狐の嫁入り!
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夏休みに入り、お盆も近い頃にお母さんが私とリンクに言った。
「お父さんの親戚のお葬式が出来ちゃって、しばらく帰ってこれないの……。リンク、ちょうどいい時期だし今年は***と一緒に行っておいで。泊まらせてもらえるようにお母さんからお願いしておくから」
「……泊まる?どこに?」
「リンクがうちに来る前まで、暮らしてた村よ」
そういう訳で、私は初めてリンクの故郷に訪れた。電車を乗り継いで、林を歩き、昔ながらの田舎の風景溢れる村に。
「おぉ、リンク。元気にしとったか」
ある家に着くと、ふくよかな体型と可愛らしいヒゲが特徴の男性が私達を出迎えた。村長のボゥさんというらしい。
「君は***ちゃんか!大きくなったのぅ、最後に会った時はこんなに小さかったからなぁ…………いやはや時が経つのは早い」
「あ、えと、お世話になります!」
私が頭を下げて挨拶している間に、慣れているらしいリンクはそそくさと荷物を抱えて奥へ行く。え、遠慮が無いなぁ……。
「うちにも同じ年頃の娘がいるんじゃが、今はちょうど出かけておってな。帰って来たら仲良くしてくれ」
「はい、ぜひ!」
「イリア出かけてんの?」
「確か畑の様子を見に行くって行ってたぞ、最近動物に荒らされやすいからな……」
「ふーん…………墓参り行って来る。***、行くぞ」
「うん」
イリアちゃん。リンクの口から友達の名前が出るのを、久しぶりに聞いた気がする。どんな子だろう、気の合う子だといいな。そう考えながらリンクに遅れないように急いで靴を履き、着いて行った。
夏の墓場。雲ひとつない青空だった。日差しが肌をじわりじわりと照りつける中、砂利を踏みながら暮石の間を歩いていく。
「ここ」
着いた先は、
「俺の親の墓」
リンクの本当の両親のお墓だった。
この時、私は今更思い知らされた。ああ、私達って本当は兄弟じゃなかったんだなと。私には私の両親がいて、リンクにはリンクの両親がいたんだ。たったそれだけの当たり前の事実だったのに、何故か私にとっては大きな出来事のように思えた。
「……あ、水忘れてたわ」
「じゃあ私、汲んでくるね」
「場所わかんの?」
「大丈夫、あそこでしょ。見えるところじゃない」
心配性だなぁなんて笑いながら背を向けて歩いた。桶に水を溜める間も、それを見つめながら私は先ほど気付いた事実を受け入れようと気持ちを整理していた。すっかり家族として慣れ親しんだ彼が、実際は赤の他人なのだ。ただただ不思議な感覚だった。
ぼうっとしている間に、桶から水が溢れ出していた。
水を運んでリンクの元へ向かうと、リンクが一人で話してる声が聞こえた。
「お母さんお父さん、あなたが捨てた子供は今も元気にやっていますよ」
その言葉が聞こえて固まってしまった。今、何て言った?
捨てた?
水の重みでよろけると、砂利を踏む音が鳴った。急いで何も聞いていないように取り繕う。
「お待たせーリンク!私もご挨拶しなきゃ。リンクのお姉ちゃんですよって」
「え、俺弟?逆だろ」
「えー?そうかなぁ」
いつも通りのフリをして、墓石に向かって手を合わせた。
一つ誤算だったことがある。行き帰りが結構なでこぼこ道であることだった。私の親戚の墓場は、周辺地域も比較的道が整備されたところだった。けれど今回は田舎の為か夏の為か、草は伸びゴロゴロと落ちている岩が多く、でこぼことした道となっていた。
「ぅわっ!!」
案の定転んだ。しかも足を捻った。
「あーあ、やっぱ俺がいなきゃ駄目だな、***は」
「…………そんなこと無いもん。お墓までこんなでこぼこ道を歩くと思わなかったから……」
「ハイハイ」
結局はリンクにおんぶされて帰る。本当に、こんな道歩くと分かってたらサンダルじゃなくてスニーカー履いてきたのに。
サクサク、木漏れ日の中を二人で行く。リンクの背中ってこんなに大きかったっけと揺られながら思う。小さい頃はこう、ふざけて乗ったらあっさりと崩れちゃったのに。今はしっかりと支えてくれてる。
大きくなったんだなぁって大人が言うようなことを心の中で思った。
やがてある場所でリンクの足が止まって背から降ろされた。目の前にあるのはボロボロに焼け落ちた古い家のようだ。
「ここ、俺が住んでたとこ」
「え…………」
「火事で燃えたんだよな。あっという間に、簡単に」
私は何も言えずに、横目でリンクの様子を伺う。リンクはじっと焼けた家を見つめていた。こんな時、なんと声をかけるべきなのだろう。
「……リンク、寂しい?」
「別に。今は父さんも母さんも***もいるから」
「ほんとに?」
「うん」
「…………私……リンクのこと何も知らないや
。リンクが何を経験してきたか、どんなこと考えて過ごしてるか、何にもわかってなかったね」
「全部分かってたら怖いけどな。それに俺だって***の知らないところ沢山あるだろ、多分。……なんか不安?」
「不安……?」
不安?私は不安に感じてるの?どうして?
