アンモビウム
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西通りから南通りに入り込むと雰囲気が一変。細い路地には洒落た家、怪しい雰囲気の占い屋(らしい)、その先は大通りになり、張られたテントの下で行われる売買で活気に満ち満ちていた。果物、花、パン………温泉水売り場って何?
「良い品入ってるよー!!」
「こっちの林檎の方が甘くて水々しいよー!」
「こっちの客横取するんじゃないよ、うちの林檎の方が艶々して美味しそうさ!」
「お疲れ様です、巡回ですか?」
道行く人の邪魔にならないように避け、この小さな中年兵が花屋の側で警備中の兵と話をしている間にただ私はこの光景を眺めていた。そうだここは城下町だ、沢山の人が最も行き交う場所。そうしていると、小さな中年兵が休憩の提案を持ち込んだ。
「ここの階段を降りると酒場がある。一旦休憩するか?」
「あ、じゃあ─ !」
そうします、と言おうとした刹那、女性の叫び声がすぐ側から聞こえてきた。それに続いて溢れかえるパニックの空気は、門から入ってきた魔物が原因だった。狼のような姿の魔物が一匹。武器を持っていない町人達は別の通りや中央広場へと逃げて行ったが門の側に店を構えている人達は逃げるタイミングを失い、縮こまっていた。警備兵がすぐに対応するかと思いきや、ただ槍を構えているだけで動かず、密かに怯えているのが伝わってきた。
(…こんなんじゃ頼りにならない!)
店と通り道を隔てている木製の棒を両手で取り、槍の要領で身構えた。じりじりと緊張の糸が、自分の全神経を張り詰めた。グルルと喉を鳴らし威嚇してくる目をじっと見つめ、様子を窺う。
「きゃぁぁぁ!!」
叫び声に目を逸らすと、怪鳥が女性の店に上空から降りてきていた。ガァガァと威嚇して開いている口に、手に持っている棒を突き入れその直後に上から振り下ろし地面へと叩き付けた。と同時に先程の狼のような姿をした魔物が、私の左足へと喰らい付く。痛みによろけそうになるが右足で踏ん張り、頭を横に捻って喰らい付く魔物に真上から力一杯棒を突き入れた。弱々しく犬のような声をあげながらあっさりと牙を離した隙に棒で殴り跳ばすとその体はいとも容易く跳び、起きあがるとさっさと門の外へと逃げて行った。
それからやっと複数の警備兵が駆けつけ、バタバタと門の外へと向かうのを見ると、地面に尻を着いた。
「はぁっ………。」
「お、お前大丈夫か!?」
「大丈夫に見えますかね、コレ。」
ひょこひょこと駆け寄ってきた中年兵に左足を見せる。
「うをぁぁぁ!!!馬鹿っ、見せるな!!」
「えぇぇ…」
大丈夫って聞いてきたのあなたでしょうが!?自分の目を覆う姿拍子抜けしつつ立とうとする。
「え………あれ? えっ、ちょっと!」
が、何度試みても左足だけが崩れるように倒れてしまい、体を支えられない。みっともなく何度も尻を着いている私の体を、誰かが抱き上げた。
「案ずるな、場所を移動するだけだ。」
体を預けるには心地良くない鎧を身に纏った腕の持ち主は、私とさほど年齢の変わらない女性だった。
(その表情は、そこいらの兵士よりもずっと凛々しかった)
13.10.19
「良い品入ってるよー!!」
「こっちの林檎の方が甘くて水々しいよー!」
「こっちの客横取するんじゃないよ、うちの林檎の方が艶々して美味しそうさ!」
「お疲れ様です、巡回ですか?」
道行く人の邪魔にならないように避け、この小さな中年兵が花屋の側で警備中の兵と話をしている間にただ私はこの光景を眺めていた。そうだここは城下町だ、沢山の人が最も行き交う場所。そうしていると、小さな中年兵が休憩の提案を持ち込んだ。
「ここの階段を降りると酒場がある。一旦休憩するか?」
「あ、じゃあ─ !」
そうします、と言おうとした刹那、女性の叫び声がすぐ側から聞こえてきた。それに続いて溢れかえるパニックの空気は、門から入ってきた魔物が原因だった。狼のような姿の魔物が一匹。武器を持っていない町人達は別の通りや中央広場へと逃げて行ったが門の側に店を構えている人達は逃げるタイミングを失い、縮こまっていた。警備兵がすぐに対応するかと思いきや、ただ槍を構えているだけで動かず、密かに怯えているのが伝わってきた。
(…こんなんじゃ頼りにならない!)
店と通り道を隔てている木製の棒を両手で取り、槍の要領で身構えた。じりじりと緊張の糸が、自分の全神経を張り詰めた。グルルと喉を鳴らし威嚇してくる目をじっと見つめ、様子を窺う。
「きゃぁぁぁ!!」
叫び声に目を逸らすと、怪鳥が女性の店に上空から降りてきていた。ガァガァと威嚇して開いている口に、手に持っている棒を突き入れその直後に上から振り下ろし地面へと叩き付けた。と同時に先程の狼のような姿をした魔物が、私の左足へと喰らい付く。痛みによろけそうになるが右足で踏ん張り、頭を横に捻って喰らい付く魔物に真上から力一杯棒を突き入れた。弱々しく犬のような声をあげながらあっさりと牙を離した隙に棒で殴り跳ばすとその体はいとも容易く跳び、起きあがるとさっさと門の外へと逃げて行った。
それからやっと複数の警備兵が駆けつけ、バタバタと門の外へと向かうのを見ると、地面に尻を着いた。
「はぁっ………。」
「お、お前大丈夫か!?」
「大丈夫に見えますかね、コレ。」
ひょこひょこと駆け寄ってきた中年兵に左足を見せる。
「うをぁぁぁ!!!馬鹿っ、見せるな!!」
「えぇぇ…」
大丈夫って聞いてきたのあなたでしょうが!?自分の目を覆う姿拍子抜けしつつ立とうとする。
「え………あれ? えっ、ちょっと!」
が、何度試みても左足だけが崩れるように倒れてしまい、体を支えられない。みっともなく何度も尻を着いている私の体を、誰かが抱き上げた。
「案ずるな、場所を移動するだけだ。」
体を預けるには心地良くない鎧を身に纏った腕の持ち主は、私とさほど年齢の変わらない女性だった。
(その表情は、そこいらの兵士よりもずっと凛々しかった)
13.10.19