『プロミス』サンプル
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ある夜、メイスは聞きたいことがあると言って僕に声をかけてきた。
「最近入ったあの子、夜な夜な一人でどこかに行ってるようで。何か知ってますか」
「一人で……? いや、何も聞いてないな」
“あの子”とは、東洋の国からやってきた、最近僕が保護した少女のことだ。そういえば、確かに今この時も姿が見えない。ただでさえ、故郷を離れて慣れない生活に戸惑っている筈なのに、単独で行動するのは珍しい。
「……何があるかわかりませんし、探しに行きますか」
「なら、僕が行こう。連れて来たのは僕だからな」
バーニッシュは財団から逃げ隠れる身だ。彼女にそのつもりが無かったとしても、発見される危険は避けなければならない。洞窟から外へ歩き出すと、荒野に鎮座する大きな岩陰の一つからバーニッシュフレアの灯りが見える。そこに、彼女はいた。……何故か、全身を地面に伏せた姿で。
「……何をしている?」
「えっ! あれっ? ど、どうしてここに?」
「最近、夜に抜け出してると聞いた。で、何をしているんだ?」
僕の声を聞いた途端、彼女の肩がびくりと震えた。起き上がって体に付いた土を払いながら、目を泳がせて話し始める。
「大したことじゃないよ。ほら、私まだ上手に炎を扱えないから、練習……?」
「わざわざ夜に抜け出してやることか? いつ、どんなきっかけでフリーズフォースに見つかるかわからないんだ。一人で動かれると、いざという時に助けられない」
「あ……そうだよね、ごめんなさい」
「わかったら、これからは周りに声をかけてくれ。……言いにくいなら、誰か君の側におくか?」
「そ、そこまでしなくて大丈夫!」
「なら、せめて何をしてるのか教えてくれ」
日本から訪れた彼女をよく知らない周りからすれば、頻繁に一人で抜け出す様を不審に思うのは自然なことだ。多くの命を守る立場として、不安の種を取り除く必要がある。
「他の人には内緒にしてくれる?」
「僕たちの身が、危険に晒されないなら」
「……笑わない?」
言いづらそうに、指と指を合わせてこちらを見上げている。僕が頷くと、小さな声で答えた。
「……リオが、空を飛べるって聞いたから」
「……は?」
「炎を使って空を飛んでるところを見た……って、他の人が話してるのを聞いたの。私も、空を飛んでみたくて……」
「それで、一人で練習してたのか?」
「うん……」
何かと思えば、予想外な話で呆気に取られた。先程情けない姿で地面に伏せていたのは、飛ぶのを失敗して転んだ訳か。理解すると同時に込み上げた笑い声を抑えようと、口に手を当てる。
「くっ……」
「だから秘密にしてたのに……!」
「すまない。そうとは思わなくて、つい」
勿論彼女がそれに気づかない筈もなく、恥ずかしそうに顔を真っ赤にして怒るから、宥めようと僕から一つの提案を持ち掛けた。
それを聞いて、こくこくと頷き「楽しみ」と笑う彼女の瞳は、期待でキラキラと輝いて見えた。
――ボスは空だって飛べちまうんだ。
その言葉を聞いて、憧れが止められなかった。誰よりも強い炎を扱うリオは、どんな風に飛ぶんだろう。鳥のように羽ばたくのだろうかと想像しては自分なりに試したけれど、ちっとも上手に出来なくて。空を飛ぶどころか宙に浮くこともままならない。地面に転んだところをリオに見つかった時は、あまりにも恥ずかしくて、咄嗟にまともな言い訳も思いつかなかった。
そしたら、いくつかの条件を元に、彼が手伝うと言ってくれた。
一つ目は、一人で飛ぼうとしないこと。
二つ目に、飛ぶのは夕暮れの時間帯にすること。私たちのバーニッシュフレアは、夜の暗がりでは灯りになってしまうから。
三つ目は、他の子供たちが聞いたら自分もやりたいと言い出しかねないという理由で、私がお願いした通りみんなには秘密にすること。
準備が整ったら、リオが声をかけてくれる約束だった。それがとても嬉しくて、流石に今日はまだ無理かな。明日は、明後日はどうだろう。きっとリオは忙しいから、一週間……いや、もっと先になるかもしれない。そんな風に待ち続ける日々でさえ、心に灯火がついたように明るい気持ちで楽しかった。
そんなある日、仲間を連れて外から戻ったリオと目が合った。結んだ口の端を上げながら指をクイと曲げる動きを見て、自分がこっそり呼ばれているのだと気がつく。待ち望んだ時が訪れたことに、喜びで声が出そうになるのをハッと抑えて、集団の中から抜け出してリオの元へ向かった。
