ZELDA
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かっこいいリンクさんはいない
乱闘を終えて部屋に戻ろうとすると、大量のワドルディに持ち上げられながら移動するデデデとすれ違った。希望するファイターが連れて来ていい付き人は1人という制限を守っていないのはあの我儘大王だけだ、と一人苦笑した。
「お疲れ様です、リンクさん。」
デデデの後ろをゼルダが歩いて、その付き人である***が挨拶した。そう、俺と同じハイリア人、同じ世界の女の子。
「次はゼルダの番か。」
「ええ。最近は賭けをしてまで観戦してくださる方もいるそうですから、期待に応えられるように務めねばなりませんね。」
「ゼルダ様ならきっと大丈夫です!それに、あまり気を遣わなくてもよろしいかと………せめてこちらの世界では、人のことよりもゼルダ様自身が楽しむことの方が大切だと私は思います…あまり無理をなさらないでください…。」
「そうでしょうか?」
「ああ、こっちでは見世物の為の乱闘だろ。勝とうが負けようが、ファイター自身が楽しんでないと観る方も楽しくないだろ、きっと。」
「そうですね…こちらにはこちらの文化がありますし、私も楽しませていただくことにしましょうか。ありがとうございます、二人共。***、サポートお願いしますね。」
「はいっ!私は準備万端です。任せてください!」
ふふ、と笑顔になる***。別れる際、僅かに花の香りがしてああ今日もゼルダの部屋に生ける花を替えたのだろうか……と考えずにはいられなかった。
彼女はごく普通の花屋の娘で、ハイラル城で働いていた訳でも無かった。それが突然、こっちの世界で生活する際の付き人にゼルダが指名したと聞く。城で働く女性も多くいただろうに何故彼女を?と尋ねたことがある。確か、城の者ではハイラルにいる時と同じ空気になるのを避けたいだとか……そこでいつも城に飾る花を注文する花屋の娘が目に留まっただとかそんな理由だった気がする。***自身も何故自分がと驚いていたようだったが、ゼルダに仕えることに大層喜んでいた。俺は旅の間に花屋に寄ることなんて無かったから、***のことを知ったのはゼルダが付き人として連れて来てからのことだった。
部屋に戻ると勢いよく寝床に転がり、うつ伏せのまま声を荒げた。
「あ~~~羨ましい!!」
ゼルダが、羨ましい。***と話す時は必ずと言っていいほど、彼女はゼルダのことをよく話す。ゼルダに尽くす為にも、他のファイターのことも是非把握しておきたいと熱心に名簿や書籍を読み漁り、人当たりも良い彼女は他のファイターともよく接する方なのだが、やはり中でもゼルダのことを最も慕っていた。***から話しかけてくれたと思ったら、“ゼルダ様のお茶の時間に、そろそろ新しい種類の茶葉を用意したいと思ってるのですが……何か良い物をご存じないですか?”だとか、幸せそうにしてるから何か良いことでもあったのかとこっちから話しかければ“この前ゼルダ様のお部屋のお花を活け替えたら、良い香りの花ですね、癒されますと褒めてくださって……私とっても嬉しいんです!”といった感じで本当にゼルダの話ばかり、と言うか寧ろゼルダに関係ない話を彼女の口から聞いたことが無いんじゃないか。最初は普通に良い子だなと思っていた程度だったけど、あんまり楽しそうにゼルダのことを話すもんだからあんなに想われるゼルダが羨ましくなった。
つまりは***を好きになってしまった訳で。ゼルダじゃなくて俺に尽くしてくれたら、俺の隣で笑って過ごしてくれたら…なんて考えてしまう。今までに何度か気持ちを伝えようとしたが、大抵彼女はゼルダと一緒にいるし一人の時でさえゼルダの為にばたばたと忙しく動いているから、邪魔をするのも申し訳なくてことごとくタイミングを逃してしまっている。っていうかどんだけゼルダのこと好きなんだよ!!本当に羨ましいなぁオイ!!
