15 降谷side
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
彼女を突き放したあの日から、彼女はすぐにアルバイトを始めた。
毎日、今日覚えた花の名前や世話の仕方など色々なことを俺に話してくれた。
まるであの日の出来事などなかったかのように。
しかし彼女と一緒に夕食を食べていたある夜、ついにその時がやってきた。
「降谷さん、私明日のバイトが終わったら、出ていこうと思います。今まで本当にお世話になりました」
彼女は、そう言って切ないような顔をした。
あの日から、彼女は俺を下の名前で呼ぶのをやめた。
自分で突き放しておいて寂しいと思うなんて、俺はどれだけ自分勝手なのだろう。
一人暮らしをするという彼女に、俺は心配になり思いつくままに色々と言っていたら、途中で彼女が吹き出してお母さんみたいだと言われてしまった。
だが、言葉とは裏腹に彼女は泣きそうな顔をしていて、そんな彼女に本当の気持ちを言ってしまいそうになった。
そして二人並んで食器を片付ける。俺が洗って、なまえさんが拭く、このやり取りが割と気に入っていた。
それももう最後だ。
彼女が俺の顔を盗み見ていることに気づくが、得意の仮面を被り気づかなかったふりをした。
次の日、本庁の仕事が終わりそのまま組織の方へ行った。家に着いた時には、もう日付が変わった頃だった。
玄関を開けると部屋は真っ暗で、そのままリビングに進んでいくとダイニングテーブルの上に青紫の花が生けられた花瓶と手紙、それからネックレスがあった。
寝室を覗いても、いつも気持ちよさそうに寝ていた彼女はいない。
手紙を手に取ると封筒の表面に0と書かれていて、裏返すとなまえより、とあった。
封筒を開けて便箋を取り出し、俺は部屋に入る月明かりでそれを読んだ。
『あなたは、この花の名前を知っていますか?
この花は、アヤメと言って花言葉は「希望」や「よい便り」などがあるそうです。
だから、この花をあなたに送ります。
あなたが命を懸けて守りたい大切なものがあるように、わたしにとっての大切なものはあなたです。
どうか最後まで希望を捨てないで、どんな時も自分の命を諦めないで下さい。
最後に、トリップしたのが、あなたの部屋でよかったと心の底から思っています。
今までありがとう。さようなら。 シオン』
手紙を読み終わり、顔を上げるとアヤメの花が俺を見ているようだった。
アヤメ...花言葉...希望...
俺にとっての希望は彼女だった。
いくつもの顔を使い分けて、自分が誰なのか分からなくなっても、彼女が笑いかけてくれるだけで俺は俺でいられた。
俺を守りたいと言う何の力も持たない彼女が、ただ愛おしかった。
外を見ると、満月が俺をあざ笑うように輝いていた。
彼女は満月の夜にこの部屋に現れて、満月の夜に俺の側からいなくなった。
俺は夜空を見上げながら、この国のどこかで生きていく彼女への思いを月に馳せる。
「なまえさん、月が綺麗ですね...」
願わくば、彼女までこの思いが届きますように。
毎日、今日覚えた花の名前や世話の仕方など色々なことを俺に話してくれた。
まるであの日の出来事などなかったかのように。
しかし彼女と一緒に夕食を食べていたある夜、ついにその時がやってきた。
「降谷さん、私明日のバイトが終わったら、出ていこうと思います。今まで本当にお世話になりました」
彼女は、そう言って切ないような顔をした。
あの日から、彼女は俺を下の名前で呼ぶのをやめた。
自分で突き放しておいて寂しいと思うなんて、俺はどれだけ自分勝手なのだろう。
一人暮らしをするという彼女に、俺は心配になり思いつくままに色々と言っていたら、途中で彼女が吹き出してお母さんみたいだと言われてしまった。
だが、言葉とは裏腹に彼女は泣きそうな顔をしていて、そんな彼女に本当の気持ちを言ってしまいそうになった。
そして二人並んで食器を片付ける。俺が洗って、なまえさんが拭く、このやり取りが割と気に入っていた。
それももう最後だ。
彼女が俺の顔を盗み見ていることに気づくが、得意の仮面を被り気づかなかったふりをした。
次の日、本庁の仕事が終わりそのまま組織の方へ行った。家に着いた時には、もう日付が変わった頃だった。
玄関を開けると部屋は真っ暗で、そのままリビングに進んでいくとダイニングテーブルの上に青紫の花が生けられた花瓶と手紙、それからネックレスがあった。
寝室を覗いても、いつも気持ちよさそうに寝ていた彼女はいない。
手紙を手に取ると封筒の表面に0と書かれていて、裏返すとなまえより、とあった。
封筒を開けて便箋を取り出し、俺は部屋に入る月明かりでそれを読んだ。
『あなたは、この花の名前を知っていますか?
この花は、アヤメと言って花言葉は「希望」や「よい便り」などがあるそうです。
だから、この花をあなたに送ります。
あなたが命を懸けて守りたい大切なものがあるように、わたしにとっての大切なものはあなたです。
どうか最後まで希望を捨てないで、どんな時も自分の命を諦めないで下さい。
最後に、トリップしたのが、あなたの部屋でよかったと心の底から思っています。
今までありがとう。さようなら。 シオン』
手紙を読み終わり、顔を上げるとアヤメの花が俺を見ているようだった。
アヤメ...花言葉...希望...
俺にとっての希望は彼女だった。
いくつもの顔を使い分けて、自分が誰なのか分からなくなっても、彼女が笑いかけてくれるだけで俺は俺でいられた。
俺を守りたいと言う何の力も持たない彼女が、ただ愛おしかった。
外を見ると、満月が俺をあざ笑うように輝いていた。
彼女は満月の夜にこの部屋に現れて、満月の夜に俺の側からいなくなった。
俺は夜空を見上げながら、この国のどこかで生きていく彼女への思いを月に馳せる。
「なまえさん、月が綺麗ですね...」
願わくば、彼女までこの思いが届きますように。