★続きは頒布本にてお読みいただけます。→★夢小説本 通頒のご案内
「最近入ったあの子、夜な夜な一人でどこかに行ってるようで。何か知ってますか」
「一人で……? いや、何も聞いてないな」
“あの子”とは、東洋の国からやってきた、最近僕が保護した少女のことだ。そういえば、確かに今この時も姿が見えない。ただでさえ、故郷を離れて慣れない生活に戸惑っている筈なのに、単独で行動するのは珍しい。
「……何があるかわかりませんし、探しに行きますか」
「なら、僕が行こう。連れて来たのは僕だからな」
バーニッシュは財団から逃げ隠れる身だ。彼女にそのつもりが無かったとしても、発見される危険は避けなければならない。洞窟から外へ歩き出すと、荒野に鎮座する大きな岩陰の一つからバーニッシュフレアの灯りが見える。そこに、彼女はいた。……何故か、全身を地面に伏せた姿で。
「……何をしている?」
「えっ! あれっ? ど、どうしてここに?」
「最近、夜に抜け出してると聞いた。で、何をしているんだ?」
僕の声を聞いた途端、彼女の肩がびくりと震えた。起き上がって体に付いた土を払いながら、目を泳がせて話し始める。
「大したことじゃないよ。ほら、私まだ上手に炎を扱えないから、練習……?」
「わざわざ夜に抜け出してやることか? いつ、どんなきっかけでフリーズフォースに見つかるかわからないんだ。一人で動かれると、いざという時に助けられない」
「あ……そうだよね、ごめんなさい」
「わかったら、これからは周りに声をかけてくれ。……言いにくいなら、誰か君の側におくか?」
「そ、そこまでしなくて大丈夫!」
「なら、せめて何をしてるのか教えてくれ」
日本から訪れた彼女をよく知らない周りからすれば、頻繁に一人で抜け出す様を不審に思うのは自然なことだ。多くの命を守る立場として、不安の種を取り除く必要がある。
「他の人には内緒にしてくれる?」
「僕たちの身が、危険に晒されないなら」
「……笑わない?」
言いづらそうに、指と指を合わせてこちらを見上げている。僕が頷くと、小さな声で答えた。
「……リオが、空を飛べるって聞いたから」
「……は?」
「炎を使って空を飛んでるところを見た……って、他の人が話してるのを聞いたの。私も、空を飛んでみたくて……」
「それで、一人で練習してたのか?」
「うん……」
何かと思えば、予想外な話で呆気に取られた。先程情けない姿で地面に伏せていたのは、飛ぶのを失敗して転んだ訳か。理解すると同時に込み上げた笑い声を抑えようと、口に手を当てる。
「くっ……」
「だから秘密にしてたのに……!」
「すまない。そうとは思わなくて、つい」
勿論彼女がそれに気づかない筈もなく、恥ずかしそうに顔を真っ赤にして怒るから、宥めようと僕から一つの提案を持ち掛けた。
それを聞いて、こくこくと頷き「楽しみ」と笑う彼女の瞳は、期待でキラキラと輝いて見えた。
――ボスは空だって飛べちまうんだ。
その言葉を聞いて、憧れが止められなかった。誰よりも強い炎を扱うリオは、どんな風に飛ぶんだろう。鳥のように羽ばたくのだろうかと想像しては自分なりに試したけれど、ちっとも上手に出来なくて。空を飛ぶどころか宙に浮くこともままならない。地面に転んだところをリオに見つかった時は、あまりにも恥ずかしくて、咄嗟にまともな言い訳も思いつかなかった。
そしたら、いくつかの条件を元に、彼が手伝うと言ってくれた。
一つ目は、一人で飛ぼうとしないこと。
二つ目に、飛ぶのは夕暮れの時間帯にすること。私たちのバーニッシュフレアは、夜の暗がりでは灯りになってしまうから。
三つ目は、他の子供たちが聞いたら自分もやりたいと言い出しかねないという理由で、私がお願いした通りみんなには秘密にすること。
準備が整ったら、リオが声をかけてくれる約束だった。それがとても嬉しくて、流石に今日はまだ無理かな。明日は、明後日はどうだろう。きっとリオは忙しいから、一週間……いや、もっと先になるかもしれない。そんな風に待ち続ける日々でさえ、心に灯火がついたように明るい気持ちで楽しかった。
そんなある日、仲間を連れて外から戻ったリオと目が合った。結んだ口の端を上げながら指をクイと曲げる動きを見て、自分がこっそり呼ばれているのだと気がつく。待ち望んだ時が訪れたことに、喜びで声が出そうになるのをハッと抑えて、集団の中から抜け出してリオの元へ向かった。
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