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「ゆ...め...?」
目が覚めると、そこは元の世界の私の部屋だった。
零さんに抱きしめられて寝たはずなのに、その彼の姿はどこにもない。
枕もとを見ると充電器に挿したままの携帯があり、慌てて開くと朝の6時だった。そして、その日付を見て私は目を見開いた。
なんと、日付は私がトリップする前のまま一日も進んでいなかったのだ。
季節が夏から秋に変わるほどの時間を向こうの世界で過ごしたというのに、こちらでは少しの時間も過ぎていなかった。
今まであった出来事は、全て夢だったのだろうか?
そう思い始めたところで、ふと零さんのにおいがした気がした。
もしかして零さんもここに?と思い部屋を見回すと、姿見に映る自分の姿が目に入った。
そこで私は自分の格好が零さんから借りたスウェットのままだと気づいた。
元の世界の私はこんな男物のスウェットは持っていなかったし、何よりこのスウェットからは零さんのにおいがする。
「零さん...」
私は自分の肩を抱くようにして、彼の名前を呟いた。
彼の部屋にトリップしたことも、彼が抱きしめてくれたことも、彼を愛したことも、全部全部夢じゃなかった。
夢じゃなくてよかったと思う反面、なぜこのタイミングで戻ってきてしまったんだと何処へぶつければいいのか分からない怒りが込み上げる。
なぜ今日だったのか?俺の前からいなくならないで、と言った零さんの前から私は消えるように姿を消してしまった。
きっと零さんを傷つけた。
いっそのこと私が消えた瞬間に、私の記憶ごと消えてくれていたらと思った。
その時携帯のアラームが鳴った。ハッとしてアラームを止めると時間は6時半になっていた。カレンダーを見ると今日は平日、どうやら仕事に行かなければならないようだ。
私は頭の中がごちゃごちゃのまま、仕事へ行くために支度を始めた。
「はぁ」
やっと何ヵ月ぶりかの仕事が終わり、ため息をついた。
周りの人間にとっては昨日今日の話でも、私にとってはその間に何ヵ月もの生活が別にあったのだ。
昨日頼んだあれだけど、なんて言われてもどのあれかすぐには思い出せない。
時々同僚に心配されながらも、なんとか今日一日をやり過ごした。
家に着いてから、食べるものが何もないことに気づいた。
気づいたというよりは、思い出した。
私は料理が苦手だったので、今まではほぼ毎日コンビニに寄って買って帰ってきていた。
しかし数か月零さんのアパートにいて、彼の美味しい手料理を食べていて、彼の部屋を出た後もビル探しに忙しくて夜は買いだめしたカップ麺を食べていた。
仕方ない、と一度脱いだジャケットをもう一度羽織り近所のコンビニへと出かけた。
歩いて5分のコンビニに着いて、自動ドアをくぐる。店員のやる気のない「いらっしゃいませ~」を聞きながら、弁当売り場を物色する。
今日はパスタでいっか、とたらこパスタを手に取る。そこで、そういえば零さんはいつも栄養バランスのいい食事をとるように、と言っていたなと思い出した。
結局私はどの世界にいようが、何をしていようが、零さんの事しか考えられないのだなと一人苦笑して、隣のサラダを手に取りレジに向かった。
コンビニを出てレジ袋片手に歩いていると、突然バケツをひっくり返したような土砂降りになった。
私は走って近くのすでにシャッターが下りた商店街の店先に避難した。
走っても帰れる距離ではあったが、私は一向に止む気配のない雨をぼぅっと眺めていた。
私が突然消えて彼はどう思っただろうか?
