狐の嫁入り!
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「***。」
風呂を上がって、寝支度も済んで***の部屋に入ると、***はベッド上でぬいぐるみを抱きながら壁に寄りかかっていた。既に眠りかけているのか、力無く頭が垂れている。
「***大丈夫?俺はもう寝られるけど…歯磨いた?」
「うん…。」
「明日の準備とか、」
「ば……っちり、寝られるよ…て言うか寝よ…。」
思っていた以上に素早く布団に入る様子を見て、よっぽど眠かったんだなと悪く感じながら電気を消し、俺も隣に寝る。
「おやすみ。良い夢見ろよ。」
「ん……おやすみ…。」
お腹を優しくぽんぽんと叩くと、ふぅと一息吐いてすぐに***は寝入った。
「……………***。」
呼び掛けても反応が無く、規則的な寝息を立て続けていることを確認して手を止める。薄明かりで照らされている***の髪を掻き分けると、丸い耳が表れた。なだらかな弧を描く、普段は隠れてしまう小さい耳。形を確かめるように自分の耳に触れても、それは***と全く違う線を描いていた。
人と違う耳。これが原因で悪いことは特に無かった。だけど、
(お父さんとお母さんは、)
自分の子供が普通とは違う容姿で生まれてきたらどう感じたのか。特に何かを言われた覚えは無いが、二人が死んでしまった今ではもう確認の仕様が無い。残された居場所はこの家庭だけ。
「っふ…、……」
***の耳を撫でると、くすぐったいのか身を縮み込ませて顔の近くに手が寄せられた。それに自分の手を重ね、額をぴったりとくっつける。
***の部屋。***の布団。***の髪。
自分ではない人の匂いに包まれて、独りじゃないという安堵感に瞼が重くなる。今夜はいつもより眠れそうだ。
「*** ずっと 一緒にいて、」
朝は来なくていい、このまま***の隣にいたい。
「─リンク、ちょっとだけここで待ってなさい。」
出て来た駅の前で村長に待たされてる間、居心地の悪さに帰りたくなった。濁った空気と人の多さ、雑音。
何より、田舎で育ってきた俺にとっては、行き交う人と誰もが言葉を交わさないというのは異様だった。村では子供が一人で歩いていると、必ずと言ってもいい程周りの大人に声をかけられた。だけどここではこれだけの大人がいるのにも関わらず、誰一人として見向きもしない。それが酷く恐ろしかった。唯一の共通点は、見上げれば広がっている空。黄昏時の日の光が建物に反射して、眩しさに目を細めた。
そうしていたら、突然誰かに手を握られた。それは女の子だった。雑音が多くて気が付かなかったが、駆け寄ってきたのか乱れた息を調え、真っ直ぐと俺を見据えて期待に高潮した声が発せられた。
「っ、あなたがリンク!?」
「…そうだけど。」
「やっぱり!初めまして、私、今日からきょうだいになる***だよ。」
「お前、年いくつ?」
温度差を物ともせず話す彼女に問いかけると、きょとんとした表情で返された。
「あれ?聞いてない?私達同い年なんだよ、双子みたいで嬉しいなぁ。」
「双子みたいって………」
一緒に生まれるどころか、血も繋がってないのに。何がきょうだい…しかも双子だよ、コイツただのバカじゃん。
「ずっと、ず~っと会いたかった!!」
「…は、」
満面の笑みで強く手を繋いだ彼女に動揺していると“絶対に離しちゃ駄目だからね”という言葉を合図に、そのまま手を引かれて走り出した。人々の間を縫うかのように上手く避けながら走っていたが、やがて人込みに入った時、展開に付いていけないままだった俺と彼女との間を裂くかのように横切った大人のせいで、繋いだ手が離れる。
「、ぁ………!」
逆光でよく見えなかった筈の表情は、雑音の中でも確かに聞こえた小さな声一つで簡単に想像出来た。
人込みに揉まれて揺れるこの手を、今離したらもう何処にもいられなくなるような気がした。
「っ! ***!!!」
上擦った声で呼んで、***の手を強く掴んだ。
「………、」
鳴り響く目覚まし時計の音で意識が現実に引き戻される。……夢、か。隣にいる***の腕が伸び、音が止められた。起き上がって乱れた髪を直すと、なるべく光が漏れないようにとカーテンの隙間から外を眺めている。
「おはよ……。」
「あ、おはよう。起こしちゃってごめんね。」
「…何見てんの?」
