12 降谷side
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
なまえさんの様子がおかしい。
スコッチが家に来て酒を飲んだあの夜の後から、彼女はこれでもかというほど挙動不審だった。
声を掛ければ跳び上がり、指先が少しでも触れようものなら火傷でもしたかのように手を引っ込められた。
最初はスコッチが何か余計なことを言ったのかと思ったが、すぐに一つの可能性に気づいた。
それに気づいたと同時に、俺はこれから彼女との関係をどうするべきか考えていた。
彼女が挙動不審になってから一週間経った今日、本庁の仕事を早めに切り上げて愛車を家の方向へ走らせていた。
今日は彼女に渡したいものがあった。
だが、これを渡したら彼女はどうするのだろうか...
もしこのまま、これを渡さなければ彼女とずっと一緒に...
迷いが断ち切れないまま、駐車場についてしまった。
部屋に着いて、鍵を開けて中へ入る。
するとなまえさんが駆け寄ってきて「おかえりなさい、零さん」と最近の挙動不審はどうしたのか、以前の彼女の態度に戻っていた。
彼女の変化に少々戸惑いながらもスーツを脱いで、楽な恰好に着替えてからリビングに戻った。
そしてダイニングに腰かけて、コーヒーを淹れてくれている彼女の後姿を眺めていた。
なまえさんがにこやかにコーヒーを俺の前に置いてくれた後、彼女は自分の分のコーヒーを片手に俺の向かい側の椅子に座った。
コーヒーを一口すする。以前より格段に上手くなっている。
なまえさんの話に軽く答えながら、俺は本題に入ろうともう一度コーヒーをすすってから「そんなことより、なまえさん」と切り出した。
彼女はこちらをみて、首を傾げている。
本当はもっと前から疑うのを止めたときにこうするべきだったのだが、俺は彼女を自由にする勇気がなかった。
でも、もうそろそろ覚悟を決めなければいけない。
「なまえさん、あの夜起きてましたよね」
そう問いかけると、彼女は勢いよくコーヒーを噴いてむせた。
あぁ、やはり俺の予想は正しかった。
彼女はあの時、いつから起きていたのかは分からないが、実は起きていて何らかの理由で寝たふりをしていた。
そんなところに、俺にキスをされた。付き合ってもいない男にキスされて、どうすればいいか分からなくなった、とまぁこんな所だろう。
「ゴホッゴホッ、お、起きてた訳ないじゃないですか」
「ホゥ、ではなまえさんはあの時、本当に眠っていたと」
「そうです。私は、もうぐっすりと眠っていました」
「おや、では僕の思い違い、ですね。あの夜、すごく月が綺麗だったので、あなたも見ていたんじゃないかと思ったんですが...」
「あ、え?月?月の話だったんですか?私はてっきりキスの事かと思って...あっ」
「ほら、やっぱり起きていたんじゃないか」
「あの、聞かなかったことには...」
「できませんね」
やっぱり彼女は嘘がつけない人だ。
だからこそ、彼女には明るい光の下で生きてほしい。
いつか守りきれずに俺の手から零れ落ちる前に、暗闇に落ちる前に、光の下に帰そう。
俺はポケットに入れていたものを出して、彼女の前に置いた。
「なまえさん、あなたの身分証です」
ただ大切にしたいだけなのに。
結局あなたを傷つける事しかできない俺をどうか許してほしい...
俺は彼女の首輪を外し、手を離す事に決めた。
スコッチが家に来て酒を飲んだあの夜の後から、彼女はこれでもかというほど挙動不審だった。
声を掛ければ跳び上がり、指先が少しでも触れようものなら火傷でもしたかのように手を引っ込められた。
最初はスコッチが何か余計なことを言ったのかと思ったが、すぐに一つの可能性に気づいた。
それに気づいたと同時に、俺はこれから彼女との関係をどうするべきか考えていた。
彼女が挙動不審になってから一週間経った今日、本庁の仕事を早めに切り上げて愛車を家の方向へ走らせていた。
今日は彼女に渡したいものがあった。
だが、これを渡したら彼女はどうするのだろうか...
もしこのまま、これを渡さなければ彼女とずっと一緒に...
迷いが断ち切れないまま、駐車場についてしまった。
部屋に着いて、鍵を開けて中へ入る。
するとなまえさんが駆け寄ってきて「おかえりなさい、零さん」と最近の挙動不審はどうしたのか、以前の彼女の態度に戻っていた。
彼女の変化に少々戸惑いながらもスーツを脱いで、楽な恰好に着替えてからリビングに戻った。
そしてダイニングに腰かけて、コーヒーを淹れてくれている彼女の後姿を眺めていた。
なまえさんがにこやかにコーヒーを俺の前に置いてくれた後、彼女は自分の分のコーヒーを片手に俺の向かい側の椅子に座った。
コーヒーを一口すする。以前より格段に上手くなっている。
なまえさんの話に軽く答えながら、俺は本題に入ろうともう一度コーヒーをすすってから「そんなことより、なまえさん」と切り出した。
彼女はこちらをみて、首を傾げている。
本当はもっと前から疑うのを止めたときにこうするべきだったのだが、俺は彼女を自由にする勇気がなかった。
でも、もうそろそろ覚悟を決めなければいけない。
「なまえさん、あの夜起きてましたよね」
そう問いかけると、彼女は勢いよくコーヒーを噴いてむせた。
あぁ、やはり俺の予想は正しかった。
彼女はあの時、いつから起きていたのかは分からないが、実は起きていて何らかの理由で寝たふりをしていた。
そんなところに、俺にキスをされた。付き合ってもいない男にキスされて、どうすればいいか分からなくなった、とまぁこんな所だろう。
「ゴホッゴホッ、お、起きてた訳ないじゃないですか」
「ホゥ、ではなまえさんはあの時、本当に眠っていたと」
「そうです。私は、もうぐっすりと眠っていました」
「おや、では僕の思い違い、ですね。あの夜、すごく月が綺麗だったので、あなたも見ていたんじゃないかと思ったんですが...」
「あ、え?月?月の話だったんですか?私はてっきりキスの事かと思って...あっ」
「ほら、やっぱり起きていたんじゃないか」
「あの、聞かなかったことには...」
「できませんね」
やっぱり彼女は嘘がつけない人だ。
だからこそ、彼女には明るい光の下で生きてほしい。
いつか守りきれずに俺の手から零れ落ちる前に、暗闇に落ちる前に、光の下に帰そう。
俺はポケットに入れていたものを出して、彼女の前に置いた。
「なまえさん、あなたの身分証です」
ただ大切にしたいだけなのに。
結局あなたを傷つける事しかできない俺をどうか許してほしい...
俺は彼女の首輪を外し、手を離す事に決めた。