achieve one's aim
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
今日は晴れやかなこの梅雨時に珍しい洗濯日和だ。こんな時は緑の広場でのんびり日向ぼっこしていたい。
……ま、今バイト中なんだけどね。
老若男女入り乱れる血気盛んなこのバザールで美味しい美味しい果実を客に売り付けるという、至ってシンプルなバイトです。
ただしシンプルとはいっても見渡せば周りはライバル店でいっぱいだからね。
いかにうちの果実を上手く客に売り付けるかが結構大変なんだよ。
「(ま、一般的にはね)」
今日の私は何か働かない気分。のんーびりいろんな人を見て楽しみたい気分なの。
さっきからすでに店主のおばさんに4回ほどしばかれましたがね。
挫けない私はひたすらぼーっと人々を見つめた。
ホントいろんな格好の人がいるなぁ。
あの全身緑スーツのオッサン何者だろ。あの首から下げてんのは時計かな、方位磁石かな。もっとイイ物かな。
「(激しくどうでもいいわー)」
そんなのへんとした空気を纏った私の前に、ふいにお客さんが現れた。
深みのある紅の異国のヴェールを頭まで深く被ったそのお客さん。ヴェールにはアラベスクな模様がたくさんあってなんかエキゾチック…。
お客さんが来たからにはちゃんと仕事をしなくては。
ピンと背筋を伸ばしてニッコリ笑顔。それからお決まりの売り文句を口にする。
「いらっしゃいませ!
うちの果物はどれも自家製のとれたて新鮮果実!みずみずしくってとろける美味しさですよー!」
「桃を一つ貰おうか」
「はーい喜んでー!」
喜んでー!…飲み屋かうちは。
桃はこのテストの中からじゃちょっと届かない所にある。
小さな紙袋を持って、桃を取るためにテントの中からお客さんの方へと出た瞬間私は何故か視界が目まぐるしく動いた。
そして気付いた時にはお客さんが私の下に。服越しでも伝わる温かい手が私の腰へ。
あ、抱き上げ、られた?
そんな高い高い状態の私の下にいるお客さんのヴェールが、スルリと 滑り落ちて。
「ダーク、さん…!!」
美しい銀色と深い紅がそこにあった。
「よ。久しぶり」
「あ…あ……」
その姿を見た途端一緒に過ごした時間が、走馬灯みたいに駆け抜けた。
ダークさんの旅は、とても長かったの。長く続いた声さえ聞けない狂おしい日々。
でも今ココに貴方はいてくれて。
旅は終わったのかな。もうずっと一緒にいられるのかな。
相変わらず言葉の出ない私にダークさんはニッと笑った。
「迎えに来たぜMyハニー」
「へ?」
迎え?
意味が分かってない私をダークさんはとりあえずそのまま抱き締めた。ので抱き締められました。
はわ、はわわココバザールのど真ん中あぁ!
「あんれま。お熱いねぇ最近の若者は」
「ワシらだって20年前は」
「寂しい思いさせたなぁ…っ!!」
「あわわ分かった、分かりましたからダークさん!」
だからお願い降ろしてー!
「…で、旅は終わったんですか?」
「微妙」
「微妙ですかー」
バザールの仕事を終えダークさんと私は緑の広場へ来ていた。長い年月を越えてもココはあの頃のまま。
すっかり茜色に染まった空の下でベンチに二人で座り、久しぶりの会話。
同じく久しぶりに見るダークさんは前逢った時よりもさらにいくらか大人びてて…なんて格好良いのだろうか!
変わらない優しい顔が私を見る。
「お前、これからの予定とかあるのか?」
「これからの予定?」
どういうコトかな?
家に帰ってからのって意味なら、ごはん作ったり趣味に没頭してみたりダークさんに甘えてみたり…きゃっ!(あ、なんか虚しい)
「ま、マイワールド没頭ッスかね??」
何なんだそれは。
会話はイマイチ噛み合ってないかもしれないけどそれでも一緒にいられるのが堪らなく嬉しいの。
嬉しくて嬉しくて興奮冷めやらぬ私はダークさんに手を差し出された。
「…?」
ので、なんだかよく分からないけどとりあえず取ってみた。
するとぎゅっと握られた私の手。
「取ったな?」
「…は?」
アレなんか、ヤバイ雰囲気。
「よーし攫っちゃうぜー」
「えぇぇええ!?」
そのまま手を引かれて担ぎ上げられた。色気のない言い方だけどいわゆる俵担ぎ。
ちょ、ちょっとちょっとー!
言いたいコトも訊きたいコトもたくさんあるんだけども。そういやはじめダークさん“迎えに来た”って言ってた…。
これってまさかのそういうコトなのかな…?
でも私旅の準備なんにもしてないよ。ルピーさえ持ってないし。
そう思ってダークさんに声を掛けようと口を開きかけた時、ダークさんは一際優しい、愛しむような声で言った。
「大事にするからな」
――そんな風に言われたら、文句なんて言えないじゃない?
