ZELDA
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「***こんなところで寝てたの。風邪ひくよ。ほら、日が暮れる前に帰ろう。」
ベンチで横になって昼寝をしていたら、最近進級して緑の制服を身にまとったリンクが起こしてくれた。あまり親しくはなかった筈なんだけど、それからだ。リンクが頻繁に私へ話しかけるようになったのは。
「***~、一緒に食べようよ。」
「今度一緒にショッピングモールへ行こう。***に似合いそうな物が売ってたんだ。」
とか。たまに「ん?ここまで親しい仲だったっけ?」と疑うような発言もたまにはあったけど、同性の友達だと考えれば自然な会話であったし、リンクはちょっと女の子っぽいところがあるのかな?程度に思っていた。
ここまでは良かったんだ。
「***~!一緒に寝よう!!」
「アウトーーーーー!!」
静かな夜に不釣り合いなほどに元気な様子でドアを開き、入ってきたリンクにそれ本来なら朝のテンションであるべきでしょと思った。いやいや一緒に寝ようは流石にマズい、リンク貴方良い歳でしょ?いくら私とは言え年頃の女の子の部屋にこんな夜更けに来ること自体もうダメだけど、何だ一緒に寝ようって。何だ一緒に寝ようって。
何だ一緒に寝ようって。
「リンクお願い。痛い目見る前に帰ってちょうだい。」
「帰るって、***の所以外のどこに?」
「いや自分の部屋があるでしょーが。私はリンクのお母さんか。」
「あはは、何言ってるの***ってば可笑しいの。僕達同い年でしょ、***が僕のお母さんな訳無いじゃん。」
「あれ?おかしいな??何で私がおかしい発言してるみたいなことになってるの??え?」
って言うかそれ以前に自分の発言を振り返ってー!もっと他におかしい発言あったでしょー、振り返ってリンクー!
ふざけてるようで割と本気でわかっていない彼と距離を置いて身構える。私だって騎士を目指す端くれ、自分の身くらい自分で守ってみせるわ。まあ私以外助けてくれる人がいないから、そうせざるを得ないのだけど。と言うかリンクも騎士を目指す端くれの筈なのに、何てことしてるの。
「この部屋から出て行かないなら、私もそれなりの対処をするから。」
「どうしてそんな警戒してるの?僕もう疲れたから早く寝たいな。」
「立ち去れーーー!!」
近寄ってきたリンクに、イグルス先生から教わった巴投げをかます。なんかこんな日が来るような嫌な予感が薄々していた。人型の魔物だって現れるかもしれないって先生に説得して護身術習っておいて良かった~!
「いだぁっ!!」
「ごめんねリンク!でも今回ばかりは流石に自分が悪いことしてるって自覚して!!ほら出て行ってよ、明日も早いんじゃないの!?」
「ぐ……***と寝るまでは出て行かないぃ…………。」
「うわ~~怖い!怖いよ~~!!キコア先輩にリンクは風紀を乱す不埒な輩だって忠告しておかなきゃ~!いや違う、それよりも先に校長先生に伝えなきゃ!!」
だから早く私の部屋の鍵を直しておいてくださいって言ったのに!あの校長先生!変な眉毛しやがって!!ああもう、だいたい何でこんな時に私の部屋の鍵が壊れてるのよ、嫌になっちゃう!!
「校長先生!校長先生ってば~~!!」
ドンドン、と拳を扉に叩きつけて名前を呼んでも返事は無く、ドアノブに手をかけてガチャガチャと回しても開かない。嘘、何でこんな時に校長先生の部屋には鍵がしっかりかかっていて私の部屋にはかかってないのムカつく!
「今度見かけたら絶対その眉毛剃り落としてやっからな!!」
びし、と人差し指を校長先生の代わりに扉に向けて暴言を吐き捨てながら階段を駆け下りた。ああどうしよう、そういえば夜は屋外へ続く一階の扉は施錠されてるんだっけ。危ないからよっぽどのことが無ければ、外になんて出ないけど。今がそのよっぽどの時なのになー!
「ど、どうしよ……!」
教室にも食堂にも隠れられる場所なんて無い。せめてリンクに捕まらずに一晩過ごせればーーー
待てよ。今リンクが私の部屋にいるのなら、リンクの部屋は開いているんじゃ。試しにリンクの部屋のドアノブを握る。ノブを回し、そっと扉を押すと……開いた。
(占めた!リンクったら今まで鍵をかけないまま出かけてたのね!)
