8 降谷side
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なまえさんをドライブに誘ったのは、ほんの気まぐれだった。
ベランダから空を見上げるなまえさんの後ろ姿が、寂しげで...そのままふっと飛んで行ってしまいそう気がして、考えるより先に「なまえさん」と声をかけていた。
大喜びで用意して戻ってきたなまえさんは、俺が選んだワンピースと薄くだが化粧をしていた。
先ほどの寂しげな後ろ姿を思い出し、俺は彼女の存在を確かめるかのように戸惑うなまえさんの手を強引に掴んだ。
そして愛車を走らせること2時間、左手には海が広がっている。
少し広くなっているところに車を停め、浜辺へ降りようと誘うと、なまえさんは、子供のようにサンダルを脱ぎ捨てながら波打ち際まで走って行ってしまった。
「安室さーん!!はーやーくー」
そう呼びかけながら、こちらに向かって大きく手を振っている。
笑顔で手を振る彼女には、やはり明るい太陽の下が似合う。
「安室さんもどうですか?とっても気持ちいいですよ!」
「なまえさんが、楽しそうにしている姿を見ているだけで、僕も楽しいので大丈夫です」
「うっ、そうやって甘い言葉を言えば、私から情報を聞き出せると思っているんでしょう」
「おや、残念。バレてしまいましたか」
さっきまであんなにはしゃいでいた彼女は、どこに行けばいいのか分からない迷子のように、波打ち際に立ち竦んでいる。
そろそろ上がるよう声をかけると、「海に来たの久しぶりだったから、つい夢中になっちゃいました」と、彼女は微笑むがその今にも壊れそうな微笑みに無性に胸が締め付けられた。
足についた砂を気にする彼女に近づき、自分の方へ勢いよく引き寄せ、そのまま抱き上げた。
少し戻った先に自販機があったことを思い出し、彼女を流木にそっと下ろしてから、少し待っているように言って彼女の側を離れた。
自販機で足を洗うための水を買って戻ると、近くまで来たところで、彼女が勢いよく振り返った。
彼女は俺があげたネックレスをぎゅっと握りしめて、今にも泣きだしそうな顔をしていた。
彼女はきっと今まで、明るい日向で生きてきた人間なのだろう。
そして、これからも、そうであってほしいと思う。
「なんて顔をしてるんですか...」
「安室さんが、もう戻ってこない気がして」
「...そんな訳ないでしょう?あなたを野放しにしたら、情報を漏らされるかもしれないのに」
そうしてなまえさんは苦しそうな、でもどこか申し訳なさそうな顔をする。
「安室さん、私はあなたを守りたい。例え、あなたがこの国の為にどれだけ嘘を吐こうが、幾つの仮面を被ろうが、私だけは本当のあなたを知っている。私には何の力もないけど、それでも最後まであなたの味方で在りたいんです」
もう限界だった...
彼女を疑い続けるのも、傷つけることも、もう出来ないと思った。
俺はこの国を、日本を愛している。例えこの手が黒く染まろうとも、命に代えてもこの国を守る。
だが、彼女、なまえさんの事も守りたいと思った。
疑うべき怪しい人間、だけど初めて目にしたあの夜、月に照らされた彼女はとても綺麗で...あの瞬間にはもう俺は彼女に心を奪われていたのかもしれない。
口の動きだけで彼女が俺の本当の名前を呼ぶ。
この波の音だけが響く二人だけの世界で、俺は安室透でもバーボンでも、そして公安の降谷でもない、ただの男として大粒の涙を流す彼女を愛しいと思った。
ベランダから空を見上げるなまえさんの後ろ姿が、寂しげで...そのままふっと飛んで行ってしまいそう気がして、考えるより先に「なまえさん」と声をかけていた。
大喜びで用意して戻ってきたなまえさんは、俺が選んだワンピースと薄くだが化粧をしていた。
先ほどの寂しげな後ろ姿を思い出し、俺は彼女の存在を確かめるかのように戸惑うなまえさんの手を強引に掴んだ。
そして愛車を走らせること2時間、左手には海が広がっている。
少し広くなっているところに車を停め、浜辺へ降りようと誘うと、なまえさんは、子供のようにサンダルを脱ぎ捨てながら波打ち際まで走って行ってしまった。
「安室さーん!!はーやーくー」
そう呼びかけながら、こちらに向かって大きく手を振っている。
笑顔で手を振る彼女には、やはり明るい太陽の下が似合う。
「安室さんもどうですか?とっても気持ちいいですよ!」
「なまえさんが、楽しそうにしている姿を見ているだけで、僕も楽しいので大丈夫です」
「うっ、そうやって甘い言葉を言えば、私から情報を聞き出せると思っているんでしょう」
「おや、残念。バレてしまいましたか」
さっきまであんなにはしゃいでいた彼女は、どこに行けばいいのか分からない迷子のように、波打ち際に立ち竦んでいる。
そろそろ上がるよう声をかけると、「海に来たの久しぶりだったから、つい夢中になっちゃいました」と、彼女は微笑むがその今にも壊れそうな微笑みに無性に胸が締め付けられた。
足についた砂を気にする彼女に近づき、自分の方へ勢いよく引き寄せ、そのまま抱き上げた。
少し戻った先に自販機があったことを思い出し、彼女を流木にそっと下ろしてから、少し待っているように言って彼女の側を離れた。
自販機で足を洗うための水を買って戻ると、近くまで来たところで、彼女が勢いよく振り返った。
彼女は俺があげたネックレスをぎゅっと握りしめて、今にも泣きだしそうな顔をしていた。
彼女はきっと今まで、明るい日向で生きてきた人間なのだろう。
そして、これからも、そうであってほしいと思う。
「なんて顔をしてるんですか...」
「安室さんが、もう戻ってこない気がして」
「...そんな訳ないでしょう?あなたを野放しにしたら、情報を漏らされるかもしれないのに」
そうしてなまえさんは苦しそうな、でもどこか申し訳なさそうな顔をする。
「安室さん、私はあなたを守りたい。例え、あなたがこの国の為にどれだけ嘘を吐こうが、幾つの仮面を被ろうが、私だけは本当のあなたを知っている。私には何の力もないけど、それでも最後まであなたの味方で在りたいんです」
もう限界だった...
彼女を疑い続けるのも、傷つけることも、もう出来ないと思った。
俺はこの国を、日本を愛している。例えこの手が黒く染まろうとも、命に代えてもこの国を守る。
だが、彼女、なまえさんの事も守りたいと思った。
疑うべき怪しい人間、だけど初めて目にしたあの夜、月に照らされた彼女はとても綺麗で...あの瞬間にはもう俺は彼女に心を奪われていたのかもしれない。
口の動きだけで彼女が俺の本当の名前を呼ぶ。
この波の音だけが響く二人だけの世界で、俺は安室透でもバーボンでも、そして公安の降谷でもない、ただの男として大粒の涙を流す彼女を愛しいと思った。