狐の嫁入り!
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「***…寝ちゃった?」
俺の肩に顔を乗せたまま、すやすやと吐息をたてる***の様子に気が休まる。それだけ、信用されているってことだよな…一応。俺のこと嫌いじゃない筈なのに、距離を置こうとすることが不思議でならない。突き放されてる訳じゃない。***が学校では恥ずかしがってこうさせてくれないのはわかってる。その度に、良心から俺を甘やかしたり優しくしてくれているのも。
……一時期は本当に酷くて。確か小学校高学年くらいの頃に、我が家ではお帰りのキスをすることを同級生にはやし立てられたのがきっかけで、家族の誰からのキスも拒まれ続けた。しかもどこで勘違いをしたのか、ファーストキスがどうのって落ち込んで泣き出したこともあったしな…。結局、友達に正しい解説をされたり励まされたお陰で、お帰りのキスは受け入れてもらえるようになったけど。俺は何故からかわれなくちゃならないんだ、と憤慨したし、何よりもそれがきっかけで***からしてもらえなくなったことは未だに許せないでいる。中学生の頃には登下校は別々にしようとしてたし、手も繋いでくれなかった。それにどれだけ俺が絶望したことか…おそらく***は知らないんだろう。
今でこそこうやって受け入れてくれるようになったから、俺はまだ学校でもいくらか平常心を保っていられる。まあ他の人と比べたら、馴染んでないだろうけどな。
「ちっせー………。」
***の背中に伸ばしていた手を肩へと運ぶと、自分とは全く違う華奢な体格に男女の差を実感させられた。年齢も育ちも同じな筈なのに、この差。
「ぅうう、んん………」
***の髪を弄んでいると、俺の首に回された腕が身をよじるのと同時にしっかりと置き直された。不意にさっきの言葉が頭を過ぎる。
“―明日、一人でも登校出来る?”
***は“出来るよね?”とは言わなかった。勝手に断定しなかった。あくまでも俺の意志を尊重してくれていた。登校ぐらいで駄々をこねるなんて、普通だったら見離されてもおかしくないのに…こんな俺に気を遣ってくれる人、他にいるか?
「…離れたくないな……。」
***と。もうこのままでいたい。
ソファーに置かれた***の携帯が視界に入る。自分の携帯を取り出し、メールの受信フォルダーに残っている履歴を辿る。***、***、***、母さん、***、母さん、母さん………たまに父さん。全て家族からのものだった。途中でフォルダーを閉じ、新着メールの問い合わせをする。
「…“新着メールはありません”。…ですよねー……。」
自分の携帯を***の携帯の隣に置き合わせる。同じ携帯という道具でも、そこに含まれる連絡先も、写真も、きっと***の方が多いだろう。
頭をタオルで拭きながら父さんがリビングへ入ってきた。
「風呂空いたぞ~………お?***寝てるのか。リンク先入ったらどうだ?」
「いや、明日早いみたいだから先に***に入らせた方が……***…***起きて?」
「……………ふんっ…」
肩を揺らしても起きてはくれず、息を吐きながら顔の向きを変えただけ。ふんって何だ。ぐっすり寝ているのを無理に起こすのは気が引けるが、ずっとこの体制でいるのは流石に俺の体に負担がかかるし。どう起こそうか……。
「にしても羨ましいなリンク!昔はそこがお父さんの特等席だったのに…!………今の内にお父さんも久々にハグしよっかな~…」
「やめて……。」
「えっ」
悩んでいる間に父さんが抱き締めようと近付いただけで、***は体を起こした。のんびりと目を擦る***とは対照的に悲しみに打ちひしがれる父さんを見て、可哀相だな…なんて他人事のように思った。だけどこれはある意味で、昼間の俺と同じなんだよな…。父さんにとっては可愛い唯一の娘。俺にとっては………、
「先にお風呂入ってくるねぇ~」
***が離れてしまう前にぽんぽんと頭を軽く叩くと、まだ寝ぼけているのかへにゃりと口元を綻ばせながら浴室へと向かった。
家にいる間が、唯一の少しだけ安心できる時間。俺にはこの家、父さん母さんと***がいればいい。………信用出来る友達なんていなくても。でも***はそうじゃないかもしれない。多分、俺がいなくても***には支えてくれる人が沢山いる。もっとしっかりした人が。俺なんかとは違って。俺なんかとは違って俺なんかとかおれなんか俺なんか俺なんか………。
「…筋トレしなくちゃ。」
塞ぎ込み始めた思考を掻き消す為に。俺もソファーから立ち上がって、自室へと足を運んだ。
どれだけ深く想っても