今まで勇者として様々な敵と戦い抜いてきたが、まさかここに来てこんな強敵に直面する日がくるとは思わなかった。俺は女性が好意を持つ相手として、女性に敵わないのか……。
そう考えている間に時間が経っていることに気付いた。そろそろ***も暇が出来る頃だろう。なるべく機会を確保しないと、きっといつまでも気持ちを伝えられない。ふぅと一息吐いて広場へと向かった。
「ブラピさんとお話する機会ってなかなか無かったので、こうしてお話出来てとても嬉しいです。」
「あ~、そうかよ。」
「最優先はゼルダ様になってしまいますけれど、ブラピさんは新規参戦でまだわからないことも多いでしょう?もしわからないことや困ったことがあったら、気軽におっしゃってくださいね。私頑張りますから!」
「お前暇人なんだな…。」
「むっ、そんなこと無いですよ~!」
俺は何でレギュラー枠なんだろ、新規参戦者だったら良かった。本気で思った。だって***とあの黒い天使が広場のベンチで隣り合って座ってるんだぞ。俺にはそんな機会無かったぞチクショー。
「ピットさんだったらきっと素直に“ありがとー!”って言ってくださるのに、ブラピさんは意地悪なんですね。」
「俺はピットじゃない、あんな金魚のフンと一緒にするな。」
「そういえば戦い方もちょっと違いますね………ブラピさんは狙撃の方が得意なようですし。」
「わかるのか。」
「うーん、何となくですけど……ピットさんは元々いろんな武器を扱っていたからオールマイティなタイプなのかもしれないですね~。」
「……よく知ってんな。」
「ふふ、ゼルダ様のお役に立てればと思って、他のファイターさんのことも一応勉強してるので!リプレイを見たら、自分の癖とかわかるようになるかもしれないですよ。」
***はよく、ゼルダが他のファイターと上手く戦えるように、撮影された乱闘を確認していたり、それぞれの世界でファイターがどんな活躍をしていたか資料を確認していた。どんなファイターにも敬意を持って接するし、そういうところがみんなに好かれる理由の一つだった。ブラックピットだって、***を適当にあしらっているように見えるがすぐにその場を離れようとしないあたり、そこそこ好意はあるようだ。俺はもっと好きだけどな。
しかしこの雰囲気だと、多分あの二人は自然と昼食を一緒にするだろう。それは困る。俺は午後には乱闘の予定が入っているし、ちょうどその後にゼルダも乱闘に入る予定だ。そうするとまた***と話すタイミングが失われてしまう。
「***!」
『あ、リンクさん!お疲れ様です。」
「もしかして昼飯ってこれからか?良かったら、一緒に食べに行こうぜ」
手を振りながら声をかけると、***はぺこりと会釈した。出来るだけ自然な雰囲気で、食事に誘うと彼女は嬉しそうに了承した。
『まあ!良いですね。ブラピさんも一緒なのは新鮮です!ぜひ行きましょう!!」
……“二人で”って言えば良かった。そりゃそうだよな、それが自然な流れだよな。そうなる可能性を想定していなかった俺の思考回路が一番不自然だったわ。"ゼルダ様も誘ってきますね!"と言ってゼルダを呼びに行く後ろ姿を見届けながら引きつった表情を固まらせている俺を横目に、ブラックピットの奴が鼻で笑った。クソ、愛のキューピットとして少しは温かく見守るくらいしてくれよ。
食事は***の希望に沿って、ネスの故郷オネットにあるレストランで食事することにした。他のステージは乱闘の時以外に行っても楽しめるものなんてほとんど無いが、元々平和なこの世界は日常生活のワンシーンにも馴染む。
「何だか不思議なメンバーですね。リンクさんが誘ってくださったおかげで、ブラピさんとお食事する機会が出来て良かったです。」
花が咲くようにニコニコと嬉しそうに話す***。そんな彼女をゼルダも優しく微笑んで見守っていた。ああ、きっとこういうところをゼルダも気に入り、側に置いているのだろう。
