狐の嫁入り!
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「さーて!やるぞーー!!」
部屋に入った途端に両腕を上げて意気込むムツミは、テーブルの上に散らかった物をバサバサと片付け始めた。
「ここでやることわかってたんなら、前もって片付けておけよ。」
「あは、ごめーん。今朝出るの遅くなりそうで、バタバタしたんだよね~。」
悪態をつくリンクに、ムツミはへらっと笑い返しながら手を動かす。片付いたテーブルに筆記用具を置くと、さあ何から始めるかと話し合う。
「***どの科目やばい?」
「……数学と英語、かなぁ。」
「あ、あたしも英語やばい。古典と現代文はイケるんだけどな~。リンクは?」
「何がやばいのかわかってない。」
「それマジでやばいやつじゃん。」
「は、お前と一緒にすんなよ。」
「クッソむかつく!!」
ギリギリと歯軋りをしながら右手に拳を作るムツミを見て、これはスルーしないと先に進まないな、と思って話を進める。
「じゃあ英語からやろうよ。リンクって確か英語出来たもんね、わかんないとこ教えて?」
「ん。範囲どこ?」
「52ページから…………えっと、授業でやらなかったページもあるからここは飛ばして……。」
ついでに今回の試験範囲を全科目確認したら、リンクもムツミも範囲をきちんと把握していなかった。……今日集まらなかったら、この二人どうしてたんだろう。
授業中わからなかったところやよく聞けなかったところをお互いに確認しながら勉強を進めていくと、途中でリンクが席を外した。
「なぁ、トイレどこだっけ?」
「そこ出て、右行った突き当たりだよー。」
一人が一時的にでも抜けたことで集中力が切れた私は、ムツミの持ってるCDを見ながら、今日感じた違和感を思い出して問いかけた。
「ねぇ。そういえばさ、3人でカラオケ行ったことないよね~。」
「そっ!そうだね!?」
「……何か隠してるでしょ?」
「全然!?」
「声裏返ってるし……。」
「うう…………バレたか。ぜ……ったい、誰にも言わない?リンクにも。」
「うん、いいよ。言わない。」
恐る恐るといった様子でムツミが話し始めたのは、以前に部活友達とカラオケに行った際に、トイレから戻ろうとして部屋を入り間違えた時の話だった。
「ただいま~!まだ私の番来てな、」
「こおおおおおおおおおの声が聞こえええええまああすかああああああああああああああああああああああああああ」
「…………すんません、部屋間違えました。」
「ってことがあって……。」
「え?何それ、わざわざ隠すことじゃあないんじゃないの?」
「いやそれが……プライドってやつなのか、よっぽど聴かれたくなかったみたいで、聴いたこと絶対誰にも言うなって脅されてさ……。」
ムツミが顔を両手で覆いながら話している様子から、その時のリンクの剣幕が私の想像できる以上のものだったことを思わせられる。
「マジ……片手で肩の骨折られるかと思った…………アイツガチで怒るとめっちゃ怖い……。」
「そ、そんなに!?リンク筋トレが趣味みたいなところあるから、力は強いとは思ってたけどそこまでとは思ってなかった……私も気をつけよ……。」
「***は絶対的に安全が保証されてるじゃん。」
「どういうこと?」
「だって、……っどぁぁぁっしゃーーーー全然英語わっかんないなーー!!もう無理だなーこれー!補習決定かなーーーー!?」
「うぎゃぁ!?」
突然叫んだムツミにびっくりするのとほぼ同時に、腕を引かれてベッドへ引きずり込まれた。
リンクが部屋に戻ってきたから、慌ててその場を取り繕おうとしたのだろう。じゃれ付いてくるムツミに私も合わせつつ、ばたばたと暴れる。
「ちょ、ちょっと~!ムツミってば、だからってそんな投げやりにならなくても!」
「もう集中力切れたし遊ぼうよ~~!ね?ね?息抜きも必要でしょ!」
「あは、あはは!!やめ、くすぐったいから!!私まで巻き込まないで……っ!」
くすぐられて身をよじりながら抜け出そうとしていたら、リンクの低い声が聞こえてまるで呪いのように二人共ピタリと動きが止まる。
「………………帰っていいか?」
私も久しぶりに聞くほど、それはそれはドスの利いた低い声で。思わず即座に正座して勉強を再開した。
「で、さっきの日本語に訳す問題は解けたのかよ。」
「ウィッス。い、一応解いたッス……。はいこれ…………。」
リンクがムツミのノートを見ると、一言呟いた。
「お前これ、音読してみろよ?」
「…………“私は、鳩の餌を見たことがありません”?」
「何かおかしいって思わねーのかよ!」
「ぷ、ぁっはっは!!何それーー!?ムツミ、鳩の餌見たこと無いのー!?公園でよくパン屑とか撒いてる人いるでしょ!」
「私は見たことあるわい!!けどそういう風にしか訳せなかったんだよ!クソッ!!」
ばしん、とノートを床に叩きつけて悔しがる彼女の次は私の番で。人のことを言えなかったことに気が付いて、顔が固まる。
「***は?そっちの文章訳せた?」
「…………それが……。」
「……読みあげてみて。」
「………………“私の右手は、どこにありますか”……?」
「……こわっ…………え?」
リンクとムツミが、シンクロしてしばらく“え?”しか言わなくなるほど、私の和訳は壊滅的だった。
勉強しましょう。
(試験まであと2週間!)(大丈夫かなぁ……。)
***
おかしい日本語訳は、私が中高生だった時に訳したものそのまんまです(本当)。正しくは「鳩は地下鉄を通って餌を探しに行きます。」と、「私の右手には何がありますか?」でした。