(***は気付かない。)(気付かない方がいいかもしれない、こんな重荷になること。)
14.2.9
俺の肩に顔を乗せたまま、すやすやと吐息をたてる***の様子に気が休まる。それだけ、信用されているってことだよな…一応。俺のこと嫌いじゃない筈なのに、距離を置こうとすることが不思議でならない。突き放されてる訳じゃない。***が学校では恥ずかしがってこうさせてくれないのはわかってる。その度に、良心から俺を甘やかしたり優しくしてくれているのも。
……一時期は本当に酷くて。確か小学校高学年くらいの頃に、我が家ではお帰りのキスをすることを同級生にはやし立てられたのがきっかけで、家族の誰からのキスも拒まれ続けた。しかもどこで勘違いをしたのか、ファーストキスがどうのって落ち込んで泣き出したこともあったしな…。結局、友達に正しい解説をされたり励まされたお陰で、お帰りのキスは受け入れてもらえるようになったけど。俺は何故からかわれなくちゃならないんだ、と憤慨したし、何よりもそれがきっかけで***からしてもらえなくなったことは未だに許せないでいる。中学生の頃には登下校は別々にしようとしてたし、手も繋いでくれなかった。それにどれだけ俺が絶望したことか…おそらく***は知らないんだろう。
今でこそこうやって受け入れてくれるようになったから、俺はまだ学校でもいくらか平常心を保っていられる。まあ他の人と比べたら、馴染んでないだろうけどな。
「ちっせー………。」
***の背中に伸ばしていた手を肩へと運ぶと、自分とは全く違う華奢な体格に男女の差を実感させられた。年齢も育ちも同じな筈なのに、この差。
「ぅうう、んん………」
***の髪を弄んでいると、俺の首に回された腕が身をよじるのと同時にしっかりと置き直された。不意にさっきの言葉が頭を過ぎる。
“―明日、一人でも登校出来る?”
***は“出来るよね?”とは言わなかった。勝手に断定しなかった。あくまでも俺の意志を尊重してくれていた。登校ぐらいで駄々をこねるなんて、普通だったら見離されてもおかしくないのに…こんな俺に気を遣ってくれる人、他にいるか?
「…離れたくないな……。」
***と。もうこのままでいたい。
ソファーに置かれた***の携帯が視界に入る。自分の携帯を取り出し、メールの受信フォルダーに残っている履歴を辿る。***、***、***、母さん、***、母さん、母さん………たまに父さん。全て家族からのものだった。途中でフォルダーを閉じ、新着メールの問い合わせをする。
「…“新着メールはありません”。…ですよねー……。」
自分の携帯を***の携帯の隣に置き合わせる。同じ携帯という道具でも、そこに含まれる連絡先も、写真も、きっと***の方が多いだろう。
頭をタオルで拭きながら父さんがリビングへ入ってきた。
「風呂空いたぞ~………お?***寝てるのか。リンク先入ったらどうだ?」
「いや、明日早いみたいだから先に***に入らせた方が……***…***起きて?」
「……………ふんっ…」
肩を揺らしても起きてはくれず、息を吐きながら顔の向きを変えただけ。ふんって何だ。ぐっすり寝ているのを無理に起こすのは気が引けるが、ずっとこの体制でいるのは流石に俺の体に負担がかかるし。どう起こそうか……。
「にしても羨ましいなリンク!昔はそこがお父さんの特等席だったのに…!………今の内にお父さんも久々にハグしよっかな~…」
「やめて……。」
「えっ」
悩んでいる間に父さんが抱き締めようと近付いただけで、***は体を起こした。のんびりと目を擦る***とは対照的に悲しみに打ちひしがれる父さんを見て、可哀相だな…なんて他人事のように思った。だけどこれはある意味で、昼間の俺と同じなんだよな…。父さんにとっては可愛い唯一の娘。俺にとっては………、
「先にお風呂入ってくるねぇ~」
***が離れてしまう前にぽんぽんと頭を軽く叩くと、まだ寝ぼけているのかへにゃりと口元を綻ばせながら浴室へと向かった。
家にいる間が、唯一の少しだけ安心できる時間。俺にはこの家、父さん母さんと***がいればいい。………信用出来る友達なんていなくても。でも***はそうじゃないかもしれない。多分、俺がいなくても***には支えてくれる人が沢山いる。もっとしっかりした人が。俺なんかとは違って。俺なんかとは違って俺なんかとかおれなんか俺なんか俺なんか………。
「…筋トレしなくちゃ。」
塞ぎ込み始めた思考を掻き消す為に。俺もソファーから立ち上がって、自室へと足を運んだ。
どれだけ深く想っても
(***は気付かない。)(気付かない方がいいかもしれない、こんな重荷になること。)
14.2.9