でも、俺だって彼女のことが好きなんだ。
「実は……ゼルダに頼みがあって、」
テーブルの下で拳を握り、絞り出すように言葉を口にする。
「***を……お、俺の付き人に譲ってくれないか!?」
「…………。」
「……え?」
静かに俺の言葉を聞いているゼルダとは対照的に、***が素っ頓狂な声を上げて固まり、フォークに巻かれていたパスタは皿へとずり落ちた。ブラピが代弁するかのように、疑問を投げかけてきた。
「アンタ、確か前回からずっと参戦していて今まで付き人もいなかったレギュラーだろう?何で今更付き人が必要なんだよ?」
「そ、そうです……それです!それにリンクさんは、一人の生活にも慣れていると伺っておりました。私なんて必要ないのでは……?」
「私にも理解できません。何故***を?」
“ハイリア人の付き人が必要になったのであれば、私の方で手配しましょうか?”というゼルダの提案に首を振る。
「いや、他の人ではダメなんだ……。」
「それは何故ですか。」
真っ直ぐに見据える瞳に一瞬気が引ける。これが一国の王女の気迫か。やはり正当な理由もなく、“良いでしょう”とは言わない。彼女にとって***はこの世界における付き人であると同時に、ハイラル王国の守るべき民でもあるのだ。それは俺にとっても同じだ。しかし、大勢のうちの一人という意味ではない。
生半可なごまかしでは絶対に納得してもらえないだろう。ここは正直に戦うしかないと思い、負けじと見つめ返した。
「正直に言う。俺は…………***が好きだ!」
「……!」
「いつもいつもゼルダのことを想って、一所懸命に働く***が素敵だと思う。でも……俺は…………知り合いとして……ハイラルの勇者としてじゃなくて……今のゼルダにするみたいに***と話したいし、一緒に過ごしたい。だから……」
「……やはり、そういうことなのですね。どうしたいか、私は***の意思を尊重します。」
「ぜ、ゼルダ様……?そんな、私……………」
「私に気を遣う必要はありません。元々***に務めていただいたのは命令ではなく、私自身の我儘です。貴女の素直な気持ちで、選んで良いのですよ。」
“私は貴女に側にいてほしいと思ってはいるのですが……貴女の自由を縛るつもりはありませんから。”と、優しく言うゼルダ。
***は悩んでいるようだ。少し俯いて考えている。本来なら***に伝えるべき気持ちを、俺が順番を飛ばしてこんな人前で話したのだ。今更になって申し訳ない気持ちが溢れた。が、***が沈黙を破るのは俺が予想していたよりもずっと早かった。
「リンクさん。私のことをそんな風に思ってくださって、ありがとうございます。お気持ち、嬉しいです。……でも、ごめんなさい。私…………」
視線を逸らして、赤らめた頰を隠すように両手を添える***。え、何その表情初めて見た。すっげぇ可愛い。……まあ、こんな人前だから断られても仕方ないよな。***の新しい表情を見られただけで満足してしまいそうだった俺の思考に、コッコが鳴き声を響かせるかの如く衝撃な事実を知る。
「ほ、他に好きな方がいて…………なので、リンクさんの気持ちには答えられません……っ!」
一所懸命に言葉を紡ぐ彼女は可愛らしかったけど、新事実に驚きを隠せず“え、え、”と情けなく狼狽える。
「まあ。そのような方がいらしたのですか?今まで気がつきませんでした。」
今まで俺達の会話を見守るだけだったゼルダもこれには驚いたようで、口を開いた。ブラピなんて鼻で笑って“残念だったな、バッタ勇者”とかほざいてる。うるせぇ何でお前はここにいるんだ。……***が誘ったからか。ならしょうがないな。……じゃなくて!***に意識を戻して思わず率直に疑問をぶつける。俺だって今まで彼女のことを見つめてきたのに、ゼルダの他にそんな相手がいるとは思わなかった!
