アンタレスの懸想
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一度は財団に捕まり収容所へ送られた三人だったが、見事に囚われのバーニッシュを連れて帰ってきた。ゲーラとメイスが“ボスの炎は最強だ”と、まるで自分のことのように自慢げに称えているが、リオはどこか浮かない表情をしていた。
「何かあったの?」
「……おめでたい頭をした、火消しの男に会った。僕たちが炎さえ抑えられれば、普通に暮らせると本気で信じてた」
何も知らないバカだ、と眉をしかめて低い声で言う。ここへ戻る途中、一人のバーニッシュが灰になったとも聞いた。本当に、その通りに済むならどれだけ良かっただろう。私たちが炎を出さないということは、息継ぎもできず水中を泳ぎ溺れるのと同じようなものだ。リオは、プロメポリスのある方を睨みつけて呟いた。
「財団が僕たちを追う限り、抗い続けるしかない」
救出されて加わったバーニッシュを受け入れて数日後。新しい生活を始めた矢先に突如銃声が響き渡り、フリーズフォースの襲撃で拠点が崩れ落ちる。マッドバーニッシュの仲間が放った炎のおかげで瓦礫に押しつぶられることは無かったが、周りを見渡すとリオの体に氷を撃ち込まれるのが見えた。銃声音を聞くのと同時に、為す術もなく全身が氷に閉じ込められた。
ゲーラとメイスの決死の覚悟でフェンネル火山の火口へ飛ばされたリオを覆う氷を、マグマからいくつもの火炎が伸びあがり溶かし続ける。氷の中で、彼女と出会った日のことがリオの脳裏に浮かんだ。騙されて、人生を奪われ、声も出せずに独りで泣いていた。小さな声で消えたくないと叫んでいたのは、彼女の心臓で輝く炎だった。強い怒りで目を覚ます。炎をまとった右手で胸に撃ち込まれた凍結弾を引き抜き、粉々に握りつぶした。どれだけ抵抗しても、耐え続けても、ヤツらは無慈悲に僕たちの炎を消そうとする!
「……許さん。許さんぞ、クレイ・フォーサイト!」
プロメポリス中を火炎龍の体で這いずり回り、際限なく炎を広げた。向かってくる目障りなフリーズフォースの男へ右手を伸ばすが、間をすり抜けて向かってくる。力強く瞼を瞑り、捉えた男の体を振り払う。再度、瞼の裏で泣きじゃくる彼女の姿が浮かんだ。
「クレイ・フォーサイト──!」
忌々しい男の姿を見つけ、これまでの怒り全てを叩きつけようとした瞬間、高速で何かが突撃してきた衝撃に火炎龍の体が大きくうねる。大量の消火剤を撃ち込まれて火炎の勢いが弱まり、身体を拘束されたまま飛行するジェット機の中に押し込まれた。
「また貴様か、ガロ・ティモス!」
出会った時と同じ装備を纏い、邪魔をする火消しの男に殴りかかる。
「無闇には殺さねぇバーニッシュの誇りっていうのが、あるんじゃねえのか!」
その言葉にハッとして、掲げた拳が止まる。と、ジェット機の床が開き放り出された先には凍った湖。厚い氷が炎で蒸発する中、思い出した。
──人殺しを正当化したら、私たちは本当に人間じゃなくなっちゃう。
──私、リオの手が好きだな。
僕は、この手で何をしようとした?人を救う手だと彼女が言った、無事を祈り、優しい炎で包んでくれたこの手で、何を。怒りが静まり冷静になった頃、突如現れた男の声に導かれると、僕たちの操る炎……プロメアの真実と、クレイを止めなければバーニッシュの命は奪われ地球が崩壊することを伝えられた。ガロと共に、デウス・X・マキナに乗り込み再びプロメポリスへと向かった。絶対に仲間を助け出してみせると、心に誓って。
氷から解放されてぼんやりと意識が戻る。そうだ、確か私は隠れ里で氷漬けにされて捕らわれてしまった。四肢を拘束されて身動きが取れない。目を動かすと三角形の大きな窓越しに、自分と同じように拘束された仲間が大量にいるのが見えた。やがて身体が横向きに高速回転を始め、体中から強制的に炎が奪われていく苦痛と仲間のつんざくような悲鳴に覆われた。永遠にも思える苦痛の中、突如大きな衝撃と音が周囲に響き渡り回転が止まる。感覚が麻痺してぼやける視界の先に、誰かの姿が揺らめいている。やがて、リオの声が響き渡った。
「バーニッシュのみんなも力を貸してくれ。僕たちの炎が、この星を燃やし尽くす!」
リオの言葉に、ゲーラやメイス、ほかの仲間が応えるのと一緒に、私も全力で炎を全身から出した。青白い炎の眩い光が周囲を覆いつくす。何度も叩きつけるように大きな振動が響くが、ちっとも怖くない。
ねえ、リオ。私の炎は、少しでも貴方の力になれたかな?