「んー、桜…散り始めちゃったな~と思って。」
後ろから***を抱き締めて外を見ると、街路樹にある桜は確かに風に揺られて花びらを散らせていた。
「花びら舞う桜の木の下で首つり自殺かぁ……悪く、ないなぁ。」
「…朝から何てこと言い出すの。そういう冗談気分悪いからやめて。」
ぽろりと零した言葉はまずかったらしく、いつもより少し低い***の声に驚いた。
「…ごめん。」
「うん。にしても久々じゃない?一緒に寝たの。小さい頃なんか、朝は何色の車がいくつ通るか数えたりしてたよね。」
「あれな、圧倒的な白い車の多さな。」
「そうそう!……いやいや、ゆっくりしてる程暇じゃなかったわ、準備しなきゃ。」
「え~………。」
「今日は別々に登校するって昨日約束したでしょ、今更渋らない!ほら離して、」
「んー。ちゅ、」
仕方なく体を離すと同時に***の額へ口付けて、ぼすんとベッドへ横たわった。
「え?な、何?何で今キスしたの?」
「いつも行って来ますの時は忙しくて出来ないし…おはようのちゅー?」
「しなくていい!」
「俺がしたかったんだもん。」
ごろごろと寝転がって枕に顔を埋めてる内に、***はベッドから降りた。知ってる、いつも恥ずかしがってすぐにはまともに顔を見てくれないんだよな。
「着替えるのにリンクの部屋借りるから!!」
「別にここで着替えていいよ、そっち見ないし。」
「下着姿見たいとか昨日言ったばっかりの人に言われても。」
「あ~………。わかった、いいよ。」
軽い冗談のつもりだったんだけどな。余計なこと言わなきゃ良かった。
制服を持って部屋を出る***を見送り終わると、再び布団の中へ潜った。***の枕を抱き締める。あったけー。
「やっぱり甘えられる時には、思いっ切り甘えて正解だな…。」
側にいられるし、落ち着くし、よく眠れるしで最高だわ。***の温もりにうっとりしながら、穏やかな気持ちで再び目を閉じた。
至福の時間、大好きな温もり
(もう絶対に離さない。)(手放してたまるかよ。)
***
アンケートに投票ありがとうございます!とっても嬉しいです…!!
今回少し長めになっちゃった。
14.3.13
風呂を上がって、寝支度も済んで***の部屋に入ると、***はベッド上でぬいぐるみを抱きながら壁に寄りかかっていた。既に眠りかけているのか、力無く頭が垂れている。
「***大丈夫?俺はもう寝られるけど…歯磨いた?」
「うん…。」
「明日の準備とか、」
「ば……っちり、寝られるよ…て言うか寝よ…。」
思っていた以上に素早く布団に入る様子を見て、よっぽど眠かったんだなと悪く感じながら電気を消し、俺も隣に寝る。
「おやすみ。良い夢見ろよ。」
「ん……おやすみ…。」
お腹を優しくぽんぽんと叩くと、ふぅと一息吐いてすぐに***は寝入った。
「……………***。」
呼び掛けても反応が無く、規則的な寝息を立て続けていることを確認して手を止める。薄明かりで照らされている***の髪を掻き分けると、丸い耳が表れた。なだらかな弧を描く、普段は隠れてしまう小さい耳。形を確かめるように自分の耳に触れても、それは***と全く違う線を描いていた。
人と違う耳。これが原因で悪いことは特に無かった。だけど、
(お父さんとお母さんは、)
自分の子供が普通とは違う容姿で生まれてきたらどう感じたのか。特に何かを言われた覚えは無いが、二人が死んでしまった今ではもう確認の仕様が無い。残された居場所はこの家庭だけ。
「っふ…、……」
***の耳を撫でると、くすぐったいのか身を縮み込ませて顔の近くに手が寄せられた。それに自分の手を重ね、額をぴったりとくっつける。
***の部屋。***の布団。***の髪。
自分ではない人の匂いに包まれて、独りじゃないという安堵感に瞼が重くなる。今夜はいつもより眠れそうだ。
「*** ずっと 一緒にいて、」
朝は来なくていい、このまま***の隣にいたい。
「─リンク、ちょっとだけここで待ってなさい。」
出て来た駅の前で村長に待たされてる間、居心地の悪さに帰りたくなった。濁った空気と人の多さ、雑音。
何より、田舎で育ってきた俺にとっては、行き交う人と誰もが言葉を交わさないというのは異様だった。村では子供が一人で歩いていると、必ずと言ってもいい程周りの大人に声をかけられた。だけどここではこれだけの大人がいるのにも関わらず、誰一人として見向きもしない。それが酷く恐ろしかった。唯一の共通点は、見上げれば広がっている空。黄昏時の日の光が建物に反射して、眩しさに目を細めた。