「それってハイリア人?俺の知ってる人?」
「ファイターの方なんですけど……夜空みたいにとっても綺麗な青い目をしてて…」
相手のことを思い出して頰を緩めながら、もじもじとする彼女に焦りを覚える。誰だ、彼女にこんな表情をさせる奴は!?
青い目…?ゼルダをこんなに慕ってるくらいだから同じ王族のマルス?いやアイクか?それともピット…?まさかマリオなんてこと無いよな!?
「じ、つは俺でした〜……とかそういう流れの告白じゃなく?」
「カービィ…です……。」
「「「カービィ」」」
キキーッ!!という大きな音を出して、店の外を車が過ぎて行った。と同時に、あまりにも予想外な相手に驚き、その場にいた3人が固まった。
カービィってあの、まんまるピンクの……え?
「か、か、か、カービィ!?人間じゃないのに!?」
「愛に種族や姿形は関係ないじゃないですかっ!」
やっと言葉を出すと***はぶぅと頰を膨らませて言う。は?可愛いなオイ。じゃなくて。誰を好きになるのも個人の自由だけど!!せめて人間の姿に近いピットとかだったらまだわかるけど、まさかのカービィ。あの、食べることが何よりも大事で、他は何も考えていなさそうなカービィ?
「た、確かに良いヤツだけど、一体どこに惚れたんだ……」
「それは……とても幸せそうに食事するところや、表情がころころ変わる所とか…抱っこすると擦り寄ってくるところとか…」
「じゃあ、俺も同じことすれば可能性……」
「え、するつもりなんですか……?」
しまった、カービィを否定するようなこと言って***を傷付けないように話を聞いてたら本音が出てしまった。ちょっと引いてる。泣きそう。おいそんな目で俺を見るなブラピ。ゼルダとか目を合わせないように下向いてるよ。何だよこの状況……作ったの俺だった。もう居たたまれなくて逃げ出したい気持ちになった。
「とにかく私、他に好きな方もいることですし、これからもゼルダ様の付き人として尽くしたいのです。だからリンクさんの気持ちには答えられません。……ごめんなさい。」
ドンッッッ!!という大きな音が自分の脳内で起こったものなのか、はたまた窓の外から聞こえた音なのかわからないくらいに動揺した。
ああ、せめて隣でミドナが馬鹿にするように笑ってくれた方がまだマシだと思う空気がその場を包んでいて。俺はテーブルに突っ伏した顔を、しばらく上げることが出来なかった。
ライバル、それはピンクの
(まんまるで大食いの、星の戦士だった。)
***
アンケート投票作品
2位:11票 リンク→ゼルダの付き人夢主→カービィ(スマブラforリンク)でした。
スマブラfor WiiUどころかとっくにスペシャルが発売しているこの時期に投稿という、恐るべき時代遅れ感。本当に時間が経つのは早いですね。そりゃ時オカリンクも眠っちゃいますよ。(????)