壊れてしまったのか、動かなくなった拘束具から抜け出す。あれだけ炎を奪われた上に全力で燃やし尽くしたのに、不思議と清々しい気分だ。
「行こうぜ、ボスのところへ!」
「うん!」
仲間のみんなの手を取って航行船の甲板へ出ると、変わり果てたプロメポリスの街並みを朝陽が照らしている。目を凝らして見渡せば、初めて見る人たちの中にリオの姿を見つけた。
「リオ……」
ああ、無事だった。全身の力が抜けてその場にへたり込むと、リオがこちらに気が付いて駆け寄ってくる。
「***!」
「良かった、無事で、本当に良かった……!」
「大丈夫、僕は平気だ。ちゃんとここにいる」
片膝をつきながら手を握られて、涙がぼろぼろと溢れてきた。リオは憑き物が落ちたような表情でふっと笑い、子供をあやすような柔らかい声で言われる。
「すまない、いつも君を泣かせてばかりだ」
初めて会った時だって、今だって、私が泣いたのは貴方の体温があたたかくて嬉しいのが理由だということを、きっとリオは知らない。
「何かあったの?」
「……おめでたい頭をした、火消しの男に会った。僕たちが炎さえ抑えられれば、普通に暮らせると本気で信じてた」
何も知らないバカだ、と眉をしかめて低い声で言う。ここへ戻る途中、一人のバーニッシュが灰になったとも聞いた。本当に、その通りに済むならどれだけ良かっただろう。私たちが炎を出さないということは、息継ぎもできず水中を泳ぎ溺れるのと同じようなものだ。リオは、プロメポリスのある方を睨みつけて呟いた。
「財団が僕たちを追う限り、抗い続けるしかない」
救出されて加わったバーニッシュを受け入れて数日後。新しい生活を始めた矢先に突如銃声が響き渡り、フリーズフォースの襲撃で拠点が崩れ落ちる。マッドバーニッシュの仲間が放った炎のおかげで瓦礫に押しつぶられることは無かったが、周りを見渡すとリオの体に氷を撃ち込まれるのが見えた。銃声音を聞くのと同時に、為す術もなく全身が氷に閉じ込められた。
ゲーラとメイスの決死の覚悟でフェンネル火山の火口へ飛ばされたリオを覆う氷を、マグマからいくつもの火炎が伸びあがり溶かし続ける。氷の中で、彼女と出会った日のことがリオの脳裏に浮かんだ。騙されて、人生を奪われ、声も出せずに独りで泣いていた。小さな声で消えたくないと叫んでいたのは、彼女の心臓で輝く炎だった。強い怒りで目を覚ます。炎をまとった右手で胸に撃ち込まれた凍結弾を引き抜き、粉々に握りつぶした。どれだけ抵抗しても、耐え続けても、ヤツらは無慈悲に僕たちの炎を消そうとする!
