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「***っ、***!!」
ごめんねリンク。私、また死んじゃったんだね。
動かない私の体を揺するリンクを見て、自分は死んでしまったのだと気付く。これが初めてじゃないことを思い出す。
最初は、自分が死んだことに気付かないうちにリンクが時間を巻き戻すから、これが何度目だかわからなくなってしまったよ。
死ぬ度に沢山のことを知った。人の体は思っていた以上に脆いということ。死ぬ直前まで意識がある死に方もあれば、死ぬことすら気付かない死に方もあるということ。ハイラルでは何だかんだで生きてこれたからすっかり忘れてしまっていたけれど、命はいとも簡単に落としてしまうものだということ。今更知ったところで何の役にも立たないけれどね。
だけどいくら死んでも変わらないことは、私が死ぬ度にリンクはとても辛そうな表情をする。
オカリナを取り出して、また時間を巻き戻そうとするリンクにチャットが言い放つ。
「ちょっと!!…辛いのもわからなくもないけど……今巻き戻したところでこの子はどうせまた死ぬのよ!アンタだってもう充分にわかってる筈でしょ!」
私じゃなくてリンクに言っている筈なのに、私の心が締め付けられた気がした。もう心臓も動いてないのに。
リンクは俯いたままで、床に付いた手は力一杯握り締められていた。悔しい時にいつもする行動。爪が食い込むから、っていつもは私がやめさせてたのに。もうそれも叶わないね。
「…わかってるさ。でも、だからって***が生き残る未来をそう簡単に諦められるかよ!諦めてまでオレにどうしろって言うんだよ!!」
こんな風に怒鳴るリンクを見るのは初めてだった。それでもチャットはめげることなく、体を光らせて彼女なりにリンクを励ました。
「…ギリギリまで…この時間のギリギリまで、出来ることをやるしか無いわよ。この子はいつだってそうだったでしょ!?やり直す度に記憶が飛んでいても“何をするんだっけ?”って、“頑張ろうね”っていつもアンタに言ってたじゃない!この子がここまで頑張ってきたそれを、アンタが踏みにじっていいワケ!?」
それを聞いて、リンクの視線はまた私の顔へと戻された。震える手で撫でてくれた私の頬へ、涙が零れていた。
こんなにリンクが苦しむなら、もう戦わせたくないのに。だけどそれじゃあ世界は許してくれなくて。私がリンクの隣にいることすら、許してくれなくて。
「また守ってあげられなくて、ごめん。」
ぐしゃぐしゃになった顔を拭ってリンクは立ち上がった。私の屍は置いて行く。せめて本当の最期が訪れた時には、私達の故郷に連れて行ってほしいな。
“謝るのは私の方だよ。”
声にならない謝罪は、彼に届くことはない。やり直しても、私は自分の死を忘れて、また貴方を悲しませることになるの。
何度目かの朝を迎えて隣に立ったリンクは、どうしてか泣きそうな顔で私を抱き締めた。
勇敢な彼が怖くなってしまう程の何かがあったのだろうか、私が側で支えてあげなくちゃ。そう思ってリンクの頬を両手で包み込んで、私は口を開いた。
「大丈夫だよ。」
言った後、何故かその言葉が酷く空っぽなものに感じられて泣きそうなくらい悲しくなった。ダメだなぁ、リンクはまだまだ子供なんだから私がしっかりしないと。
「さて、次はどこへ向かうんだっけ?一緒に頑張ろうね!」
どうか君のゆく先に
(せめてものを幸があらんことを)(そう願って、もう何度繰り返しただろう)
***
“ゆく先に”がリンクから***さんに対する“逝く先”なのか、***さんからリンクに対する“行く先”なのかはご想像にお任せします。
16.02.26
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