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私は鍛治職人の仕事が好きではなかった。先祖代々王家に仕えた家系だからと、私の家は王家の為に武器を作る役目を担っていた。その腕を買われて、伝説の退魔の剣の修復も私達に科せられた使命だった。
その為に私は、子供の頃から退魔の剣が存在する鬱蒼とした森の中で暮らし続けてきた。そもそも100年前に起きた厄災で英傑は皆命を落としたのだと聞いている。何故、厄災ガノンを封印する勇者などという伽話にしか存在しない人を待ち続けなければならないのか。
この100年間、魔物は蔓延っているけれどハイラルに大きな動きは無い。私の生きている間に再び厄災が復活することなど無い。何の確証もなくそう思っていた。
けれど勇者は私の前に現れた。
「ごめんなさいリンク。私が退魔の剣を完全に直せていないばかりに」
傷付いた剣を磨きながら謝罪の言葉を述べる。亡き父から受け継いだ退魔の剣の修復は、私の技術が足りないばかりにあまり進まなかった。だから使い込むごとに退魔の剣は傷付き、こうして私が何度も修復しなければならなかった。
リンクが眠っている100年の間に先祖代々から続けてきた修復を、私は肝心なこの時に完遂することが出来なかったのだ。
(どうして私は、)
剣を磨く手を、リンクに止められた。
「今日はもういいよ、***」
「でも、」
「武器の予備は充分にあるから。もう休んだ方がいい」
「…………。」
(貴方も私と同じね)
それは伝説の剣に失礼かしら。ぱちん、と傷付いたままの刀身を鞘に収めた。
眠りにつこうと宿のベッドに潜っていたところ、背中越しにリンクが私に問いかける。
「***の17年間は、どうだった?」
「どうって?」
「良い17年間だったか、聞きたい」
「…………正直に言うとあまり満足はしていないわ」
静かな森に父と二人。たまに森の外へ出て食べ物や道具の調達に同行することはあった。けれど私にとって、そのどれもが輝かしいものではなかった。誰かの視線を感じる薄暗い森。時々嘲笑うように笑い声が聞こえるの。不気味だった。森の外は魔物が蔓延っていて、気付かれないように息を潜めて近くの集落へ向かった。とても緊張したわ。激しい雷雨の中で魔物に追われた時は、この世はなんと恐ろしいのかとさえ思った。
遠い昔のハイラルを知っている人達にとっては良い国であったのかもしれないけれど、私にとっては良い国ではない。そう正直に伝えると彼は少し悲しそうな顔をした。
「そう、だったんだ。ごめん」
「別に貴方を責めているわけじゃないわ。たまたま、私の生まれた家系がそういう所で生活しなければならなかっただけなのだから」
もっと人の多い整った集落で、普通の子として生まれていたらそうは思わなかったかもしれない。
だからこそ、私は自身の家系と鍛治職人の仕事が好きになれなかった。私の未熟さもだ。
(17年…………私は何をしていたの)
勇者など来る筈が無いと思い込み、自分に科せられた使命を充分に全うすることが出来ない自分。私が生きた17年間は、とても空虚なものに感じられた。
「***にとっての17年間は、きっと苦しかったでしょ」
「え?」
「終わってみれば一瞬でも、その苦しみの中にいる間はすごく長く感じると思うんだ。おれが眠っていた100年間は目覚めた今では一瞬で、眠る前の記憶は昨日のことみたいに感じる。でも本当はとてつもなく長い時間が経ってて……。
あの人は100年間、ずっと一人で耐え続けているのに。おれは何も感じないまま眠ってた」
彼はきっと悔いている。眠った時間を無駄にしたものだと思っている。私にはそう感じた。
「……貴方が姫を助けなければ、厄災の封印どころかこうして抑えることすらできなかった筈。100年の時を要する程傷付きながらも、逃げなかった貴方の行いは正しかった。貴方の100年間は在るべくしてあった時間なのだと、私はそう思います」
だからどうか悔いないで。貴方はその使命を今もなお全うしているのだから。
私にしか出来ない筈のことを、果たせない私と違って。
「……ありがとう」
「いいえ」
ぎゅうとシーツを握り締める。彼に対して私はなんと情けない。17年の重みに等しいことを何一つ出来ていない。情けない、情けない。
溢れる涙に枕を濡らしながら眠りについた。
朝になると、リンクは私にある選択をもちかけた。
「***。もし***が嫌なら、もう無理しておれに着いて来なくてもいい」
思わずスプーンを手にしたまま固まる。それは私の存在も、技術も必要無いということなのだろうか。
「……だって、退魔の剣は…」
「ガノンを討伐する時にだけ使えばいい。そうしたらわざわざ一緒に同行する必要も無くなるでしょ」
「…………それは……」
何それ。頭の中がこんがらがってきた。確かに私は完全に修復することがまだ出来ない。でもそれをしなくていいってこと?私の先祖が続けてきたことを、私の代で終わらせる?それも中途半端に。そんなの、そんなの……
「私の使命を奪わないで……」
不思議だった。あんなに好きじゃなかった鍛治の仕事なのに。煩わしい宿命だったのに。いざそれを奪われると思うと、これまでの私がしてきたことの意味が全て無くなるようで途端に恐ろしくなったのだ。
「だって、嫌じゃないの?剣を直す為に旅をするの……怖くない?」
そう聞かれて、はっとした。確かに私は昨晩、この国のことを怖いと言った。でもそれは昔の話。昔はそれが理由で自分の家系が嫌いだった。
でも、今は?
