな程に」
恋人ではないが、それ以外はほぼ図星で、私は恥ずかしさから顔から火が出そうな勢いだった。
だがこの時、私は知らなかった。
沖矢さんが少し離れた横道を見ていた事を。
そして零さんが私たち二人を見ていた事を。
−−−−−−
降谷side
本当にたまたまだった。
今日は朝からポアロのバイトに入っていて、ランチタイムの忙しさが落ち着いた頃梓さんにおつかいを頼まれた。
それは近くのスーパーで切らしてしまった牛乳を買って、ポアロへ戻る途中。
道を曲がった先に人影を認識した俺は、咄嗟に横道に入り身を隠した。
心臓がドクリとして、今自分が見た光景が信じられなかった。
あれは、なまえさんだった...?
一緒にいたのは、あの怪しい大学院生の沖矢昴だったか?
やはり、子どもたちが言っていた女性は本当になまえさんだったのか...
だが、なぜ二人が一緒にいて、しかも手を繋いでいるのか...
横道から二人の様子を窺うと、なまえさんは沖矢昴と繋がれた手を見て頬を緩めていた。
それはまるで、愛しいものを見るかのような表情だった。
本当に彼女は記憶がないのか...?
もしなまえさんがこの世界に戻ってきたら、一番に俺のもとに来てくれると思っていた。
彼女には、俺しかいないと高を括っていた。
しかし、現実は違った。
彼女は記憶を失くし、沖矢昴の隣で幸せそうに笑っている。
彼女が生きてさえいてくれたらいい、ついこの間そう自分に言い聞かせたはずなのに。
別な男の隣で笑う彼女を、今すぐに奪い去りたかった。
それからどうやってポアロに戻ったのか分からなかった。
気づいたらポアロにいて、梓さんに心配されていた。
しかし俺の頭にはさっきのなまえさんと沖矢昴の姿がこびりついて離れなかった...
私の両手にはパンパンにジュースやお菓子が入ったレジ袋がぶら下がっている。
先日、赤井さんからマンションの用意が出来たと連絡があり、つい昨日引っ越したのだ。
セキュリティーは万全だし、家具家電まで全て用意していただき、引っ越しは私がホテルからマンションへ移動するだけでよかった。
本当に有難いことで、FBI様様、赤井様様だ。
さっそく明日、少年探偵団の子どもたちが遊びに来る事になり、先ほどジュースやらお菓子やらを買いに近所のスーパーに行ったのだ。
しかし、あれもこれもと選んでいるうちに気づいた時にはカゴいっぱいになっていて、今こんな有り様だ。
はぁ、お菓子も大量だがとにかくジュース類が重い。
でもきっと元太くんはいっぱい食べそうだし、もし足りなかったら可哀想だ。
よしっと気合を入れたその時、急に両手からレジ袋が消えた。
びっくりして振り返ると、そこには私のレジ袋を軽々と持つ沖矢さんがいた。
「お、沖矢さん!?」
「一人でこんなに食べるんですか?」
首を傾げてそう尋ねてくる彼に、私は苦笑いを返した。
「いえ、明日少年探偵団の子どもたちがマンションに遊びに来るんです」
「あぁ、なるほど!特に元太くんはたくさん食べますからね。この間は、前日の夕飯のカレーが少し残っていたのですが、彼が綺麗に平らげてくれました」
え?お菓子だけじゃ足りない感じ?
でも、私料理苦手だからなぁ。
まさか人様の子どもにカップ麺とかインスタント食品を食べさせる訳にもいかないし...
