ショコラケーキをひとくち

 モニタの前で座っていたLに、年上なのに何で僕たちに丁寧な言葉で話すのか聞いてみたんだ。そしたら、「ワタリの真似をしていたらそれが癖になっただけです」だって。
 へーえ、Lはお爺ちゃん子なんだ、と顔を覗き込みながら言ってみた。

 「もちろん、彼がいてこその私ですから」
 とワイミーさんが作った洋菓子を一口食べた。ほとんど無表情からちょっと微笑んだかな、くらいの反応。からかったつもりだったんだけど。

 洋菓子を作るのも上手で、たまにLに作ってあげてるみたい。今日は丁度その日。手作りにしてはそれなりに美味しそうなショコラケーキだったから僕は無意識に目で追っていた。それを見ていたLに「一口あげます」とケーキを放り込まれた。
 
 「この甘さを私は手放せません。強みにも、弱みにもなりうるほど」

 それが今食べているケーキのことなのか、はたまた別のことなのかは聞かないでおいた。ちなみに二口目はもらえなかった。「えー、嫌ですよ」とあっと言う間に全部平らげやがった、Lのやつ。
1/1ページ
スキ