「なんか…………リンクが……っ!?」
背中に何かがぶつかった衝撃でよろけると、リンクが受け止めてくれた。結構な速度でぶつかったのかじんじん痛む。
後ろを見ると、ボールが転がっていた。
「すっげー音したぞ、大丈夫か」
「わ、わかんな……ケホッ」
「…………痣、出来てる。しかもでかい」
「ぇ、本当に…………?って言うか服っ!?大丈夫だからめくらないで!戻して!!下着見えちゃう!!」
キャミソールの裾をめくって私の背中を見ているリンクに気付いて、慌てて服を直す。何考えてるのこの子!
噎せていると二人の男の子達が駆け寄ってきた。
どうやら男の子が投げたボールが直撃したらしい。
「強がって症状の報告を怠るのは悪化を後押しする、正直になった方がいい」
麻呂眉が特徴の幼い男の子が、見た目とは裏腹の正論を述べる。待って待って何この子。
「な、なんだよ、鈍臭いのが悪いんだろ」
その子のお兄ちゃんと思われる、いかにもわんぱくそうな男の子が言う。動揺しているあたり、わざとでないことは伝わってきた。なかなか素直に謝れないんだなぁと思っていたら、リンクはその男の子の頭にごつんとげんこつをした。
「……他に言うことあんだろ」
「ひっ!」
腹を立ててるリンクの形相に怯える男の子、ああそんな本気にならなくても……!私が慌てていると少女の声がした。
「タロ!」
毛先が丸まった銀髪のショートヘアーの子だ。年は私とあまり変わらないように見える。
「もう!悪いことしたら謝らなくちゃいけないでしょ!!」
「ご、ごめんよイリア姉ちゃん……」
「それを言うのは私じゃないでしょ!」
「そ、そうだ…………姉ちゃん……ゴメン……ナサイ」
イリアちゃんに言われてタロ君が謝る。この子がイリアちゃんかぁ。いいよいいよ、となだめるとタロ君はほっとしていたものの、リンクは仏頂面だった。
……どっちが子供なんだろう。
無知は怖いのです。
(リンクがどこか遠くへ行ってしまいそうだと思った)
***
半年ぶりの更新。やっとこさトアル村のみんなを登場させられました。今まで書きたいシーンばっかり書いてたから進展無かったけど、これからは少し変わる…………筈?
17.07.03
「お父さんの親戚のお葬式が出来ちゃって、しばらく帰ってこれないの……。リンク、ちょうどいい時期だし今年は***と一緒に行っておいで。泊まらせてもらえるようにお母さんからお願いしておくから」
「……泊まる?どこに?」
「リンクがうちに来る前まで、暮らしてた村よ」
そういう訳で、私は初めてリンクの故郷に訪れた。電車を乗り継いで、林を歩き、昔ながらの田舎の風景溢れる村に。
「おぉ、リンク。元気にしとったか」
ある家に着くと、ふくよかな体型と可愛らしいヒゲが特徴の男性が私達を出迎えた。村長のボゥさんというらしい。
「君は***ちゃんか!大きくなったのぅ、最後に会った時はこんなに小さかったからなぁ…………いやはや時が経つのは早い」
「あ、えと、お世話になります!」
私が頭を下げて挨拶している間に、慣れているらしいリンクはそそくさと荷物を抱えて奥へ行く。え、遠慮が無いなぁ……。
「うちにも同じ年頃の娘がいるんじゃが、今はちょうど出かけておってな。帰って来たら仲良くしてくれ」
「はい、ぜひ!」
「イリア出かけてんの?」
「確か畑の様子を見に行くって行ってたぞ、最近動物に荒らされやすいからな……」
「ふーん…………墓参り行って来る。***、行くぞ」
「うん」
イリアちゃん。リンクの口から友達の名前が出るのを、久しぶりに聞いた気がする。どんな子だろう、気の合う子だといいな。そう考えながらリンクに遅れないように急いで靴を履き、着いて行った。
夏の墓場。雲ひとつない青空だった。日差しが肌をじわりじわりと照りつける中、砂利を踏みながら暮石の間を歩いていく。
「ここ」
着いた先は、
「俺の親の墓」
リンクの本当の両親のお墓だった。
この時、私は今更思い知らされた。ああ、私達って本当は兄弟じゃなかったんだなと。私には私の両親がいて、リンクにはリンクの両親がいたんだ。たったそれだけの当たり前の事実だったのに、何故か私にとっては大きな出来事のように思えた。
「……あ、水忘れてたわ」
「じゃあ私、汲んでくるね」
「場所わかんの?」
「大丈夫、あそこでしょ。見えるところじゃない」
心配性だなぁなんて笑いながら背を向けて歩いた。桶に水を溜める間も、それを見つめながら私は先ほど気付いた事実を受け入れようと気持ちを整理していた。すっかり家族として慣れ親しんだ彼が、実際は赤の他人なのだ。ただただ不思議な感覚だった。
ぼうっとしている間に、桶から水が溢れ出していた。
水を運んでリンクの元へ向かうと、リンクが一人で話してる声が聞こえた。
「お母さんお父さん、あなたが捨てた子供は今も元気にやっていますよ」
その言葉が聞こえて固まってしまった。今、何て言った?
