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「アイナ、急なお願いだったのにありがとう」
「いいの、いいの!素敵じゃない、手作りのお菓子をプレゼントするなんて」
レシピ本と材料が並ぶキッチンに立ち、家主である彼女にお礼を言うと愛らしい笑顔が咲いた。明日のバレンタインデーに向けてお菓子を作りたいけど、私が住んでいるアパートにはオーブンが無い。そこで今日はアイナのお家にお邪魔している。
「あっ、でもね!リオには内緒にしておいてほしいの」
「何で?」
「だって、もし美味しく作れなかった時、期待外れな気持ちにさせたくない……」
「えぇ~?***がリオのために作った~ってだけで、喜ぶと思うよ?」
「そうかなぁ……」
「そうだよ。自信持って!」
その言葉が私の背中を押す。応援してくれる彼女に応えるためにも頑張りたい。並んだ材料を手に取って、お菓子作りの時間が始まった。
「花屋?」
「そうだ、***にプレゼントしたいんだが……良い店知ってるか?」
「あぁ、もうバレンタインだもんな!オレが行くトコで良いなら連れてってやるよ」
「ありがとう、助かる」
今年は初めて***と過ごすバレンタインデーだ。特別な一日。保護監視中の身である僕に出来ることは限られているが、それでも何か贈って彼女を喜ばせたいと思いガロに相談した。……我ながら失礼だが、ガロが花屋を利用したことがあるなんて意外だ。仕事終わりに連れて行かれたその店は、バレンタイン一色の装いになっている。ガロが顔見知りらしい店員に、僕のことを紹介してくれた。
「いらっしゃいませ!ご希望に応じてご用意させていただきますね」
「花にあまり詳しくなくて……オススメはあるだろうか」
「お任せください。まず定番なのはバラですね!渡す本数で意味が違うので、小さな花束はもちろん大きな花束をプレゼントする方もいらっしゃいますよ」
そう言われて店内を見渡すと、確かに大量のバラがショーケースに詰まっていた。ふと、隣のケースに飾られている別の花に僕の視線が留まったことに気付いたのか、店員が説明を続ける。
「鮮やかな色でしょう?そちらはブーゲンビリアといいまして、花言葉も素敵でプレゼントにぴったりなお花です」
「花言葉……」
「ええ。お悩みでしたら、色選びのご参考にどうぞ」
花と一緒に色ごとの花言葉を書き添えたカードが飾ってあるのを見て、僕はその花を予約した。これを手にした***のことを思い浮かべて、思わず口角が上がる。二人の特別な一日になることを信じて疑わずに。
迎えたバレンタインデー当日の朝、レスキュー本部はいつもより賑わっていた。***が手作りのお菓子を皆に配ったからだ。一人ずつ丁寧にラッピングされたチョコチップクッキー。
「日頃のお礼だってさ。ほら、ちゃんと彼氏さんの分もあるぞ?」
「……」
「も~、ほんっとにありがとう***……!食べちゃうのもったいない!」
「た、食べてくれなきゃ困るよ……!」
にやにやと笑みを浮かべたレミーから、クッキーの入った袋を一つ手渡された。お礼と言うのなら理解できる。でも、何で今日なんだ。他の日だって良かっただろう。だって今日はバレンタインデーなんだぞ。ちらりと視線を***に向けると、アイナの抱擁を受け止めてはにかみ笑いを浮かべている。アイナが持つクッキーだけ、僕たちのものとは違う形をしていた。
その日の作業を終えた夕方。無事に完成したクッキーは、バーニングレスキューの皆が喜んで食べてくれた。もう一つ用意したお菓子も、きっと大丈夫な筈。ラッピングを終えてリオのところへ行こうと思ったタイミングで、偶然にも彼が私の部屋に訪れた。
「リオ!ちょうどリオのところに行こうと思ってたんだよ。どうしたの?」
「その……これを君に渡そうと思って」
後ろに隠していたリオの手が、目の前へ差し出される。ふわりと鼻を掠めた香りの正体は、鮮やかな赤とピンクの色でまとめられた花束だった。
「えっ!キレイ……!で、でも、こんなに素敵なもの私にはもったいないよ……。急にどうして?」
「……何で、そんなことを言うんだ」
あまりに突然のことに驚き、首を傾げて尋ねるとリオが眉をひそめた。いつもより小さくて不安そうな声音が、静かな部屋に吸い込まれる。
「これじゃ、僕ばかりが君のことを想ってるみたいだ」
「え、え?」
いつもと様子が違うリオに戸惑っていると縋りつくように抱き締められ、リオの手から離れた花束がばさりと音を立てて床に落ちてしまった。
「……すまない。こんなの、押しつけがましいな」
「そんなこと無い!」
「でも、嬉しくなさそうだ」
「違うよ!突然だからびっくりしちゃって……大変な時期なのに、リオの負担になってるんじゃないかって……」