17.1.27
部屋に入った途端に両腕を上げて意気込むムツミは、テーブルの上に散らかった物をバサバサと片付け始めた。
「ここでやることわかってたんなら、前もって片付けておけよ。」
「あは、ごめーん。今朝出るの遅くなりそうで、バタバタしたんだよね~。」
悪態をつくリンクに、ムツミはへらっと笑い返しながら手を動かす。片付いたテーブルに筆記用具を置くと、さあ何から始めるかと話し合う。
「***どの科目やばい?」
「……数学と英語、かなぁ。」
「あ、あたしも英語やばい。古典と現代文はイケるんだけどな~。リンクは?」
「何がやばいのかわかってない。」
「それマジでやばいやつじゃん。」
「は、お前と一緒にすんなよ。」
「クッソむかつく!!」
ギリギリと歯軋りをしながら右手に拳を作るムツミを見て、これはスルーしないと先に進まないな、と思って話を進める。
「じゃあ英語からやろうよ。リンクって確か英語出来たもんね、わかんないとこ教えて?」
「ん。範囲どこ?」
「52ページから…………えっと、授業でやらなかったページもあるからここは飛ばして……。」
ついでに今回の試験範囲を全科目確認したら、リンクもムツミも範囲をきちんと把握していなかった。……今日集まらなかったら、この二人どうしてたんだろう。
授業中わからなかったところやよく聞けなかったところをお互いに確認しながら勉強を進めていくと、途中でリンクが席を外した。
「なぁ、トイレどこだっけ?」
「そこ出て、右行った突き当たりだよー。」
一人が一時的にでも抜けたことで集中力が切れた私は、ムツミの持ってるCDを見ながら、今日感じた違和感を思い出して問いかけた。
「ねぇ。そういえばさ、3人でカラオケ行ったことないよね~。」
「そっ!そうだね!?」
「……何か隠してるでしょ?」
「全然!?」
「声裏返ってるし……。」
「うう…………バレたか。ぜ……ったい、誰にも言わない?リンクにも。」
「うん、いいよ。言わない。」
恐る恐るといった様子でムツミが話し始めたのは、以前に部活友達とカラオケに行った際に、トイレから戻ろうとして部屋を入り間違えた時の話だった。
「ただいま~!まだ私の番来てな、」
「こおおおおおおおおおの声が聞こえええええまああすかああああああああああああああああああああああああああ」
「…………すんません、部屋間違えました。」
「ってことがあって……。」
「え?何それ、わざわざ隠すことじゃあないんじゃないの?」
「いやそれが……プライドってやつなのか、よっぽど聴かれたくなかったみたいで、聴いたこと絶対誰にも言うなって脅されてさ……。」
ムツミが顔を両手で覆いながら話している様子から、その時のリンクの剣幕が私の想像できる以上のものだったことを思わせられる。
「マジ……片手で肩の骨折られるかと思った…………アイツガチで怒るとめっちゃ怖い……。」
「そ、そんなに!?リンク筋トレが趣味みたいなところあるから、力は強いとは思ってたけどそこまでとは思ってなかった……私も気をつけよ……。」
「***は絶対的に安全が保証されてるじゃん。」
「どういうこと?」
「だって、……っどぁぁぁっしゃーーーー全然英語わっかんないなーー!!もう無理だなーこれー!補習決定かなーーーー!?」
「うぎゃぁ!?」
突然叫んだムツミにびっくりするのとほぼ同時に、腕を引かれてベッドへ引きずり込まれた。
リンクが部屋に戻ってきたから、慌ててその場を取り繕おうとしたのだろう。じゃれ付いてくるムツミに私も合わせつつ、ばたばたと暴れる。
「ちょ、ちょっと~!ムツミってば、だからってそんな投げやりにならなくても!」
「もう集中力切れたし遊ぼうよ~~!ね?ね?息抜きも必要でしょ!」
「あは、あはは!!やめ、くすぐったいから!!私まで巻き込まないで……っ!」
くすぐられて身をよじりながら抜け出そうとしていたら、リンクの低い声が聞こえてまるで呪いのように二人共ピタリと動きが止まる。
「………………帰っていいか?」
私も久しぶりに聞くほど、それはそれはドスの利いた低い声で。思わず即座に正座して勉強を再開した。
「で、さっきの日本語に訳す問題は解けたのかよ。」
「ウィッス。い、一応解いたッス……。はいこれ…………。」
リンクがムツミのノートを見ると、一言呟いた。
「お前これ、音読してみろよ?」
「…………“私は、鳩の餌を見たことがありません”?」
「何かおかしいって思わねーのかよ!」
「ぷ、ぁっはっは!!何それーー!?ムツミ、鳩の餌見たこと無いのー!?公園でよくパン屑とか撒いてる人いるでしょ!」
「私は見たことあるわい!!けどそういう風にしか訳せなかったんだよ!クソッ!!」
ばしん、とノートを床に叩きつけて悔しがる彼女の次は私の番で。人のことを言えなかったことに気が付いて、顔が固まる。
「***は?そっちの文章訳せた?」
「…………それが……。」
「……読みあげてみて。」
「………………“私の右手は、どこにありますか”……?」
「……こわっ…………え?」
リンクとムツミが、シンクロしてしばらく“え?”しか言わなくなるほど、私の和訳は壊滅的だった。
勉強しましょう。
(試験まであと2週間!)(大丈夫かなぁ……。)
***
おかしい日本語訳は、私が中高生だった時に訳したものそのまんまです(本当)。正しくは「鳩は地下鉄を通って餌を探しに行きます。」と、「私の右手には何がありますか?」でした。
17.1.27