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一章

『ははうえ……ッ、う……』


とめどなく涙は溢れる。悲しい、胸にポッカリと穴が空いたとはこういう事を指すんだろう。

冷たくなった母上の体にしがみつく。そして、「ごめんなさい」と何度も謝罪をした。


すると、黙っていた父上は


パシン


『ッ…』


私の頬に平手打ちを喰らわせた。

ぶたれた場所は直ぐに赤くなり腫れ上がる…ただ、痛かった。


『ちち…うえ……なんで…』


「惨めったらしく蹲って泣くな!!」


殴ったんですか、そう聞こうとする前に怒鳴られ、怖くて肩を揺らす。


「悔しいのはわかる……だが、涙を人に見せるなみっともない……」


「泣いてどうなる?死者が返ってくるか?違うだろ?」


「泣く暇があるなら、その時間を鍛練に充てろ。強くなれ」


子供の自分でも、理解できる理論だった。


田舎、なおかつ貧乏故に葬式なんてあげる事は出来ない。穴を掘って土葬した。


ただただ悲しくて、寂しくて、一人が嫌だった。


『……ッ…は……』


母上の死んだ夜。記憶がフラッシュバックして眠れない。普段なら一人で寝る所だが、どうしても怖くて眠る事が出来なかった。


居間へ向かうとまだ囲炉裏に火が灯っているのが襖越しに分かる、そっと襖をあける


そこには……


「……ごめんな……守ってやれなくて…」


一人酒を呷り、泣いている父の背があった。


父上とて泣きたかったのだ、だが娘の手前そういう訳にはいかなかった。


父上曰く、父とは手本となるべき存在だからだ。


何も言えずに、私は静かに襖を閉めた



あの事件から十数年……また新たな悲劇が起ころうとしていた
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