「負担な訳があるか、初めてのバレンタインデーくらい、ちゃんとしたかったんだ」
「え?……バレンタインデーだから、私にプレゼントしてくれたの?」
「当たり前だろ!」
腕が離れて、今度は肩を掴まれる。
「なのに、あれは何だ?皆にまでお菓子を配って、どういうつもりだ」
「今日のクッキーのこと?」
ぱちぱちと目を瞬かせて、思考を巡らせる。……もしかしたら、私たちは勘違いをしてるのかもしれない。
「リオ、ちょっと待って。もしかして……バレンタインデーにお菓子を配るのって、こっちでは普通じゃないの?」
「は?」
「日本では好きな人の他に、友達やお世話になってる人にもお菓子を配るの。だから、あれは皆へのお礼だよ」
「……でも、アイナの分だけ特別だっただろ。ハート形だった」
よ、よく見てる……!やましいことをしてるつもりは無いのに、拗ねるリオに焦って弁明する。
「アイナにはキッチンを借してもらったから、皆よりちょっと豪華にしただけ!可愛い方が喜んでくれると思って……」
「だとしても、皆と僕の分が同じなのはおかしくないか?僕は……君と二人の特別な一日にしたかったのに」
悲しそうな表情を見て心が痛む。リオは今日のためにこの花束を用意してくれたのに、私の軽はずみな態度で傷付けてしまった。リオの背中に腕を回して、ぎゅうと抱き締め返す。
「ごめんなさい。私、こっちのバレンタインデーのことよく知らなくて……。花束を貰うなんて初めてだから嬉しい!本当だよ?それにね、リオにはガトーショコラを作ったから食べてほしいな……」
「……それは、今度こそ僕のために作ってくれたのか?」
「うん、リオにだけ。特別。……ね、さっきの花束、改めて受け取ってもいい?」
「もちろん」
拾い上げた花束の崩れを整えてから、もう一度手渡される。
「僕なりに気持ちを込めて選んだんだ」
「うん……ありがとう!私もリオのこと、大好きだよ。……この色、私たちが使ってた炎と似てるね」
懐かしくて恋しいあの色を眺めながら、二人でガトーショコラを食べる。キレイで、甘くて、私たちの気持ちは同じなんだって思える幸せな時間。
「えへへ。ちゃんとキレイに飾りたいな、花瓶買わなくちゃ!」
「二人で買いに行こう」
「うん、行く!」
そうして訪れた花屋で、花と一緒に飾られたカードを読んで顔が熱くなったのは、また次の日のお話。
▲ブーゲンビリアの花言葉
赤色…「情熱」「あなたしか見えない」
ピンク色…「あなたは魅力で満ち溢れている」
「いいの、いいの!素敵じゃない、手作りのお菓子をプレゼントするなんて」
レシピ本と材料が並ぶキッチンに立ち、家主である彼女にお礼を言うと愛らしい笑顔が咲いた。明日のバレンタインデーに向けてお菓子を作りたいけど、私が住んでいるアパートにはオーブンが無い。そこで今日はアイナのお家にお邪魔している。
「あっ、でもね!リオには内緒にしておいてほしいの」
「何で?」
「だって、もし美味しく作れなかった時、期待外れな気持ちにさせたくない……」
「えぇ~?***がリオのために作った~ってだけで、喜ぶと思うよ?」
「そうかなぁ……」
「そうだよ。自信持って!」
その言葉が私の背中を押す。応援してくれる彼女に応えるためにも頑張りたい。並んだ材料を手に取って、お菓子作りの時間が始まった。
「花屋?」
「そうだ、***にプレゼントしたいんだが……良い店知ってるか?」
「あぁ、もうバレンタインだもんな!オレが行くトコで良いなら連れてってやるよ」
「ありがとう、助かる」
今年は初めて***と過ごすバレンタインデーだ。特別な一日。保護監視中の身である僕に出来ることは限られているが、それでも何か贈って彼女を喜ばせたいと思いガロに相談した。……我ながら失礼だが、ガロが花屋を利用したことがあるなんて意外だ。仕事終わりに連れて行かれたその店は、バレンタイン一色の装いになっている。ガロが顔見知りらしい店員に、僕のことを紹介してくれた。
「いらっしゃいませ!ご希望に応じてご用意させていただきますね」
「花にあまり詳しくなくて……オススメはあるだろうか」
「お任せください。まず定番なのはバラですね!渡す本数で意味が違うので、小さな花束はもちろん大きな花束をプレゼントする方もいらっしゃいますよ」
そう言われて店内を見渡すと、確かに大量のバラがショーケースに詰まっていた。ふと、隣のケースに飾られている別の花に僕の視線が留まったことに気付いたのか、店員が説明を続ける。
「鮮やかな色でしょう?そちらはブーゲンビリアといいまして、花言葉も素敵でプレゼントにぴったりなお花です」
「花言葉……」
「ええ。お悩みでしたら、色選びのご参考にどうぞ」