基本的に、プレイしたことのない作品のキャラクターなどは扱わない方針にしています。作品やキャラクターに対する礼儀な気がするので。でもゼルダシリーズ以外のキャラクターが出ないとスマブラではないので、カービィとパルテナシリーズから。
とか言っておきながら、MOTHERはプレイしたことがないんですけど、ステージの世界でも何かしらの生活や遊びに利用できる空間になっていたら面白いな、と思い比較的日常生活感がありそうなオネットを食事の舞台にしちゃいました。夢主がカービィを好きだと告白した時の衝撃に合わせた“キキーーーーッッッッ!!”って車の音が流れるシーンを書きたかっただけと言っても過言ではないです。
でも個人的に、私もカービィが好きです。スマブラ64の頃はリンクかカービィしか使ってませんでした。へへ。
アンケートのご協力、ありがとうございました!お粗末様でした。
2021.02.25
かっこいいリンクさんはいない
乱闘を終えて部屋に戻ろうとすると、大量のワドルディに持ち上げられながら移動するデデデとすれ違った。希望するファイターが連れて来ていい付き人は1人という制限を守っていないのはあの我儘大王だけだ、と一人苦笑した。
「お疲れ様です、リンクさん。」
デデデの後ろをゼルダが歩いて、その付き人である***が挨拶した。そう、俺と同じハイリア人、同じ世界の女の子。
「次はゼルダの番か。」
「ええ。最近は賭けをしてまで観戦してくださる方もいるそうですから、期待に応えられるように務めねばなりませんね。」
「ゼルダ様ならきっと大丈夫です!それに、あまり気を遣わなくてもよろしいかと………せめてこちらの世界では、人のことよりもゼルダ様自身が楽しむことの方が大切だと私は思います…あまり無理をなさらないでください…。」
「そうでしょうか?」
「ああ、こっちでは見世物の為の乱闘だろ。勝とうが負けようが、ファイター自身が楽しんでないと観る方も楽しくないだろ、きっと。」
「そうですね…こちらにはこちらの文化がありますし、私も楽しませていただくことにしましょうか。ありがとうございます、二人共。***、サポートお願いしますね。」
「はいっ!私は準備万端です。任せてください!」
ふふ、と笑顔になる***。別れる際、僅かに花の香りがしてああ今日もゼルダの部屋に生ける花を替えたのだろうか……と考えずにはいられなかった。
彼女はごく普通の花屋の娘で、ハイラル城で働いていた訳でも無かった。それが突然、こっちの世界で生活する際の付き人にゼルダが指名したと聞く。城で働く女性も多くいただろうに何故彼女を?と尋ねたことがある。確か、城の者ではハイラルにいる時と同じ空気になるのを避けたいだとか……そこでいつも城に飾る花を注文する花屋の娘が目に留まっただとかそんな理由だった気がする。***自身も何故自分がと驚いていたようだったが、ゼルダに仕えることに大層喜んでいた。俺は旅の間に花屋に寄ることなんて無かったから、***のことを知ったのはゼルダが付き人として連れて来てからのことだった。
部屋に戻ると勢いよく寝床に転がり、うつ伏せのまま声を荒げた。
「あ~~~羨ましい!!」
ゼルダが、羨ましい。***と話す時は必ずと言っていいほど、彼女はゼルダのことをよく話す。ゼルダに尽くす為にも、他のファイターのことも是非把握しておきたいと熱心に名簿や書籍を読み漁り、人当たりも良い彼女は他のファイターともよく接する方なのだが、やはり中でもゼルダのことを最も慕っていた。***から話しかけてくれたと思ったら、“ゼルダ様のお茶の時間に、そろそろ新しい種類の茶葉を用意したいと思ってるのですが……何か良い物をご存じないですか?”だとか、幸せそうにしてるから何か良いことでもあったのかとこっちから話しかければ“この前ゼルダ様のお部屋のお花を活け替えたら、良い香りの花ですね、癒されますと褒めてくださって……私とっても嬉しいんです!”といった感じで本当にゼルダの話ばかり、と言うか寧ろゼルダに関係ない話を彼女の口から聞いたことが無いんじゃないか。最初は普通に良い子だなと思っていた程度だったけど、あんまり楽しそうにゼルダのことを話すもんだからあんなに想われるゼルダが羨ましくなった。
つまりは***を好きになってしまった訳で。ゼルダじゃなくて俺に尽くしてくれたら、俺の隣で笑って過ごしてくれたら…なんて考えてしまう。今までに何度か気持ちを伝えようとしたが、大抵彼女はゼルダと一緒にいるし一人の時でさえゼルダの為にばたばたと忙しく動いているから、邪魔をするのも申し訳なくてことごとくタイミングを逃してしまっている。っていうかどんだけゼルダのこと好きなんだよ!!本当に羨ましいなぁオイ!!