どうせ大地とやらに行くうちに鍵をどこかへ落としたに決まってるわ、あんな普段からぼ~っとしてて寝ぼけてるような奴だもの。だったら中から鍵をかけてここに身を隠すのが一番安全。私と寝るまでは部屋から出て行かないとまで言ったんだ、きっと私が戻ってくるのを待っている間に一人で寝落ちするでしょう。仮に探しに来たとして、まさか逃げ出した私が自分の部屋に隠れてるだなんて思いもしない筈だわ。鍵かけちゃうから入れないしね!!
「…………とは言え、リンクのベッドで寝なきゃいけないなんて……。」
げっそり、という気持ちでベッドに身を投げる。
「……………………予想はしてたけど、自分以外の部屋ってやっぱり違う匂いがするのね……。」
落ち着かない。でもアイツはどうせ今頃私のベッドでぬくぬく眠っているんだ、それなのに私だけ変なプライド?を持って冷た~い床で眠るなんて理不尽過ぎるもの。それにリンクと一緒に寝るよりはマシなんだから。そうよ、今晩だけの辛抱よ、***。もうリンクのせいでどっと疲れたわ。今落ち着いて眠れる環境が彼のベッドというのはいささか皮肉ね。
はは、と乾いた笑いをこぼした後は吸い込まれるように眠りに落ちた。
「…………ん~……。」
浅くなった意識の中寝返りを打とうとしたら、隣の何かに遮られる。私寝る前に何か隣へ置いたっけ…………そういえばこの前クラネ先輩から抱き枕譲って貰ったのよね……ロフトバードの可愛い抱き枕……。
目を閉じたまま手を動かし、布団とは違う柔らかな布に触れて抱き寄せようとする。あれ……何か……重たい…………?
違和感に疑問を抱き目を開くと、朝の日差しに照らされるリンクの顔が、どアップで私の視界を埋め尽くしていた。
「……………………へ?」
「んっ…………あ、おはよう……***~………。……***ってば、昨夜あんなに嫌がってた癖にそんなに僕とくっ付きたかったの……素直じゃないなぁ。でもそんなところも可愛いよ、」
「ッ、キェアァァァァァァァァァァ!!」
我ながら人間じゃないような叫び声だった。パニックで加減も無しにリンクへアッパーをかまし、靴も履かずに部屋から飛び出してしまった。
でも悪いのはどう考えてもリンクなんだから仕方がない。アイツしっかりと布団に入り込んで私の、こ、腰にまで手を伸ばしてしっかり抱き付いて眠ってやがった……!!
「もうやだ~~~~!!アウール先生!助けてくださ~~い!!」
寝起き早々、身だしなみを整える余裕も無くアウール先生の部屋に逃げ込む。ごめんなさいアウール先生、でも今朝だけは許して。夜更けなんかに異性の部屋に上がりこむどっかの馬鹿と違って、私は昨夜自分以外の人達に気を遣って一人で我慢してたの、もうそれだけで褒めてもらいたい。
昨夜からの苦労を思い出しながら先生に伝える。あ、やばいちょっと涙出てきた。
「つ、ついさっき、わた、私の部屋に一度戻って、変なことされてないか確認してきたんです……っ!そしたらっ、日記が読まれてて…………!!」
「いや待て***、日記が開いていたからと言って必ずしも読んだとは限らないだろう、落ち着いてよく思い出してみるんだ。リンクが昨夜部屋に来る前から、本当に日記は開いていなかったのか。」
「だって…………コメントが……っ!」
「こ……コメントだと?」
「その……“ここ最近バドの姿が見えない、バドもゼルダを探しに行ったのかな。リンクがゼルダを探しに行ってから結構な時間が経つ。早く無事に帰ってきてほしい。”って感じの内容を……以前書いたんですけど…………。」
「ふむ……友達を心配している***は優しいな、」
「さっき見たらその後の行に“僕のこと書いてくれてて嬉しい、これからも日記書く時に僕のこと思い出してくれると嬉しいな。”って書き込まれてたんです……っ!」
「………………。」
「私の日記は学級日誌じゃねーんだぞ!!」
「じゃあ交換日記でも始める?」
「嫌ーーーーーっ!?」
怒りで興奮して先生に話していたら、いつの間にかひょいと隣に現れたリンクにおびえてアウール先生に泣き付くと、リンクはムッと不機嫌そうに顔をしかめた。
「……***離れてよ。」
「いいいいやいや嫌!ぜーったいに嫌よ!!」
「我儘言うなよ、先生だって困ってるじゃないか。」
「昨日の今日でよく貴方がそんなこと言えるね!?」
理不尽って言葉知ってる!?と先生を置いて怒りたくなるが、“まあまあ***、まず私がリンクと話すから安心しなさい。”と先生が頭を撫でてくれる。うぅっ、先生…………!!