花と一緒に色ごとの花言葉を書き添えたカードが飾ってあるのを見て、僕はその花を予約した。これを手にした***のことを思い浮かべて、思わず口角が上がる。二人の特別な一日になることを信じて疑わずに。
迎えたバレンタインデー当日の朝、レスキュー本部はいつもより賑わっていた。***が手作りのお菓子を皆に配ったからだ。一人ずつ丁寧にラッピングされたチョコチップクッキー。
「日頃のお礼だってさ。ほら、ちゃんと彼氏さんの分もあるぞ?」
「……」
「も~、ほんっとにありがとう***……!食べちゃうのもったいない!」
「た、食べてくれなきゃ困るよ……!」
にやにやと笑みを浮かべたレミーから、クッキーの入った袋を一つ手渡された。お礼と言うのなら理解できる。でも、何で今日なんだ。他の日だって良かっただろう。だって今日はバレンタインデーなんだぞ。ちらりと視線を***に向けると、アイナの抱擁を受け止めてはにかみ笑いを浮かべている。アイナが持つクッキーだけ、僕たちのものとは違う形をしていた。
その日の作業を終えた夕方。無事に完成したクッキーは、バーニングレスキューの皆が喜んで食べてくれた。もう一つ用意したお菓子も、きっと大丈夫な筈。ラッピングを終えてリオのところへ行こうと思ったタイミングで、偶然にも彼が私の部屋に訪れた。
「リオ!ちょうどリオのところに行こうと思ってたんだよ。どうしたの?」
「その……これを君に渡そうと思って」
後ろに隠していたリオの手が、目の前へ差し出される。ふわりと鼻を掠めた香りの正体は、鮮やかな赤とピンクの色でまとめられた花束だった。
「えっ!キレイ……!で、でも、こんなに素敵なもの私にはもったいないよ……。急にどうして?」
「……何で、そんなことを言うんだ」
あまりに突然のことに驚き、首を傾げて尋ねるとリオが眉をひそめた。いつもより小さくて不安そうな声音が、静かな部屋に吸い込まれる。
「これじゃ、僕ばかりが君のことを想ってるみたいだ」
「え、え?」
いつもと様子が違うリオに戸惑っていると縋りつくように抱き締められ、リオの手から離れた花束がばさりと音を立てて床に落ちてしまった。
「……すまない。こんなの、押しつけがましいな」
「そんなこと無い!」
「でも、嬉しくなさそうだ」
「違うよ!突然だからびっくりしちゃって……大変な時期なのに、リオの負担になってるんじゃないかって……」
「負担な訳があるか、初めてのバレンタインデーくらい、ちゃんとしたかったんだ」
「え?……バレンタインデーだから、私にプレゼントしてくれたの?」
「当たり前だろ!」
腕が離れて、今度は肩を掴まれる。
「なのに、あれは何だ?皆にまでお菓子を配って、どういうつもりだ」
「今日のクッキーのこと?」
ぱちぱちと目を瞬かせて、思考を巡らせる。……もしかしたら、私たちは勘違いをしてるのかもしれない。
「リオ、ちょっと待って。もしかして……バレンタインデーにお菓子を配るのって、こっちでは普通じゃないの?」
「は?」
「日本では好きな人の他に、友達やお世話になってる人にもお菓子を配るの。だから、あれは皆へのお礼だよ」
「……でも、アイナの分だけ特別だっただろ。ハート形だった」
よ、よく見てる……!やましいことをしてるつもりは無いのに、拗ねるリオに焦って弁明する。
「アイナにはキッチンを借してもらったから、皆よりちょっと豪華にしただけ!可愛い方が喜んでくれると思って……」
「だとしても、皆と僕の分が同じなのはおかしくないか?僕は……君と二人の特別な一日にしたかったのに」
悲しそうな表情を見て心が痛む。リオは今日のためにこの花束を用意してくれたのに、私の軽はずみな態度で傷付けてしまった。リオの背中に腕を回して、ぎゅうと抱き締め返す。
「ごめんなさい。私、こっちのバレンタインデーのことよく知らなくて……。花束を貰うなんて初めてだから嬉しい!本当だよ?それにね、リオにはガトーショコラを作ったから食べてほしいな……」
「……それは、今度こそ僕のために作ってくれたのか?」
「うん、リオにだけ。特別。……ね、さっきの花束、改めて受け取ってもいい?」
「もちろん」
拾い上げた花束の崩れを整えてから、もう一度手渡される。
「僕なりに気持ちを込めて選んだんだ」
「うん……ありがとう!私もリオのこと、大好きだよ。……この色、私たちが使ってた炎と似てるね」
懐かしくて恋しいあの色を眺めながら、二人でガトーショコラを食べる。キレイで、甘くて、私たちの気持ちは同じなんだって思える幸せな時間。
「えへへ。ちゃんとキレイに飾りたいな、花瓶買わなくちゃ!」
「二人で買いに行こう」
「うん、行く!」
そうして訪れた花屋で、花と一緒に飾られたカードを読んで顔が熱くなったのは、また次の日のお話。
▲ブーゲンビリアの花言葉
赤色…「情熱」「あなたしか見えない」
ピンク色…「あなたは魅力で満ち溢れている」