これはなにかのしわざ

ここに来るまでのセキュリティに関して、厳重と言うには言葉が足りないほどには厳重であり、さまざまな認証システムを掻い潜れる人間は極めて少数。

 今日本部にいる人間はレスターのみ。そして日にちは8月24日、ニアの誕生日。彼は別室で他の作業をしているはず。渡そうとしたタイミングがちょうど仮眠時間と重なり、仕方なくこっそり置いた光景がニアの中で浮かぶ。

 モニター室のドアを開ける時でさえも慎重だったのか、ドアの音は全く聞こえなかった。気を遣いすぎだと思いながらもリボンを解いて、蓋を開ける。

 そこには、既に持っているブリキの玩具が入っていた。レスターには気に入った玩具を定期的に買いに行かせており、このブリキの玩具もキラ事件解決の後で買いに行ってもらった内の1つだった。いわば、被りである。

 玩具を取り出すと、底にメッセージカードが一枚。

 -Happy birthday, Near. I hope you like this gift.-

 これが購入済であることを単純に忘れているのだろう。レスターにもこういう時はあるのかもしれない。今まで玩具の選定ミスが起こらなかったのはたまたまであり、仕方のないことだ。好きな玩具だったので、保管しておく分にはいい。

 ニアはとりあえず、彼が来たら礼を言うことにして、調査報告書を手に取る。
 夜明けまでデスクにはあの玩具を座らせた。
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