「……気付いたの。私が一番嫌だったのは、森の中で使命に縛られて生き続けなければいけないことだって。でも今は違う。こうしていろんな地方を歩いて、村に行って、いろんな景色を見て…………それが出来ているのも、この使命のおかげ。
いろんな所でもっと技術を磨いて、退魔の剣だってきっと完全に直してみせるから……だからお願い。
貴方と一緒に旅を続けさせてください、リンク」
「……わかった。本当のことを言うと、おれもいつになったら厄災を討伐できるかまだ自信は無いけど……一緒に頑張ろう」
差し出された手を握って、また私達は旅に出る。
(どこまでいってもきっと満足なんて出来ない)
(それでもいつか、自分のしてきたことは無駄じゃなかったと胸を張れるように私達はなりたいの)
***
リハビリも兼ねて久しぶりに更新。自然な会話を描写するって難しい。
今作のリンクを、まだ自分なりにキャラ付けが出来ていません。
17.06.28
その為に私は、子供の頃から退魔の剣が存在する鬱蒼とした森の中で暮らし続けてきた。そもそも100年前に起きた厄災で英傑は皆命を落としたのだと聞いている。何故、厄災ガノンを封印する勇者などという伽話にしか存在しない人を待ち続けなければならないのか。
この100年間、魔物は蔓延っているけれどハイラルに大きな動きは無い。私の生きている間に再び厄災が復活することなど無い。何の確証もなくそう思っていた。
けれど勇者は私の前に現れた。
「ごめんなさいリンク。私が退魔の剣を完全に直せていないばかりに」
傷付いた剣を磨きながら謝罪の言葉を述べる。亡き父から受け継いだ退魔の剣の修復は、私の技術が足りないばかりにあまり進まなかった。だから使い込むごとに退魔の剣は傷付き、こうして私が何度も修復しなければならなかった。
リンクが眠っている100年の間に先祖代々から続けてきた修復を、私は肝心なこの時に完遂することが出来なかったのだ。
(どうして私は、)
剣を磨く手を、リンクに止められた。
「今日はもういいよ、***」
「でも、」
「武器の予備は充分にあるから。もう休んだ方がいい」
「…………。」
(貴方も私と同じね)
それは伝説の剣に失礼かしら。ぱちん、と傷付いたままの刀身を鞘に収めた。
眠りにつこうと宿のベッドに潜っていたところ、背中越しにリンクが私に問いかける。
「***の17年間は、どうだった?」
「どうって?」
「良い17年間だったか、聞きたい」
「…………正直に言うとあまり満足はしていないわ」
静かな森に父と二人。たまに森の外へ出て食べ物や道具の調達に同行することはあった。けれど私にとって、そのどれもが輝かしいものではなかった。誰かの視線を感じる薄暗い森。時々嘲笑うように笑い声が聞こえるの。不気味だった。森の外は魔物が蔓延っていて、気付かれないように息を潜めて近くの集落へ向かった。とても緊張したわ。激しい雷雨の中で魔物に追われた時は、この世はなんと恐ろしいのかとさえ思った。
遠い昔のハイラルを知っている人達にとっては良い国であったのかもしれないけれど、私にとっては良い国ではない。そう正直に伝えると彼は少し悲しそうな顔をした。
「そう、だったんだ。ごめん」
「別に貴方を責めているわけじゃないわ。たまたま、私の生まれた家系がそういう所で生活しなければならなかっただけなのだから」
もっと人の多い整った集落で、普通の子として生まれていたらそうは思わなかったかもしれない。
だからこそ、私は自身の家系と鍛治職人の仕事が好きになれなかった。私の未熟さもだ。
(17年…………私は何をしていたの)