今まで勇者として様々な敵と戦い抜いてきたが、まさかここに来てこんな強敵に直面する日がくるとは思わなかった。俺は女性が好意を持つ相手として、女性に敵わないのか……。
そう考えている間に時間が経っていることに気付いた。そろそろ***も暇が出来る頃だろう。なるべく機会を確保しないと、きっといつまでも気持ちを伝えられない。ふぅと一息吐いて広場へと向かった。
「ブラピさんとお話する機会ってなかなか無かったので、こうしてお話出来てとても嬉しいです。」
「あ~、そうかよ。」
「最優先はゼルダ様になってしまいますけれど、ブラピさんは新規参戦でまだわからないことも多いでしょう?もしわからないことや困ったことがあったら、気軽におっしゃってくださいね。私頑張りますから!」
「お前暇人なんだな…。」
「むっ、そんなこと無いですよ~!」
俺は何でレギュラー枠なんだろ、新規参戦者だったら良かった。本気で思った。だって***とあの黒い天使が広場のベンチで隣り合って座ってるんだぞ。俺にはそんな機会無かったぞチクショー。
「ピットさんだったらきっと素直に“ありがとー!”って言ってくださるのに、ブラピさんは意地悪なんですね。」
「俺はピットじゃない、あんな金魚のフンと一緒にするな。」
「そういえば戦い方もちょっと違いますね………ブラピさんは狙撃の方が得意なようですし。」
「わかるのか。」
「うーん、何となくですけど……ピットさんは元々いろんな武器を扱っていたからオールマイティなタイプなのかもしれないですね~。」
「……よく知ってんな。」
「ふふ、ゼルダ様のお役に立てればと思って、他のファイターさんのことも一応勉強してるので!リプレイを見たら、自分の癖とかわかるようになるかもしれないですよ。」
***はよく、ゼルダが他のファイターと上手く戦えるように、撮影された乱闘を確認していたり、それぞれの世界でファイターがどんな活躍をしていたか資料を確認していた。どんなファイターにも敬意を持って接するし、そういうところがみんなに好かれる理由の一つだった。ブラックピットだって、***を適当にあしらっているように見えるがすぐにその場を離れようとしないあたり、そこそこ好意はあるようだ。俺はもっと好きだけどな。
しかしこの雰囲気だと、多分あの二人は自然と昼食を一緒にするだろう。それは困る。俺は午後には乱闘の予定が入っているし、ちょうどその後にゼルダも乱闘に入る予定だ。そうするとまた***と話すタイミングが失われてしまう。
「***!」
『あ、リンクさん!お疲れ様です。」
「もしかして昼飯ってこれからか?良かったら、一緒に食べに行こうぜ」
手を振りながら声をかけると、***はぺこりと会釈した。出来るだけ自然な雰囲気で、食事に誘うと彼女は嬉しそうに了承した。
『まあ!良いですね。ブラピさんも一緒なのは新鮮です!ぜひ行きましょう!!」
……“二人で”って言えば良かった。そりゃそうだよな、それが自然な流れだよな。そうなる可能性を想定していなかった俺の思考回路が一番不自然だったわ。"ゼルダ様も誘ってきますね!"と言ってゼルダを呼びに行く後ろ姿を見届けながら引きつった表情を固まらせている俺を横目に、ブラックピットの奴が鼻で笑った。クソ、愛のキューピットとして少しは温かく見守るくらいしてくれよ。
食事は***の希望に沿って、ネスの故郷オネットにあるレストランで食事することにした。他のステージは乱闘の時以外に行っても楽しめるものなんてほとんど無いが、元々平和なこの世界は日常生活のワンシーンにも馴染む。
「何だか不思議なメンバーですね。リンクさんが誘ってくださったおかげで、ブラピさんとお食事する機会が出来て良かったです。」
花が咲くようにニコニコと嬉しそうに話す***。そんな彼女をゼルダも優しく微笑んで見守っていた。ああ、きっとこういうところをゼルダも気に入り、側に置いているのだろう。
