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本棚の隅に隠れて、コソコソと服を着替える。私だってれっきとした乙女だし、人前で着替えるほどの豪胆さは持っていない。いや、正確に言えば持っているが発揮すると敦に怒られる。

黒マスクの男性の言い分を並べるとこうだった。


此処は、【ナイトレイブンカレッジ】という、ツイステッドワンダーランドという国の名門魔法士養成学校。

そして男性は、この学園の校長。ディア・クロウリー。変な格好をしているが偉い人ではあるらしい__そうは見えない(辛辣)

そして入学できるのは『闇の鏡』に認められた優秀な魔法士の卵だけ。選ばれしものはさっきの私みたいに、棺__もとい扉を使って集められる。

すっかり着替え終わった私は、クロウリー先生に着物だけ預けトコトコと中庭を歩いていた。勿論、小太刀と携帯電話はバレないように式典服の袖に隠している。

ツイステッドワンダーランド、聞いたことのない国。そして私の予想が合っているなら、それは国ではない。私の世界で地球と同じ意味を持つ、世界の名前だ。

異能力は一般的ではない、故に養成学校なんて存在しない。
そして、異能力は異能力だ。魔法ではない。

だから私は仮定した、此処がいわゆる、異世界である可能性を__


「貴方のところにも『扉』を載せた黒い馬車が迎えにきたはずです__って聞いてました?」


『聞いてる…黒い馬車…黒い馬車__』


そしてその瞬間、過ぎる一つの記憶。


「鏡花ちゃん!後ろだ!!!」

『え__』



敦が私に手を伸ばしている。だけども目の前に現れた黒い馬車、それを見た後の記憶がない__そして、それ以前の記憶もその後の記憶も、やっぱりない。


なるほど…


『あながち誘拐で間違いない』


「人聞きの悪い…さっ、入学式に行きますよ」


異世界に来てしまった__その可能性が高くなったまま、私はクロウリーについて行った。
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