勇者など来る筈が無いと思い込み、自分に科せられた使命を充分に全うすることが出来ない自分。私が生きた17年間は、とても空虚なものに感じられた。
「***にとっての17年間は、きっと苦しかったでしょ」
「え?」
「終わってみれば一瞬でも、その苦しみの中にいる間はすごく長く感じると思うんだ。おれが眠っていた100年間は目覚めた今では一瞬で、眠る前の記憶は昨日のことみたいに感じる。でも本当はとてつもなく長い時間が経ってて……。
あの人は100年間、ずっと一人で耐え続けているのに。おれは何も感じないまま眠ってた」
彼はきっと悔いている。眠った時間を無駄にしたものだと思っている。私にはそう感じた。
「……貴方が姫を助けなければ、厄災の封印どころかこうして抑えることすらできなかった筈。100年の時を要する程傷付きながらも、逃げなかった貴方の行いは正しかった。貴方の100年間は在るべくしてあった時間なのだと、私はそう思います」
だからどうか悔いないで。貴方はその使命を今もなお全うしているのだから。
私にしか出来ない筈のことを、果たせない私と違って。
「……ありがとう」
「いいえ」
ぎゅうとシーツを握り締める。彼に対して私はなんと情けない。17年の重みに等しいことを何一つ出来ていない。情けない、情けない。
溢れる涙に枕を濡らしながら眠りについた。
朝になると、リンクは私にある選択をもちかけた。
「***。もし***が嫌なら、もう無理しておれに着いて来なくてもいい」
思わずスプーンを手にしたまま固まる。それは私の存在も、技術も必要無いということなのだろうか。
「……だって、退魔の剣は…」
「ガノンを討伐する時にだけ使えばいい。そうしたらわざわざ一緒に同行する必要も無くなるでしょ」
「…………それは……」
何それ。頭の中がこんがらがってきた。確かに私は完全に修復することがまだ出来ない。でもそれをしなくていいってこと?私の先祖が続けてきたことを、私の代で終わらせる?それも中途半端に。そんなの、そんなの……
「私の使命を奪わないで……」
不思議だった。あんなに好きじゃなかった鍛治の仕事なのに。煩わしい宿命だったのに。いざそれを奪われると思うと、これまでの私がしてきたことの意味が全て無くなるようで途端に恐ろしくなったのだ。
「だって、嫌じゃないの?剣を直す為に旅をするの……怖くない?」
そう聞かれて、はっとした。確かに私は昨晩、この国のことを怖いと言った。でもそれは昔の話。昔はそれが理由で自分の家系が嫌いだった。
でも、今は?
「……気付いたの。私が一番嫌だったのは、森の中で使命に縛られて生き続けなければいけないことだって。でも今は違う。こうしていろんな地方を歩いて、村に行って、いろんな景色を見て…………それが出来ているのも、この使命のおかげ。
いろんな所でもっと技術を磨いて、退魔の剣だってきっと完全に直してみせるから……だからお願い。
貴方と一緒に旅を続けさせてください、リンク」
「……わかった。本当のことを言うと、おれもいつになったら厄災を討伐できるかまだ自信は無いけど……一緒に頑張ろう」
差し出された手を握って、また私達は旅に出る。
走る、追いかけるように
(どこまでいってもきっと満足なんて出来ない)
(それでもいつか、自分のしてきたことは無駄じゃなかったと胸を張れるように私達はなりたいの)
***
リハビリも兼ねて久しぶりに更新。自然な会話を描写するって難しい。
今作のリンクを、まだ自分なりにキャラ付けが出来ていません。
17.06.28
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