異世界ワープ!
夢小説設定
本棚全体の夢小説設定入力しせずに読んでも十分お楽しみいただけますが、
入力して頂くと、より小説をお楽しみいただけます!
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「それにしても、昔みたいな口調は何処へ? もっとこう……ふんわりおっとり〜な口調だったはずでは?」
「……軍人には相応しくない口調でありますので。数々の無礼、申し訳ありませんでした」
頭を下げる少女。まさか謝罪されると思わなかったイデアは目を点にしてギョッとした表情を浮かべると、慌てて頭を上げるように促した。
「サニワ氏が謝る必要ないでござるよ! それに拙者は別にサニワ氏みたいな軍人じゃないから、前みたいな口調でも全然おkですぞ。むしろ敬語止めて戻して欲しいタイプの人種」
「えと……ほな、そないさしてもらうね」
「ヒョアッ」
にこ、と頬を牡丹色に染め、微笑む少女。周囲に花が舞うかのような、少女らしい可憐な微笑は、男子校かつ思春期のイデアの心臓にクリーンヒット。一気に顔を真っ赤に染め上げ、髪の青い炎が同じような赤色に染まった。
(は???? いやいやいや、陰キャオブ陰キャの拙者にめちゃんこカワイイ女子が笑いかけるなんて、拙者前世でどんだけ徳ポイント積んだの? 前世で世界救った勇者だったとか? いや陰キャの前世はどう足掻いても陰キャです本当にありがとうございました。じゃあ今ので人生の徳ポイント全消費しちゃった感じ? は?)
イデアの脳内で上記の言葉が駆け巡るまでおよそ0.3秒。次元○介の早打ちと同程度である。
オーバーヒート寸前のイデアの脳を冷やしたのは、再度玄関のドアを開ける音。今度は学園長だ。今度はその手にほかほかのご飯が並んだお膳があった。
「こんばんはー。優しい私が夕食をお持ちしましたよ!」
「いや、全然優しくないでしょ。普通こんな雨漏りするような場所に女の子を置き去りにしませんが。ゴーストもちょっかいかけて来るような場所ですよ。何? 女の子をお化け屋敷に放っておいて助けに来るなんてどんなマッチポンプですか」
「イデア君、私は別にそんなつもりは……って女の子ぉ⁉︎ え、でも軍人ってさっき仰ってましたよね⁉︎ アナタの世界では、女性でも戦争に参戦するものなんですか⁉︎」
「兵器は工廠で気軽に生産可能ですが、兵士は気軽に生産できるものではありませんので」
少女を二度見、三度見したクロウリー。しかし、男にしては華奢過ぎるしなやかでまろい体つき、オルトよりも低いその身長を見たら否応にも納得せざるを得ない。
クロウリーの問いに対して返ってきた少女の答えは、クロウリーの目から滂沱の涙を流させる。イデアに関しては、彼の顔から全てが抜け落ちたような表情だ。
そんなしんみりとした状況をぶち壊すかのように、先ほど少女を嘲笑したグリムが少女の胸へ突撃してきた。怯える彼の背後には、ケタケタと笑うゴーストたちが。
イデアが訪れた時には既に去っていたので、暇潰しに談話室へ移動したのだろう。そこに待っていたのは、猫のような魔獣一匹。しかもいつものように驚かせば、先ほどの少女とは違い怖がる素振りを見せる。
格好の玩具を見つけた。顔を見合わせたゴーストは、グリムを驚かせ続けた結果、逃げたグリムは少女に助けを求めるように引っ付いてきたのだった。
まあ学園長であるクロウリーが不法侵入者をやすやす見逃すはずもなく、再び追い出そうとする。だがそれを少女が止めたのだ。
クロウリーもイデアもこんのすけも、そしてグリム自身もじっと少女を見詰めた。
「さっき暴れ回っていたモンスターではないですか! 追い出したはずなのに、なぜここに⁉︎」
「……僭越ながら申し上げます。彼を学園においても問題ないのでは? 小官とは違い、魔法が使用できるようですから」
「オマエ……良い奴だな! オレ様の子分にしてやるんだゾ!」
「……仕方ありませんね。良いでしょう。しかし、闇の鏡に選ばれなかった……しかもモンスターの入学を許可するわけにはいきません。それはアナタについても同じです。ただ居候させるわけにいかない」
「は????? それについては学園側の不手際でこっち来たんでしょ? 普通はこっちが誠心誠意対応するべきじゃないの???? 10連ガチャ分の詫び石でも足りませんが???」
「ぐっ……いやまあ、それはそうですので! 当面の宿については、ここを無料で提供します!」
「隙間風が吹くわ、埃まみれだわ、挙げ句の果てに雨漏りするようなこんな小屋を? 学園長、誠心誠意って言葉検索し直して来ては」
「ま、まあまあイデアくん……! ほら、目覚ましたら隣の人が死体になってました的なんはないやろ? せやったら塹壕やトーチカ、潜水艦に比べたら高級旅館やって! ちょーっと可愛らしいお化けがいてはるだけの事故物件なだけで! それに、働かざるもの食うべからずって言葉もあるさかいに、さすがにここで暢気に過ごすわけにもいかへんし!」
さすがに異世界出身のレディを無一文で追い出すわけにはいかない。野郎には鉄槌を、レディにはエスコートを。それがこのツイステッドワンダーランドの常識だ。
しかも少女は転送装置の不具合だと言い張っているが、闇の鏡の責任ももちろんある。それを所有している学園側は、責任を果たす義務があるのだ。
慌てて学園長を弁護する少女。その内容を聞いたイデアは、あまりにも健気過ぎて泣いた。
異世界出身かつ元審神者の、一心に慕う妖狐と尊大なモンスター、そしてお茶目なゴーストたちによる同居生活が始まろうとしていた。