捨てた?
水の重みでよろけると、砂利を踏む音が鳴った。急いで何も聞いていないように取り繕う。
「お待たせーリンク!私もご挨拶しなきゃ。リンクのお姉ちゃんですよって」
「え、俺弟?逆だろ」
「えー?そうかなぁ」
いつも通りのフリをして、墓石に向かって手を合わせた。
一つ誤算だったことがある。行き帰りが結構なでこぼこ道であることだった。私の親戚の墓場は、周辺地域も比較的道が整備されたところだった。けれど今回は田舎の為か夏の為か、草は伸びゴロゴロと落ちている岩が多く、でこぼことした道となっていた。
「ぅわっ!!」
案の定転んだ。しかも足を捻った。
「あーあ、やっぱ俺がいなきゃ駄目だな、***は」
「…………そんなこと無いもん。お墓までこんなでこぼこ道を歩くと思わなかったから……」
「ハイハイ」
結局はリンクにおんぶされて帰る。本当に、こんな道歩くと分かってたらサンダルじゃなくてスニーカー履いてきたのに。
サクサク、木漏れ日の中を二人で行く。リンクの背中ってこんなに大きかったっけと揺られながら思う。小さい頃はこう、ふざけて乗ったらあっさりと崩れちゃったのに。今はしっかりと支えてくれてる。
大きくなったんだなぁって大人が言うようなことを心の中で思った。
やがてある場所でリンクの足が止まって背から降ろされた。目の前にあるのはボロボロに焼け落ちた古い家のようだ。
「ここ、俺が住んでたとこ」
「え…………」
「火事で燃えたんだよな。あっという間に、簡単に」
私は何も言えずに、横目でリンクの様子を伺う。リンクはじっと焼けた家を見つめていた。こんな時、なんと声をかけるべきなのだろう。
「……リンク、寂しい?」
「別に。今は父さんも母さんも***もいるから」
「ほんとに?」
「うん」
「…………私……リンクのこと何も知らないや
。リンクが何を経験してきたか、どんなこと考えて過ごしてるか、何にもわかってなかったね」
「全部分かってたら怖いけどな。それに俺だって***の知らないところ沢山あるだろ、多分。……なんか不安?」
「不安……?」
不安?私は不安に感じてるの?どうして?
「なんか…………リンクが……っ!?」
背中に何かがぶつかった衝撃でよろけると、リンクが受け止めてくれた。結構な速度でぶつかったのかじんじん痛む。
後ろを見ると、ボールが転がっていた。
「すっげー音したぞ、大丈夫か」
「わ、わかんな……ケホッ」
「…………痣、出来てる。しかもでかい」
「ぇ、本当に…………?って言うか服っ!?大丈夫だからめくらないで!戻して!!下着見えちゃう!!」
キャミソールの裾をめくって私の背中を見ているリンクに気付いて、慌てて服を直す。何考えてるのこの子!
噎せていると二人の男の子達が駆け寄ってきた。
どうやら男の子が投げたボールが直撃したらしい。
「強がって症状の報告を怠るのは悪化を後押しする、正直になった方がいい」
麻呂眉が特徴の幼い男の子が、見た目とは裏腹の正論を述べる。待って待って何この子。
「な、なんだよ、鈍臭いのが悪いんだろ」
その子のお兄ちゃんと思われる、いかにもわんぱくそうな男の子が言う。動揺しているあたり、わざとでないことは伝わってきた。なかなか素直に謝れないんだなぁと思っていたら、リンクはその男の子の頭にごつんとげんこつをした。
「……他に言うことあんだろ」
「ひっ!」
腹を立ててるリンクの形相に怯える男の子、ああそんな本気にならなくても……!私が慌てていると少女の声がした。
「タロ!」
毛先が丸まった銀髪のショートヘアーの子だ。年は私とあまり変わらないように見える。
「もう!悪いことしたら謝らなくちゃいけないでしょ!!」
「ご、ごめんよイリア姉ちゃん……」
「それを言うのは私じゃないでしょ!」
「そ、そうだ…………姉ちゃん……ゴメン……ナサイ」
イリアちゃんに言われてタロ君が謝る。この子がイリアちゃんかぁ。いいよいいよ、となだめるとタロ君はほっとしていたものの、リンクは仏頂面だった。
……どっちが子供なんだろう。
無知は怖いのです。
(リンクがどこか遠くへ行ってしまいそうだと思った)
***
半年ぶりの更新。やっとこさトアル村のみんなを登場させられました。今まで書きたいシーンばっかり書いてたから進展無かったけど、これからは少し変わる…………筈?
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