「フフ...これだけあれば、いくら彼でも足りると思いますよ?」
よほど困ったような顔をしていたのか、沖矢さんに笑われてしまった。
でも、まぁ足りそうならよかった。
「では、行きましょう」
「え?どこに行くんですか?」
「家に帰るんじゃないんですか?」
どうやら沖矢さんは荷物を私の家まで運んでくれるつもりらしい。
でも、こんなイケメンに荷物持ちなんてさせたらバチが当りそうだ。
「いやいや、私なら大丈夫です!お気になさらず」
お断りして荷物を受け取ろうと袋に手を伸ばすと、沖矢さんは両手に持っていた袋を左手にまとめて持ち直した。
どうしたのだろう、と思っていると、なんと沖矢さんは空いた右手で私の手を取った。
「な、な、何してるんですか!?」
「やはり大丈夫ではないようです」
沖矢さんに手を握られているこの状況が大丈夫ではない。
もうパニック寸前、鼻血が出そうだ。
「ほら、手がこんなに赤くなってしまっている」
「え、あ、手...?」
そう言われて見ると、確かに赤くなってはいるが、別に気にする程じゃない。
重い荷物を持ったら仕方ないことだ。
そう思って首を傾げていると、沖矢さんはそのまま私の手を握って歩き出した。
「え、ちょ、沖矢さん!?」
「僕と手を繋ぐのは嫌ですか?」
そう言って沖矢さんはしゅんとしたような顔をして、私の顔を覗き込んできた。
突如近づいた距離に、私は思わず後ずさろうとしたが手をしっかり握られている為それはできなかった。
嫌とかじゃない、ただなぜ沖矢さんが私と手を繋ぐのか分からなかった。
それになにより恥ずかしい。
「なまえさん?」
「...嫌じゃ、ないです」
イケメンに手を繋がれて、しかも縋るような顔までされたら嫌がるほうが無理だ。
そもそも、赤井さんなら絶対にこんな顔しない。
いや、してほしい気もするけど、今は沖矢さんだからってこんな顔をするのはずるい...
「それなら、よかった。さぁ帰りましょう」
もう好きにしてくれ。
実はFBIが用意してくれたマンションは、沖矢さんが住む工藤邸と毛利探偵事務所のちょうど中間地点にあるのだ。
だから、今後彼らに道でばったりなんて事もあるだろうなぁ、とは覚悟していた。
だがしかし、沖矢さんと手を繋ぐ事になるなんて...
沖矢さんもやっぱりイケメンだな。
もちろん私にとっての一番は零さんだが、イケメンは別腹なのだ。
しかし沖矢さんには悪いが、もしこれが零さんの手だったらもっと幸せだっただろうなと考えて思わず頬が緩んだ。
こんなイケメンと手を繋いでおいて、零さんの事ばかり考えている私はきっと重症だ。
「どうかしましたか?」
「えっ?」
「僕の手をじっと見ているようだったので。それになんだか、とても幸せそうな顔をしている」
「幸せそう...?」
「もしかしたら、記憶を失くす前のあなたには恋人がいたのかもしれないですね。繋いだ手をとても愛おしそうに見ていた。こちらが妬いてしまいそうな程に」
恋人ではないが、それ以外はほぼ図星で、私は恥ずかしさから顔から火が出そうな勢いだった。
だがこの時、私は知らなかった。
沖矢さんが少し離れた横道を見ていた事を。
そして零さんが私たち二人を見ていた事を。
−−−−−−
降谷side
本当にたまたまだった。
今日は朝からポアロのバイトに入っていて、ランチタイムの忙しさが落ち着いた頃梓さんにおつかいを頼まれた。
それは近くのスーパーで切らしてしまった牛乳を買って、ポアロへ戻る途中。
道を曲がった先に人影を認識した俺は、咄嗟に横道に入り身を隠した。
心臓がドクリとして、今自分が見た光景が信じられなかった。
あれは、なまえさんだった...?
一緒にいたのは、あの怪しい大学院生の沖矢昴だったか?
やはり、子どもたちが言っていた女性は本当になまえさんだったのか...
だが、なぜ二人が一緒にいて、しかも手を繋いでいるのか...
横道から二人の様子を窺うと、なまえさんは沖矢昴と繋がれた手を見て頬を緩めていた。
それはまるで、愛しいものを見るかのような表情だった。
本当に彼女は記憶がないのか...?
もしなまえさんがこの世界に戻ってきたら、一番に俺のもとに来てくれると思っていた。
彼女には、俺しかいないと高を括っていた。
しかし、現実は違った。
彼女は記憶を失くし、沖矢昴の隣で幸せそうに笑っている。
彼女が生きてさえいてくれたらいい、ついこの間そう自分に言い聞かせたはずなのに。
別な男の隣で笑う彼女を、今すぐに奪い去りたかった。
それからどうやってポアロに戻ったのか分からなかった。
気づいたらポアロにいて、梓さんに心配されていた。
しかし俺の頭にはさっきのなまえさんと沖矢昴の姿がこびりついて離れなかった...