でも、俺だって彼女のことが好きなんだ。
「実は……ゼルダに頼みがあって、」
テーブルの下で拳を握り、絞り出すように言葉を口にする。
「***を……お、俺の付き人に譲ってくれないか!?」
「…………。」
「……え?」
静かに俺の言葉を聞いているゼルダとは対照的に、***が素っ頓狂な声を上げて固まり、フォークに巻かれていたパスタは皿へとずり落ちた。ブラピが代弁するかのように、疑問を投げかけてきた。
「アンタ、確か前回からずっと参戦していて今まで付き人もいなかったレギュラーだろう?何で今更付き人が必要なんだよ?」
「そ、そうです……それです!それにリンクさんは、一人の生活にも慣れていると伺っておりました。私なんて必要ないのでは……?」
「私にも理解できません。何故***を?」
“ハイリア人の付き人が必要になったのであれば、私の方で手配しましょうか?”というゼルダの提案に首を振る。
「いや、他の人ではダメなんだ……。」
「それは何故ですか。」
真っ直ぐに見据える瞳に一瞬気が引ける。これが一国の王女の気迫か。やはり正当な理由もなく、“良いでしょう”とは言わない。彼女にとって***はこの世界における付き人であると同時に、ハイラル王国の守るべき民でもあるのだ。それは俺にとっても同じだ。しかし、大勢のうちの一人という意味ではない。
生半可なごまかしでは絶対に納得してもらえないだろう。ここは正直に戦うしかないと思い、負けじと見つめ返した。
「正直に言う。俺は…………***が好きだ!」
「……!」
「いつもいつもゼルダのことを想って、一所懸命に働く***が素敵だと思う。でも……俺は…………知り合いとして……ハイラルの勇者としてじゃなくて……今のゼルダにするみたいに***と話したいし、一緒に過ごしたい。だから……」
「……やはり、そういうことなのですね。どうしたいか、私は***の意思を尊重します。」
「ぜ、ゼルダ様……?そんな、私……………」
「私に気を遣う必要はありません。元々***に務めていただいたのは命令ではなく、私自身の我儘です。貴女の素直な気持ちで、選んで良いのですよ。」
“私は貴女に側にいてほしいと思ってはいるのですが……貴女の自由を縛るつもりはありませんから。”と、優しく言うゼルダ。
***は悩んでいるようだ。少し俯いて考えている。本来なら***に伝えるべき気持ちを、俺が順番を飛ばしてこんな人前で話したのだ。今更になって申し訳ない気持ちが溢れた。が、***が沈黙を破るのは俺が予想していたよりもずっと早かった。
「リンクさん。私のことをそんな風に思ってくださって、ありがとうございます。お気持ち、嬉しいです。……でも、ごめんなさい。私…………」
視線を逸らして、赤らめた頰を隠すように両手を添える***。え、何その表情初めて見た。すっげぇ可愛い。……まあ、こんな人前だから断られても仕方ないよな。***の新しい表情を見られただけで満足してしまいそうだった俺の思考に、コッコが鳴き声を響かせるかの如く衝撃な事実を知る。
「ほ、他に好きな方がいて…………なので、リンクさんの気持ちには答えられません……っ!」
一所懸命に言葉を紡ぐ彼女は可愛らしかったけど、新事実に驚きを隠せず“え、え、”と情けなく狼狽える。
「まあ。そのような方がいらしたのですか?今まで気がつきませんでした。」
今まで俺達の会話を見守るだけだったゼルダもこれには驚いたようで、口を開いた。ブラピなんて鼻で笑って“残念だったな、バッタ勇者”とかほざいてる。うるせぇ何でお前はここにいるんだ。……***が誘ったからか。ならしょうがないな。……じゃなくて!***に意識を戻して思わず率直に疑問をぶつける。俺だって今まで彼女のことを見つめてきたのに、ゼルダの他にそんな相手がいるとは思わなかった!