このタイミングで私を元の世界に戻すなんて、神様はなんて意地悪なのだろう。
私はきっともう会えることのない彼を想って、雨が降り続く空を見続けた。
そして私は、二度と伝えることはないだろう彼への想いをそっとこの雨に託した。
「零さん、雨音が響いていますね...」
そんな私の呟きは、この土砂降りの中にかき消えていった。
−−−−−−−−−−−−−−−
※雨音が響いていますね
意味:あなたを愛していました
目が覚めると、そこは元の世界の私の部屋だった。
零さんに抱きしめられて寝たはずなのに、その彼の姿はどこにもない。
枕もとを見ると充電器に挿したままの携帯があり、慌てて開くと朝の6時だった。そして、その日付を見て私は目を見開いた。
なんと、日付は私がトリップする前のまま一日も進んでいなかったのだ。
季節が夏から秋に変わるほどの時間を向こうの世界で過ごしたというのに、こちらでは少しの時間も過ぎていなかった。
今まであった出来事は、全て夢だったのだろうか?
そう思い始めたところで、ふと零さんのにおいがした気がした。
もしかして零さんもここに?と思い部屋を見回すと、姿見に映る自分の姿が目に入った。
そこで私は自分の格好が零さんから借りたスウェットのままだと気づいた。
元の世界の私はこんな男物のスウェットは持っていなかったし、何よりこのスウェットからは零さんのにおいがする。
「零さん...」
私は自分の肩を抱くようにして、彼の名前を呟いた。
彼の部屋にトリップしたことも、彼が抱きしめてくれたことも、彼を愛したことも、全部全部夢じゃなかった。
夢じゃなくてよかったと思う反面、なぜこのタイミングで戻ってきてしまったんだと何処へぶつければいいのか分からない怒りが込み上げる。
なぜ今日だったのか?俺の前からいなくならないで、と言った零さんの前から私は消えるように姿を消してしまった。
きっと零さんを傷つけた。
いっそのこと私が消えた瞬間に、私の記憶ごと消えてくれていたらと思った。
その時携帯のアラームが鳴った。ハッとしてアラームを止めると時間は6時半になっていた。カレンダーを見ると今日は平日、どうやら仕事に行かなければならないようだ。
私は頭の中がごちゃごちゃのまま、仕事へ行くために支度を始めた。
「はぁ」
やっと何ヵ月ぶりかの仕事が終わり、ため息をついた。
周りの人間にとっては昨日今日の話でも、私にとってはその間に何ヵ月もの生活が別にあったのだ。
昨日頼んだあれだけど、なんて言われてもどのあれかすぐには思い出せない。
時々同僚に心配されながらも、なんとか今日一日をやり過ごした。
家に着いてから、食べるものが何もないことに気づいた。
気づいたというよりは、思い出した。
私は料理が苦手だったので、今まではほぼ毎日コンビニに寄って買って帰ってきていた。
しかし数か月零さんのアパートにいて、彼の美味しい手料理を食べていて、彼の部屋を出た後もビル探しに忙しくて夜は買いだめしたカップ麺を食べていた。
仕方ない、と一度脱いだジャケットをもう一度羽織り近所のコンビニへと出かけた。
歩いて5分のコンビニに着いて、自動ドアをくぐる。店員のやる気のない「いらっしゃいませ~」を聞きながら、弁当売り場を物色する。
今日はパスタでいっか、とたらこパスタを手に取る。そこで、そういえば零さんはいつも栄養バランスのいい食事をとるように、と言っていたなと思い出した。
結局私はどの世界にいようが、何をしていようが、零さんの事しか考えられないのだなと一人苦笑して、隣のサラダを手に取りレジに向かった。
コンビニを出てレジ袋片手に歩いていると、突然バケツをひっくり返したような土砂降りになった。
私は走って近くのすでにシャッターが下りた商店街の店先に避難した。
走っても帰れる距離ではあったが、私は一向に止む気配のない雨をぼぅっと眺めていた。
私が突然消えて彼はどう思っただろうか?
このタイミングで私を元の世界に戻すなんて、神様はなんて意地悪なのだろう。
私はきっともう会えることのない彼を想って、雨が降り続く空を見続けた。
そして私は、二度と伝えることはないだろう彼への想いをそっとこの雨に託した。
「零さん、雨音が響いていますね...」
そんな私の呟きは、この土砂降りの中にかき消えていった。
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※雨音が響いていますね
意味:あなたを愛していました