「私っ、先生に一生ついていきます……っ!」
抑えきれない涙を必死に袖で拭いながら、これからの実技の授業は一生懸命やるんだと堅く心に誓った。すると、服の裾をくいくいと引っ張られる。ん?と足元を見ると、引っ張っていたのは見慣れぬ生き物だった。
「……??」
「***、私とリンクは校長室で話をしてくるから君はここで待っていなさい。それはコブーと言ってな、リンクが地上から連れてきてくれた動植物なんだ。ゆっくり話をして、落ち着くといい。」
先生とリンクが部屋から出て行き、ばたんと扉が閉まる。取り残された私と動植物。
「……ど、動植物…………?」
「オイラ、キュイ族のコブーっていうキュ!***っていったキュ?***お姉ちゃんはあわて者だキュね!」
「……??」
さっきから私の脳内にはハテナが大量発生。何?キュイ族?キュイ族って何??ミーちゃんとはまた違うの?何でこんなよくわからない初対面の生き物にあわて者って言われてるの私は。
そもそも何で言葉を話すんだコレ。
「あの緑のお兄ちゃんは悪い奴じゃないキュ。オレを魔物が襲ってこないこんな安全な所に連れてきてくれたんだキュ。それなのにお兄ちゃんがまるで危険な魔物みたいに逃げるだなんて、オイラよりもあわて者だキュ~!」
「…………お、」
「キュ?」
「お前に何がわかるーーーーー!?」
「キュ~~ッ!?」
「アイツは魔物よ!ケダモノよ!!何も知らない癖に!生態がまるで違う君にはわからないでしょうねこの苦しみは!!」
持ち上げてガクガクと揺さぶると、急に腕からすっぽ抜けて、背中のこぶから草を生やしてうつ伏せになってしまった。ぶるぶる震えているのがよくわかる。
「あああごめんなさいごめんなさい!君に当たっても仕方がないよね本当にごめん!」
「キュ、キュキュ~~…………ッ」
うう、私ってば本当に馬鹿…………一度きちんと落ち着かないと。すー、はー、すー、はー、と深呼吸。
「コブー、本当にごめんなさい。もう君には怒らないから、どうか私を許してちょうだい……。」
お願い、と両手を合わせるとコブーは起き上がり、顔を向けてくれた。
「もう!びっくりさせないでキュ!」
「ううっ…………でもね、今回のことは本当にリンクが悪いのよ。私達くらいの年齢になって、恋人でもないのに夜に異性の部屋に訪れるなんて、非常識なことなの。」
わかってくれるかなぁ、と目の前の人間ではない種族に不安の眼差しを向けると、衝撃の発言が飛び出してきた。
「え?緑のお兄ちゃんと***お姉ちゃんは恋人じゃなかったんだキュ??」
ピシッ!
思考も表情も体中の筋肉も、一瞬で石のように固まった。しばらくの沈黙を置いて、わなわなと怒りで体が震える。
「…………誰に吹き込まれたの…。」
「え?え?大地で会った時にいつも***、***、***って話してたからオレはてっきりそうなのかと思ってたキュ……。」
“オレ、もしかして言っちゃいけないこと言っちゃったキュ?”と焦るコブーを見ると、かえって自分が落ち着きを取り戻せる。
………………いや、正直取り戻せそうにないわ……。
何、リンクが好きなのって探しに行ってるゼルダじゃないの?
