狐の嫁入り!
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日が昇る時間が長く、早くなってきた季節に入り、朝から体育館内の熱気に当てられている体はもわもわとする。体育着の袖が腕に張り付く度、服を引っ張って少しでも体温を逃がそうとした。
「やっぱり、いくら朝とは言え暑いねー…」
「もう梅雨なんて季節は消滅したんじゃないのコレ?」
「何ソレ。ま、今から降られてもじめじめして嫌なんだけどね~!」
「…コイツらはどの季節でも文句言うだろ………」
「うーん、まぁ………あと10分だけだし、練習再開しよ?折角割り振られた時間なんだし!」
クラスマッチに向けての練習で女子卓球の私達の中にリンクがいるのは、単純にいつも通り一緒に登校したから。ってだけではなく、側を離れたくないんだとか、教室にいたくないんだとかの理由らしい。実際リンクは運動神経も良いし、教えてもらいたいと言う子もいるくらいだから寧ろ良いのだけど、当の本人はずっと座って見ているだけだった。
「(あ…私のペアの子、欠席だった…。)」
かと言って何もしない訳にはいかず。2対1で打ち返すだけの練習。成長してるような手応えも何もなく、皆に声をかけるもののさして上手くもないし経験も無い私にはどうしたらいいかわからないまま時間が過ぎていく。それに対する焦りなのか、それ以外の原因なのか、段々と返す球が台に入らなくなってしまった。
「何か、下手でごめんね…。」
「大丈夫大丈夫~!未経験の人ならこんなもんでしょー!」
「***。」
「え?」
ずっと座って見ていただけのリンクが、側にまで来て私に声をかけた。驚いていると真っ正面から掴まれて、肩のみをぐぐぐっと持ち上げられる。
「な、何、ちょっと」
「力入れ過ぎ。もっと肩の力抜いて。球は返すだけでいいから。ずっと返し続けてれば、そのうち相手が勝手に自滅してくれる。」
「うん?」
シンプルなアドバイスを言い終えると同時に、両手が離されストン!と肩が落ちる。
「***は辛抱強いから大丈夫。」
両手で頬を包みながら優しく言うものだから、恥ずかしいような嬉しいような気持ちが相俟って心が高調していくのを感じた。
「えー、ねぇねぇ私は!?」
「!!」
「……お前はやる気出さないのが駄目。本当はもっと上手いだろ。」
「うえっ、バレた~」
クラスメートの声にハッとしてリンクの手から離れる。何だったの、今の!深呼吸して気を落ち着かせ、練習を再開した。
─“***は辛抱強いから大丈夫”
そんな言葉を言われた喜びと、皆に頼られるリンクを見て嬉しくなった為か、ホームルーム前に“何か良いことあったんでしょ~?”とムツミに言われるまで、私は一人でにやけていたらしい。
放課後、顧問の先生の都合で部活動が無い私は、リンクが参加する男子バレーの練習を見学していた。私は何もアドバイスとか出来ないけど、朝付き合わせちゃったお返しも含めてリンクを待つ。そこまで遅くまでやらないしね。使用する番を待つ運動部の友達も一緒だし、退屈しなかった。
「オイ!!!!!お前ら作戦通り動けよ!!!やる気あんのナメてんの?」
「……えっ、リンク君ってあんなこと言うんだ…ちょっとびっくり。」
「あはは…結構負けず嫌いなところあるから………でも背小さめな方だし、いくら運動神経良くてもハンデになっちゃうから、背高い人の力が無いと勝てないって…多分わかってるんだと思うよ……それにしても、もうちょっと言い方変えればいいのに。」
仲良くやろうって明るく引っ張るタイプでもないし、気遣っても上手くいくとは思ってないからなぁリンク…。やる気のない人にうざがられないか心配。やがて練習時間が終わって、体育館内の人がぞろぞろと入れ替わる。
「着替えて来る。昇降口で待ってて。」
「うん、お疲れ様。あぁそうだ、今日タオル持って来たから使っていいよ!汗びっちょりだね~!」
「……………。」
「ね、ねぇちょっと。何で匂い嗅いでるの。こんなところで。」
「***の鞄の匂い…。」
「何でそんなのわかるの!?やめてよ恥ずかしい!!」
早く行って!!と背中を押す。丁度友達も部活動の準備で離れていたことで、こんなところを見られずに済んだ。変人だと思われて避けられたら嫌だもの。
いくらか涼しい昇降口で待たせてくれるとことか、来た時に私のお気に入りの飲み物買って来てくれるとことか、良いところも勿論あるんだけどなぁ。靴を履き替えるのとほぼ同時に、まるでフライングかの様に蝉が一匹だけ鳴き始めた。