いろいろあったけど頑張って良かった。そのおかげで私達今こうしてる。
学んだ教訓…とりあえずポジティブな行動はまず起こしてみるもんなんだね。たくさん空回ったように見えて実はその一つ一つが貴方に繋がっていた。
夕刻。
鮮やかな橙に染まる誰もいない緑の広場。大好きなダークさんの肩の上で、夕日から遠ざかるのを私は見ていた。
ちょうど視界の真ん中に街のシンボルであるあの銅像が見える。逆光のそれはまるで私達を見送ってくれてるようで。
「(行って来ます!)」
私は銅像を真っ直ぐ見つめてひっそりとガッツポーズをしたのだった。
fin*
……ま、今バイト中なんだけどね。
老若男女入り乱れる血気盛んなこのバザールで美味しい美味しい果実を客に売り付けるという、至ってシンプルなバイトです。
ただしシンプルとはいっても見渡せば周りはライバル店でいっぱいだからね。
いかにうちの果実を上手く客に売り付けるかが結構大変なんだよ。
「(ま、一般的にはね)」
今日の私は何か働かない気分。のんーびりいろんな人を見て楽しみたい気分なの。
さっきからすでに店主のおばさんに4回ほどしばかれましたがね。
挫けない私はひたすらぼーっと人々を見つめた。
ホントいろんな格好の人がいるなぁ。
あの全身緑スーツのオッサン何者だろ。あの首から下げてんのは時計かな、方位磁石かな。もっとイイ物かな。
「(激しくどうでもいいわー)」
そんなのへんとした空気を纏った私の前に、ふいにお客さんが現れた。
深みのある紅の異国のヴェールを頭まで深く被ったそのお客さん。ヴェールにはアラベスクな模様がたくさんあってなんかエキゾチック…。
お客さんが来たからにはちゃんと仕事をしなくては。
ピンと背筋を伸ばしてニッコリ笑顔。それからお決まりの売り文句を口にする。
「いらっしゃいませ!
うちの果物はどれも自家製のとれたて新鮮果実!みずみずしくってとろける美味しさですよー!」
「桃を一つ貰おうか」
「はーい喜んでー!」
喜んでー!…飲み屋かうちは。
桃はこのテストの中からじゃちょっと届かない所にある。
小さな紙袋を持って、桃を取るためにテントの中からお客さんの方へと出た瞬間私は何故か視界が目まぐるしく動いた。
そして気付いた時にはお客さんが私の下に。服越しでも伝わる温かい手が私の腰へ。
あ、抱き上げ、られた?
そんな高い高い状態の私の下にいるお客さんのヴェールが、スルリと 滑り落ちて。
「ダーク、さん…!!」
美しい銀色と深い紅がそこにあった。
「よ。久しぶり」
「あ…あ……」
その姿を見た途端一緒に過ごした時間が、走馬灯みたいに駆け抜けた。
ダークさんの旅は、とても長かったの。長く続いた声さえ聞けない狂おしい日々。
でも今ココに貴方はいてくれて。
旅は終わったのかな。もうずっと一緒にいられるのかな。
相変わらず言葉の出ない私にダークさんはニッと笑った。
「迎えに来たぜMyハニー」
「へ?」
迎え?
意味が分かってない私をダークさんはとりあえずそのまま抱き締めた。ので抱き締められました。
はわ、はわわココバザールのど真ん中あぁ!
「あんれま。お熱いねぇ最近の若者は」
「ワシらだって20年前は」
「寂しい思いさせたなぁ…っ!!」
「あわわ分かった、分かりましたからダークさん!」
だからお願い降ろしてー!
「…で、旅は終わったんですか?」
「微妙」
「微妙ですかー」
バザールの仕事を終えダークさんと私は緑の広場へ来ていた。長い年月を越えてもココはあの頃のまま。
すっかり茜色に染まった空の下でベンチに二人で座り、久しぶりの会話。
同じく久しぶりに見るダークさんは前逢った時よりもさらにいくらか大人びてて…なんて格好良いのだろうか!
変わらない優しい顔が私を見る。
「お前、これからの予定とかあるのか?」
「これからの予定?」
どういうコトかな?
家に帰ってからのって意味なら、ごはん作ったり趣味に没頭してみたりダークさんに甘えてみたり…きゃっ!(あ、なんか虚しい)
「ま、マイワールド没頭ッスかね??」
何なんだそれは。
会話はイマイチ噛み合ってないかもしれないけどそれでも一緒にいられるのが堪らなく嬉しいの。
嬉しくて嬉しくて興奮冷めやらぬ私はダークさんに手を差し出された。
「…?」
ので、なんだかよく分からないけどとりあえず取ってみた。
するとぎゅっと握られた私の手。
「取ったな?」
「…は?」
アレなんか、ヤバイ雰囲気。
「よーし攫っちゃうぜー」
「えぇぇええ!?」
そのまま手を引かれて担ぎ上げられた。色気のない言い方だけどいわゆる俵担ぎ。
ちょ、ちょっとちょっとー!
言いたいコトも訊きたいコトもたくさんあるんだけども。そういやはじめダークさん“迎えに来た”って言ってた…。
これってまさかのそういうコトなのかな…?
でも私旅の準備なんにもしてないよ。ルピーさえ持ってないし。
そう思ってダークさんに声を掛けようと口を開きかけた時、ダークさんは一際優しい、愛しむような声で言った。
「大事にするからな」
――そんな風に言われたら、文句なんて言えないじゃない?
いろいろあったけど頑張って良かった。そのおかげで私達今こうしてる。
学んだ教訓…とりあえずポジティブな行動はまず起こしてみるもんなんだね。たくさん空回ったように見えて実はその一つ一つが貴方に繋がっていた。
夕刻。
鮮やかな橙に染まる誰もいない緑の広場。大好きなダークさんの肩の上で、夕日から遠ざかるのを私は見ていた。
ちょうど視界の真ん中に街のシンボルであるあの銅像が見える。逆光のそれはまるで私達を見送ってくれてるようで。
「(行って来ます!)」
私は銅像を真っ直ぐ見つめてひっそりとガッツポーズをしたのだった。
fin*