「***……リンクと一応話してきたんだが………………リンクは手強いぞ……。」
「え?一応ってどういうことですか?手強い?」
「あのなリンク、夜更けに異性の部屋を訪ねるなんて非常識だぞ。」
「だって僕、***が好きなんです!!」
「***は困ってたぞ、好きならちゃんと相手の気持ちを思いやらないと、」
「先生は好きな子に想われたいとか、少しでも長く側に居たいとか、そういう思いをしたことがないんですか!?」
「…………。」
「って。まさに盲目だなあれは。」
「いやいやいやいや先生は何勢いに押されてるんですか!お願いですから、もうちょっと私の為に頑張ってくださいよ!」
「あ、あ、アウール先生っ!!何でそれ***に言っちゃうんですかっ!?僕、まだ伝えるには心の準備がっ!!」
「何で……!?何でそこに心の準備が必要なの!?順序がおかしいから!!昨日の言動の方がもっと心の準備が必要だったでしょ、いろいろすっ飛ばしてる!もう本当に嫌……!!」
「***お姉ちゃん大変そうキュ~~…………。」
「何はともあれ、健全なお付き合いをするんだぞ。」
「付き合いませんよ。絶対に。」
***
夢主ちゃんを好きになってしまい、押しがぐいぐい強い癖にどっかズレてるリンク君と、怒るとまれに酷い発言をする夢主ちゃん。リンクは外出時に鍵をかけない癖に、鍵はちゃんと持っていたのです。
久しぶりに、純粋に思うがまま楽しく書けた作品でした。読んでくださった皆様には楽しんでいただけただしょうか……。
「今度見かけたら絶対その眉毛剃り落としてやっからな!!」「私の日記は学級日誌じゃねーんだぞ!!」
↑この2つの台詞が一番書きたかったんです(笑)
「ッ、キェアァァァァァァァァァァ!!」は、リンクお馴染みの掛け声をちょっとだけ意識しました。おっ?と思った方は勘が良いですね。
今日の学校の帰りの電車の中で思いつき、一気にバーっと書き上げました。やはり思いついた時に書き上げた方が、溜め込まずに最後までテンポよく書けます。おかげでやる予定だった課題を進めずに今日が終わります。(皆さんはこんな学生になってはいけませんよ!)
実はざっくりでもこんなシーンが書きたいなというものから、ある程度書いたものの書きかけで未完成のネタが下手したら30個以上あるかもしれないのです。詳しい数は数えるのをやめました。……ちゃんと最後まで書こうね…………私……。
16.11.31
ベンチで横になって昼寝をしていたら、最近進級して緑の制服を身にまとったリンクが起こしてくれた。あまり親しくはなかった筈なんだけど、それからだ。リンクが頻繁に私へ話しかけるようになったのは。
「***~、一緒に食べようよ。」
「今度一緒にショッピングモールへ行こう。***に似合いそうな物が売ってたんだ。」
とか。たまに「ん?ここまで親しい仲だったっけ?」と疑うような発言もたまにはあったけど、同性の友達だと考えれば自然な会話であったし、リンクはちょっと女の子っぽいところがあるのかな?程度に思っていた。
ここまでは良かったんだ。
「***~!一緒に寝よう!!」
「アウトーーーーー!!」
静かな夜に不釣り合いなほどに元気な様子でドアを開き、入ってきたリンクにそれ本来なら朝のテンションであるべきでしょと思った。いやいや一緒に寝ようは流石にマズい、リンク貴方良い歳でしょ?いくら私とは言え年頃の女の子の部屋にこんな夜更けに来ること自体もうダメだけど、何だ一緒に寝ようって。何だ一緒に寝ようって。
何だ一緒に寝ようって。
「リンクお願い。痛い目見る前に帰ってちょうだい。」
「帰るって、***の所以外のどこに?」
「いや自分の部屋があるでしょーが。私はリンクのお母さんか。」
「あはは、何言ってるの***ってば可笑しいの。僕達同い年でしょ、***が僕のお母さんな訳無いじゃん。」
「あれ?おかしいな??何で私がおかしい発言してるみたいなことになってるの??え?」
って言うかそれ以前に自分の発言を振り返ってー!もっと他におかしい発言あったでしょー、振り返ってリンクー!
ふざけてるようで割と本気でわかっていない彼と距離を置いて身構える。私だって騎士を目指す端くれ、自分の身くらい自分で守ってみせるわ。まあ私以外助けてくれる人がいないから、そうせざるを得ないのだけど。と言うかリンクも騎士を目指す端くれの筈なのに、何てことしてるの。
「この部屋から出て行かないなら、私もそれなりの対処をするから。」
「どうしてそんな警戒してるの?僕もう疲れたから早く寝たいな。」
「立ち去れーーー!!」
近寄ってきたリンクに、イグルス先生から教わった巴投げをかます。なんかこんな日が来るような嫌な予感が薄々していた。人型の魔物だって現れるかもしれないって先生に説得して護身術習っておいて良かった~!