「……許さん。許さんぞ、クレイ・フォーサイト!」
プロメポリス中を火炎龍の体で這いずり回り、際限なく炎を広げた。向かってくる目障りなフリーズフォースの男へ右手を伸ばすが、間をすり抜けて向かってくる。力強く瞼を瞑り、捉えた男の体を振り払う。再度、瞼の裏で泣きじゃくる彼女の姿が浮かんだ。
「クレイ・フォーサイト──!」
忌々しい男の姿を見つけ、これまでの怒り全てを叩きつけようとした瞬間、高速で何かが突撃してきた衝撃に火炎龍の体が大きくうねる。大量の消火剤を撃ち込まれて火炎の勢いが弱まり、身体を拘束されたまま飛行するジェット機の中に押し込まれた。
「また貴様か、ガロ・ティモス!」
出会った時と同じ装備を纏い、邪魔をする火消しの男に殴りかかる。
「無闇には殺さねぇバーニッシュの誇りっていうのが、あるんじゃねえのか!」
その言葉にハッとして、掲げた拳が止まる。と、ジェット機の床が開き放り出された先には凍った湖。厚い氷が炎で蒸発する中、思い出した。
──人殺しを正当化したら、私たちは本当に人間じゃなくなっちゃう。
──私、リオの手が好きだな。
僕は、この手で何をしようとした?人を救う手だと彼女が言った、無事を祈り、優しい炎で包んでくれたこの手で、何を。怒りが静まり冷静になった頃、突如現れた男の声に導かれると、僕たちの操る炎……プロメアの真実と、クレイを止めなければバーニッシュの命は奪われ地球が崩壊することを伝えられた。ガロと共に、デウス・X・マキナに乗り込み再びプロメポリスへと向かった。絶対に仲間を助け出してみせると、心に誓って。
氷から解放されてぼんやりと意識が戻る。そうだ、確か私は隠れ里で氷漬けにされて捕らわれてしまった。四肢を拘束されて身動きが取れない。目を動かすと三角形の大きな窓越しに、自分と同じように拘束された仲間が大量にいるのが見えた。やがて身体が横向きに高速回転を始め、体中から強制的に炎が奪われていく苦痛と仲間のつんざくような悲鳴に覆われた。永遠にも思える苦痛の中、突如大きな衝撃と音が周囲に響き渡り回転が止まる。感覚が麻痺してぼやける視界の先に、誰かの姿が揺らめいている。やがて、リオの声が響き渡った。
「バーニッシュのみんなも力を貸してくれ。僕たちの炎が、この星を燃やし尽くす!」
リオの言葉に、ゲーラやメイス、ほかの仲間が応えるのと一緒に、私も全力で炎を全身から出した。青白い炎の眩い光が周囲を覆いつくす。何度も叩きつけるように大きな振動が響くが、ちっとも怖くない。
ねえ、リオ。私の炎は、少しでも貴方の力になれたかな?
壊れてしまったのか、動かなくなった拘束具から抜け出す。あれだけ炎を奪われた上に全力で燃やし尽くしたのに、不思議と清々しい気分だ。
「行こうぜ、ボスのところへ!」
「うん!」
仲間のみんなの手を取って航行船の甲板へ出ると、変わり果てたプロメポリスの街並みを朝陽が照らしている。目を凝らして見渡せば、初めて見る人たちの中にリオの姿を見つけた。
「リオ……」
ああ、無事だった。全身の力が抜けてその場にへたり込むと、リオがこちらに気が付いて駆け寄ってくる。
「***!」
「良かった、無事で、本当に良かった……!」
「大丈夫、僕は平気だ。ちゃんとここにいる」
片膝をつきながら手を握られて、涙がぼろぼろと溢れてきた。リオは憑き物が落ちたような表情でふっと笑い、子供をあやすような柔らかい声で言われる。
「すまない、いつも君を泣かせてばかりだ」
初めて会った時だって、今だって、私が泣いたのは貴方の体温があたたかくて嬉しいのが理由だということを、きっとリオは知らない。
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