「それってハイリア人?俺の知ってる人?」
「ファイターの方なんですけど……夜空みたいにとっても綺麗な青い目をしてて…」
相手のことを思い出して頰を緩めながら、もじもじとする彼女に焦りを覚える。誰だ、彼女にこんな表情をさせる奴は!?
青い目…?ゼルダをこんなに慕ってるくらいだから同じ王族のマルス?いやアイクか?それともピット…?まさかマリオなんてこと無いよな!?
「じ、つは俺でした〜……とかそういう流れの告白じゃなく?」
「カービィ…です……。」
「「「カービィ」」」
キキーッ!!という大きな音を出して、店の外を車が過ぎて行った。と同時に、あまりにも予想外な相手に驚き、その場にいた3人が固まった。
カービィってあの、まんまるピンクの……え?
「か、か、か、カービィ!?人間じゃないのに!?」
「愛に種族や姿形は関係ないじゃないですかっ!」
やっと言葉を出すと***はぶぅと頰を膨らませて言う。は?可愛いなオイ。じゃなくて。誰を好きになるのも個人の自由だけど!!せめて人間の姿に近いピットとかだったらまだわかるけど、まさかのカービィ。あの、食べることが何よりも大事で、他は何も考えていなさそうなカービィ?
「た、確かに良いヤツだけど、一体どこに惚れたんだ……」
「それは……とても幸せそうに食事するところや、表情がころころ変わる所とか…抱っこすると擦り寄ってくるところとか…」
「じゃあ、俺も同じことすれば可能性……」
「え、するつもりなんですか……?」
しまった、カービィを否定するようなこと言って***を傷付けないように話を聞いてたら本音が出てしまった。ちょっと引いてる。泣きそう。おいそんな目で俺を見るなブラピ。ゼルダとか目を合わせないように下向いてるよ。何だよこの状況……作ったの俺だった。もう居たたまれなくて逃げ出したい気持ちになった。
「とにかく私、他に好きな方もいることですし、これからもゼルダ様の付き人として尽くしたいのです。だからリンクさんの気持ちには答えられません。……ごめんなさい。」
ドンッッッ!!という大きな音が自分の脳内で起こったものなのか、はたまた窓の外から聞こえた音なのかわからないくらいに動揺した。
ああ、せめて隣でミドナが馬鹿にするように笑ってくれた方がまだマシだと思う空気がその場を包んでいて。俺はテーブルに突っ伏した顔を、しばらく上げることが出来なかった。
ライバル、それはピンクの
(まんまるで大食いの、星の戦士だった。)
***
アンケート投票作品
2位:11票 リンク→ゼルダの付き人夢主→カービィ(スマブラforリンク)でした。
スマブラfor WiiUどころかとっくにスペシャルが発売しているこの時期に投稿という、恐るべき時代遅れ感。本当に時間が経つのは早いですね。そりゃ時オカリンクも眠っちゃいますよ。(????)
基本的に、プレイしたことのない作品のキャラクターなどは扱わない方針にしています。作品やキャラクターに対する礼儀な気がするので。でもゼルダシリーズ以外のキャラクターが出ないとスマブラではないので、カービィとパルテナシリーズから。
とか言っておきながら、MOTHERはプレイしたことがないんですけど、ステージの世界でも何かしらの生活や遊びに利用できる空間になっていたら面白いな、と思い比較的日常生活感がありそうなオネットを食事の舞台にしちゃいました。夢主がカービィを好きだと告白した時の衝撃に合わせた“キキーーーーッッッッ!!”って車の音が流れるシーンを書きたかっただけと言っても過言ではないです。
でも個人的に、私もカービィが好きです。スマブラ64の頃はリンクかカービィしか使ってませんでした。へへ。
アンケートのご協力、ありがとうございました!お粗末様でした。
2021.02.25
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