「いだぁっ!!」
「ごめんねリンク!でも今回ばかりは流石に自分が悪いことしてるって自覚して!!ほら出て行ってよ、明日も早いんじゃないの!?」
「ぐ……***と寝るまでは出て行かないぃ…………。」
「うわ~~怖い!怖いよ~~!!キコア先輩にリンクは風紀を乱す不埒な輩だって忠告しておかなきゃ~!いや違う、それよりも先に校長先生に伝えなきゃ!!」
だから早く私の部屋の鍵を直しておいてくださいって言ったのに!あの校長先生!変な眉毛しやがって!!ああもう、だいたい何でこんな時に私の部屋の鍵が壊れてるのよ、嫌になっちゃう!!
「校長先生!校長先生ってば~~!!」
ドンドン、と拳を扉に叩きつけて名前を呼んでも返事は無く、ドアノブに手をかけてガチャガチャと回しても開かない。嘘、何でこんな時に校長先生の部屋には鍵がしっかりかかっていて私の部屋にはかかってないのムカつく!
「今度見かけたら絶対その眉毛剃り落としてやっからな!!」
びし、と人差し指を校長先生の代わりに扉に向けて暴言を吐き捨てながら階段を駆け下りた。ああどうしよう、そういえば夜は屋外へ続く一階の扉は施錠されてるんだっけ。危ないからよっぽどのことが無ければ、外になんて出ないけど。今がそのよっぽどの時なのになー!
「ど、どうしよ……!」
教室にも食堂にも隠れられる場所なんて無い。せめてリンクに捕まらずに一晩過ごせればーーー
待てよ。今リンクが私の部屋にいるのなら、リンクの部屋は開いているんじゃ。試しにリンクの部屋のドアノブを握る。ノブを回し、そっと扉を押すと……開いた。
(占めた!リンクったら今まで鍵をかけないまま出かけてたのね!)
どうせ大地とやらに行くうちに鍵をどこかへ落としたに決まってるわ、あんな普段からぼ~っとしてて寝ぼけてるような奴だもの。だったら中から鍵をかけてここに身を隠すのが一番安全。私と寝るまでは部屋から出て行かないとまで言ったんだ、きっと私が戻ってくるのを待っている間に一人で寝落ちするでしょう。仮に探しに来たとして、まさか逃げ出した私が自分の部屋に隠れてるだなんて思いもしない筈だわ。鍵かけちゃうから入れないしね!!
「…………とは言え、リンクのベッドで寝なきゃいけないなんて……。」
げっそり、という気持ちでベッドに身を投げる。
「……………………予想はしてたけど、自分以外の部屋ってやっぱり違う匂いがするのね……。」
落ち着かない。でもアイツはどうせ今頃私のベッドでぬくぬく眠っているんだ、それなのに私だけ変なプライド?を持って冷た~い床で眠るなんて理不尽過ぎるもの。それにリンクと一緒に寝るよりはマシなんだから。そうよ、今晩だけの辛抱よ、***。もうリンクのせいでどっと疲れたわ。今落ち着いて眠れる環境が彼のベッドというのはいささか皮肉ね。
はは、と乾いた笑いをこぼした後は吸い込まれるように眠りに落ちた。
「…………ん~……。」
浅くなった意識の中寝返りを打とうとしたら、隣の何かに遮られる。私寝る前に何か隣へ置いたっけ…………そういえばこの前クラネ先輩から抱き枕譲って貰ったのよね……ロフトバードの可愛い抱き枕……。
目を閉じたまま手を動かし、布団とは違う柔らかな布に触れて抱き寄せようとする。あれ……何か……重たい…………?
