正義にふれた日

ほんの僅かだが、私にも思い出せないことがある。遠い過去の記憶だ。
私の記憶は何年も止まっていた。生きていくための知識以外、私にとってどうでもいい記憶ばかりだった。もちろん親の顔も。
残飯を漁って食べていた時もあったが、その味も覚えていない。
記憶が動き出したのは、ワタリが話しかけに来た時。差し出された手を握ったあの時から。

確かにあの時、目に見えないはずの「正義」に触れた。
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