これはなにかのしわざ
そして、朝5時。レスターが来た。彼はニアが起きていると確認すると声をかける。
「ニア、事件の進捗はどうだ」
「おはようございます。例の事件ですが、報告書を読む限り犯人はCです。恐らくCをより洗えば物証も出てくるでしょう」
挨拶ついでに事件の進捗というより、結論の報告。
「了解。……ところで、今日は誕生日だな。おめでとう」
「ありがとうございます」
「プレゼントを用意している。後で渡そう」
「へえ、今年は2つなんですね」
「? 何がだ?」
「ブリキの玩具のやつです。あれは被りでしたが保管用で取っておきます」
「ブリキの玩具? プレゼントはまだ渡してないぞ」
レスターは、まだプレゼントを渡していない?
「……それは、本当ですか」
「ああ。そのデスクに置いてある玩具がそうだと言うのなら、私が既に購入したはず。購入済の物はリスト化して、新しく買う時に被らないか確認しているから被りは贈っていないと思うが……」
「昨晩の担当は、確かレスターだけですよね?」
「私だけだ。これから他の者もじきに来るだろう」
「深夜0時ごろ、モニター室に来ましたか?」
「来ていない。日付が変わってからは今が初めてだ。0時ごろなら向こうの部屋でデータ整理を」
誰なのだ。
昨晩はレスター以外いなかった。
それならあのプレゼントはレスターが用意したことになる。
しかし、彼はまだ渡していないどころかモニター室へも来ていない。プレゼントをまだ渡してもいない様子。
プレゼントを渡してすらいないとわざわざ嘘をついて2つも贈ることがあるだろうか?急速に浮上してきた疑問。
「……私としたことが、寝惚けているかもしれません。今から三時間ほど睡眠をとるので忘れてください」
レスターは珍しく寝惚けた、と言い出すニアに提案した。
「起きるまでは誰も入らないようにしておくか?」
「そうですね……そうしていただけると助かります」
「せっかくの誕生日に、体調を崩すのもな」
「……お気遣いありがとうございます。後でプレゼントの中身、確認します」
「緊急の連絡があればコールする。ゆっくり休むと良い」
「ええ。レスター、よろしくお願いします」
「それでは失礼する」
モニター室を出ていく彼を見送った後、ニアは休息をとるためにモニター含む全ての明かりを消して椅子に座ったまま眠った。