違和感に疑問を抱き目を開くと、朝の日差しに照らされるリンクの顔が、どアップで私の視界を埋め尽くしていた。
「……………………へ?」
「んっ…………あ、おはよう……***~………。……***ってば、昨夜あんなに嫌がってた癖にそんなに僕とくっ付きたかったの……素直じゃないなぁ。でもそんなところも可愛いよ、」
「ッ、キェアァァァァァァァァァァ!!」
我ながら人間じゃないような叫び声だった。パニックで加減も無しにリンクへアッパーをかまし、靴も履かずに部屋から飛び出してしまった。
でも悪いのはどう考えてもリンクなんだから仕方がない。アイツしっかりと布団に入り込んで私の、こ、腰にまで手を伸ばしてしっかり抱き付いて眠ってやがった……!!
「もうやだ~~~~!!アウール先生!助けてくださ~~い!!」
寝起き早々、身だしなみを整える余裕も無くアウール先生の部屋に逃げ込む。ごめんなさいアウール先生、でも今朝だけは許して。夜更けなんかに異性の部屋に上がりこむどっかの馬鹿と違って、私は昨夜自分以外の人達に気を遣って一人で我慢してたの、もうそれだけで褒めてもらいたい。
昨夜からの苦労を思い出しながら先生に伝える。あ、やばいちょっと涙出てきた。
「つ、ついさっき、わた、私の部屋に一度戻って、変なことされてないか確認してきたんです……っ!そしたらっ、日記が読まれてて…………!!」
「いや待て***、日記が開いていたからと言って必ずしも読んだとは限らないだろう、落ち着いてよく思い出してみるんだ。リンクが昨夜部屋に来る前から、本当に日記は開いていなかったのか。」
「だって…………コメントが……っ!」
「こ……コメントだと?」
「その……“ここ最近バドの姿が見えない、バドもゼルダを探しに行ったのかな。リンクがゼルダを探しに行ってから結構な時間が経つ。早く無事に帰ってきてほしい。”って感じの内容を……以前書いたんですけど…………。」
「ふむ……友達を心配している***は優しいな、」
「さっき見たらその後の行に“僕のこと書いてくれてて嬉しい、これからも日記書く時に僕のこと思い出してくれると嬉しいな。”って書き込まれてたんです……っ!」
「………………。」
「私の日記は学級日誌じゃねーんだぞ!!」
「じゃあ交換日記でも始める?」
「嫌ーーーーーっ!?」
怒りで興奮して先生に話していたら、いつの間にかひょいと隣に現れたリンクにおびえてアウール先生に泣き付くと、リンクはムッと不機嫌そうに顔をしかめた。
「……***離れてよ。」
「いいいいやいや嫌!ぜーったいに嫌よ!!」
「我儘言うなよ、先生だって困ってるじゃないか。」
「昨日の今日でよく貴方がそんなこと言えるね!?」
理不尽って言葉知ってる!?と先生を置いて怒りたくなるが、“まあまあ***、まず私がリンクと話すから安心しなさい。”と先生が頭を撫でてくれる。うぅっ、先生…………!!
「私っ、先生に一生ついていきます……っ!」
抑えきれない涙を必死に袖で拭いながら、これからの実技の授業は一生懸命やるんだと堅く心に誓った。すると、服の裾をくいくいと引っ張られる。ん?と足元を見ると、引っ張っていたのは見慣れぬ生き物だった。
「……??」
「***、私とリンクは校長室で話をしてくるから君はここで待っていなさい。それはコブーと言ってな、リンクが地上から連れてきてくれた動植物なんだ。ゆっくり話をして、落ち着くといい。」
先生とリンクが部屋から出て行き、ばたんと扉が閉まる。取り残された私と動植物。
「……ど、動植物…………?」
「オイラ、キュイ族のコブーっていうキュ!***っていったキュ?***お姉ちゃんはあわて者だキュね!」
「……??」
さっきから私の脳内にはハテナが大量発生。何?キュイ族?キュイ族って何??ミーちゃんとはまた違うの?何でこんなよくわからない初対面の生き物にあわて者って言われてるの私は。
そもそも何で言葉を話すんだコレ。
「あの緑のお兄ちゃんは悪い奴じゃないキュ。オレを魔物が襲ってこないこんな安全な所に連れてきてくれたんだキュ。それなのにお兄ちゃんがまるで危険な魔物みたいに逃げるだなんて、オイラよりもあわて者だキュ~!」
「…………お、」
「キュ?」
「お前に何がわかるーーーーー!?」
「キュ~~ッ!?」
「アイツは魔物よ!ケダモノよ!!何も知らない癖に!生態がまるで違う君にはわからないでしょうねこの苦しみは!!」
持ち上げてガクガクと揺さぶると、急に腕からすっぽ抜けて、背中のこぶから草を生やしてうつ伏せになってしまった。ぶるぶる震えているのがよくわかる。
「あああごめんなさいごめんなさい!君に当たっても仕方がないよね本当にごめん!」
「キュ、キュキュ~~…………ッ」
うう、私ってば本当に馬鹿…………一度きちんと落ち着かないと。すー、はー、すー、はー、と深呼吸。
「コブー、本当にごめんなさい。もう君には怒らないから、どうか私を許してちょうだい……。」
お願い、と両手を合わせるとコブーは起き上がり、顔を向けてくれた。
「もう!びっくりさせないでキュ!」
「ううっ…………でもね、今回のことは本当にリンクが悪いのよ。私達くらいの年齢になって、恋人でもないのに夜に異性の部屋に訪れるなんて、非常識なことなの。」
わかってくれるかなぁ、と目の前の人間ではない種族に不安の眼差しを向けると、衝撃の発言が飛び出してきた。
「え?緑のお兄ちゃんと***お姉ちゃんは恋人じゃなかったんだキュ??」
ピシッ!