そうしていたら、突然誰かに手を握られた。それは女の子だった。雑音が多くて気が付かなかったが、駆け寄ってきたのか乱れた息を調え、真っ直ぐと俺を見据えて期待に高潮した声が発せられた。
「っ、あなたがリンク!?」
「…そうだけど。」
「やっぱり!初めまして、私、今日からきょうだいになる***だよ。」
「お前、年いくつ?」
温度差を物ともせず話す彼女に問いかけると、きょとんとした表情で返された。
「あれ?聞いてない?私達同い年なんだよ、双子みたいで嬉しいなぁ。」
「双子みたいって………」
一緒に生まれるどころか、血も繋がってないのに。何がきょうだい…しかも双子だよ、コイツただのバカじゃん。
「ずっと、ず~っと会いたかった!!」
「…は、」
満面の笑みで強く手を繋いだ彼女に動揺していると“絶対に離しちゃ駄目だからね”という言葉を合図に、そのまま手を引かれて走り出した。人々の間を縫うかのように上手く避けながら走っていたが、やがて人込みに入った時、展開に付いていけないままだった俺と彼女との間を裂くかのように横切った大人のせいで、繋いだ手が離れる。
「、ぁ………!」
逆光でよく見えなかった筈の表情は、雑音の中でも確かに聞こえた小さな声一つで簡単に想像出来た。
人込みに揉まれて揺れるこの手を、今離したらもう何処にもいられなくなるような気がした。
「っ! ***!!!」
上擦った声で呼んで、***の手を強く掴んだ。
「………、」
鳴り響く目覚まし時計の音で意識が現実に引き戻される。……夢、か。隣にいる***の腕が伸び、音が止められた。起き上がって乱れた髪を直すと、なるべく光が漏れないようにとカーテンの隙間から外を眺めている。
「おはよ……。」
「あ、おはよう。起こしちゃってごめんね。」
「…何見てんの?」
「んー、桜…散り始めちゃったな~と思って。」
後ろから***を抱き締めて外を見ると、街路樹にある桜は確かに風に揺られて花びらを散らせていた。
「花びら舞う桜の木の下で首つり自殺かぁ……悪く、ないなぁ。」
「…朝から何てこと言い出すの。そういう冗談気分悪いからやめて。」
ぽろりと零した言葉はまずかったらしく、いつもより少し低い***の声に驚いた。
「…ごめん。」
「うん。にしても久々じゃない?一緒に寝たの。小さい頃なんか、朝は何色の車がいくつ通るか数えたりしてたよね。」
「あれな、圧倒的な白い車の多さな。」
「そうそう!……いやいや、ゆっくりしてる程暇じゃなかったわ、準備しなきゃ。」
「え~………。」
「今日は別々に登校するって昨日約束したでしょ、今更渋らない!ほら離して、」
「んー。ちゅ、」
仕方なく体を離すと同時に***の額へ口付けて、ぼすんとベッドへ横たわった。
「え?な、何?何で今キスしたの?」
「いつも行って来ますの時は忙しくて出来ないし…おはようのちゅー?」
「しなくていい!」
「俺がしたかったんだもん。」
ごろごろと寝転がって枕に顔を埋めてる内に、***はベッドから降りた。知ってる、いつも恥ずかしがってすぐにはまともに顔を見てくれないんだよな。
「着替えるのにリンクの部屋借りるから!!」
「別にここで着替えていいよ、そっち見ないし。」
「下着姿見たいとか昨日言ったばっかりの人に言われても。」
「あ~………。わかった、いいよ。」
軽い冗談のつもりだったんだけどな。余計なこと言わなきゃ良かった。
制服を持って部屋を出る***を見送り終わると、再び布団の中へ潜った。***の枕を抱き締める。あったけー。
「やっぱり甘えられる時には、思いっ切り甘えて正解だな…。」
側にいられるし、落ち着くし、よく眠れるしで最高だわ。***の温もりにうっとりしながら、穏やかな気持ちで再び目を閉じた。
至福の時間、大好きな温もり
(もう絶対に離さない。)(手放してたまるかよ。)
***
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今回少し長めになっちゃった。
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