もうすぐ夏です。
(「夏服買いに行こうぜ。」)(「…リンクの?」)(「前に言ったろ、***のだよ。」)(「あっ………それね…う、うん。」)
14.09.02
「やっぱり、いくら朝とは言え暑いねー…」
「もう梅雨なんて季節は消滅したんじゃないのコレ?」
「何ソレ。ま、今から降られてもじめじめして嫌なんだけどね~!」
「…コイツらはどの季節でも文句言うだろ………」
「うーん、まぁ………あと10分だけだし、練習再開しよ?折角割り振られた時間なんだし!」
クラスマッチに向けての練習で女子卓球の私達の中にリンクがいるのは、単純にいつも通り一緒に登校したから。ってだけではなく、側を離れたくないんだとか、教室にいたくないんだとかの理由らしい。実際リンクは運動神経も良いし、教えてもらいたいと言う子もいるくらいだから寧ろ良いのだけど、当の本人はずっと座って見ているだけだった。
「(あ…私のペアの子、欠席だった…。)」
かと言って何もしない訳にはいかず。2対1で打ち返すだけの練習。成長してるような手応えも何もなく、皆に声をかけるもののさして上手くもないし経験も無い私にはどうしたらいいかわからないまま時間が過ぎていく。それに対する焦りなのか、それ以外の原因なのか、段々と返す球が台に入らなくなってしまった。
「何か、下手でごめんね…。」
「大丈夫大丈夫~!未経験の人ならこんなもんでしょー!」
「***。」
「え?」
ずっと座って見ていただけのリンクが、側にまで来て私に声をかけた。驚いていると真っ正面から掴まれて、肩のみをぐぐぐっと持ち上げられる。
「な、何、ちょっと」
「力入れ過ぎ。もっと肩の力抜いて。球は返すだけでいいから。ずっと返し続けてれば、そのうち相手が勝手に自滅してくれる。」
「うん?」
シンプルなアドバイスを言い終えると同時に、両手が離されストン!と肩が落ちる。
「***は辛抱強いから大丈夫。」
両手で頬を包みながら優しく言うものだから、恥ずかしいような嬉しいような気持ちが相俟って心が高調していくのを感じた。
「えー、ねぇねぇ私は!?」
「!!」
「……お前はやる気出さないのが駄目。本当はもっと上手いだろ。」
「うえっ、バレた~」
クラスメートの声にハッとしてリンクの手から離れる。何だったの、今の!深呼吸して気を落ち着かせ、練習を再開した。
─“***は辛抱強いから大丈夫”
そんな言葉を言われた喜びと、皆に頼られるリンクを見て嬉しくなった為か、ホームルーム前に“何か良いことあったんでしょ~?”とムツミに言われるまで、私は一人でにやけていたらしい。
放課後、顧問の先生の都合で部活動が無い私は、リンクが参加する男子バレーの練習を見学していた。私は何もアドバイスとか出来ないけど、朝付き合わせちゃったお返しも含めてリンクを待つ。そこまで遅くまでやらないしね。使用する番を待つ運動部の友達も一緒だし、退屈しなかった。
「オイ!!!!!お前ら作戦通り動けよ!!!やる気あんのナメてんの?」
「……えっ、リンク君ってあんなこと言うんだ…ちょっとびっくり。」
「あはは…結構負けず嫌いなところあるから………でも背小さめな方だし、いくら運動神経良くてもハンデになっちゃうから、背高い人の力が無いと勝てないって…多分わかってるんだと思うよ……それにしても、もうちょっと言い方変えればいいのに。」
仲良くやろうって明るく引っ張るタイプでもないし、気遣っても上手くいくとは思ってないからなぁリンク…。やる気のない人にうざがられないか心配。やがて練習時間が終わって、体育館内の人がぞろぞろと入れ替わる。
「着替えて来る。昇降口で待ってて。」
「うん、お疲れ様。あぁそうだ、今日タオル持って来たから使っていいよ!汗びっちょりだね~!」
「……………。」
「ね、ねぇちょっと。何で匂い嗅いでるの。こんなところで。」
「***の鞄の匂い…。」
「何でそんなのわかるの!?やめてよ恥ずかしい!!」
早く行って!!と背中を押す。丁度友達も部活動の準備で離れていたことで、こんなところを見られずに済んだ。変人だと思われて避けられたら嫌だもの。
いくらか涼しい昇降口で待たせてくれるとことか、来た時に私のお気に入りの飲み物買って来てくれるとことか、良いところも勿論あるんだけどなぁ。靴を履き替えるのとほぼ同時に、まるでフライングかの様に蝉が一匹だけ鳴き始めた。
もうすぐ夏です。
(「夏服買いに行こうぜ。」)(「…リンクの?」)(「前に言ったろ、***のだよ。」)(「あっ………それね…う、うん。」)
14.09.02