思考も表情も体中の筋肉も、一瞬で石のように固まった。しばらくの沈黙を置いて、わなわなと怒りで体が震える。
「…………誰に吹き込まれたの…。」
「え?え?大地で会った時にいつも***、***、***って話してたからオレはてっきりそうなのかと思ってたキュ……。」
“オレ、もしかして言っちゃいけないこと言っちゃったキュ?”と焦るコブーを見ると、かえって自分が落ち着きを取り戻せる。
………………いや、正直取り戻せそうにないわ……。
何、リンクが好きなのって探しに行ってるゼルダじゃないの?
...What!?
「***……リンクと一応話してきたんだが………………リンクは手強いぞ……。」
「え?一応ってどういうことですか?手強い?」
「あのなリンク、夜更けに異性の部屋を訪ねるなんて非常識だぞ。」
「だって僕、***が好きなんです!!」
「***は困ってたぞ、好きならちゃんと相手の気持ちを思いやらないと、」
「先生は好きな子に想われたいとか、少しでも長く側に居たいとか、そういう思いをしたことがないんですか!?」
「…………。」
「って。まさに盲目だなあれは。」
「いやいやいやいや先生は何勢いに押されてるんですか!お願いですから、もうちょっと私の為に頑張ってくださいよ!」
「あ、あ、アウール先生っ!!何でそれ***に言っちゃうんですかっ!?僕、まだ伝えるには心の準備がっ!!」
「何で……!?何でそこに心の準備が必要なの!?順序がおかしいから!!昨日の言動の方がもっと心の準備が必要だったでしょ、いろいろすっ飛ばしてる!もう本当に嫌……!!」
「***お姉ちゃん大変そうキュ~~…………。」
「何はともあれ、健全なお付き合いをするんだぞ。」
「付き合いませんよ。絶対に。」
***
夢主ちゃんを好きになってしまい、押しがぐいぐい強い癖にどっかズレてるリンク君と、怒るとまれに酷い発言をする夢主ちゃん。リンクは外出時に鍵をかけない癖に、鍵はちゃんと持っていたのです。
久しぶりに、純粋に思うがまま楽しく書けた作品でした。読んでくださった皆様には楽しんでいただけただしょうか……。
「今度見かけたら絶対その眉毛剃り落としてやっからな!!」「私の日記は学級日誌じゃねーんだぞ!!」
↑この2つの台詞が一番書きたかったんです(笑)
「ッ、キェアァァァァァァァァァァ!!」は、リンクお馴染みの掛け声をちょっとだけ意識しました。おっ?と思った方は勘が良いですね。
今日の学校の帰りの電車の中で思いつき、一気にバーっと書き上げました。やはり思いついた時に書き上げた方が、溜め込まずに最後までテンポよく書けます。おかげでやる予定だった課題を進めずに今日が終わります。(皆さんはこんな学生になってはいけませんよ!)
実はざっくりでもこんなシーンが書きたいなというものから、ある程度書いたものの書きかけで未完成のネタが下手したら30個以上あるかもしれないのです。詳しい数は数えるのをやめました。……ちゃんと最後まで書こうね…………私……。
16.11.31
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