異世界ワープ!
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彼の名はイデア・シュラウド。名だたる格式の家の出身であるものの、その枕詞は「呪われた」。
基本的に他人との接触を避ける彼があんなにも明るい声を出すなんて。イデアと同じ部活に所属するタコの人魚は目を点にしていた。
「その声は……イデア、くん?」
「もしかしてサニワ氏でござるか⁉︎ ご無事で何よりでござる‼︎ あの後拙者はもう! 本当にもう‼︎」
「はいはい、感動の再会は後にしてくださいね。全く……。ほら、闇の鏡の前に立って!」
仮面の男に腕を引っ張られ、少女は鏡の前に立たされる。鏡には少女の姿ではなく、男の顔だけが映っていた。
その顔は血の気が全く感じられず、眼球もない。アンティークの仮面のような意匠だ。
「この者からは、魔力の波長を一切感じられない……色も、形も。一切の無である。よって、どの寮にも相応しくない」
「そんな……魔法が使えない人間を、黒き馬車が迎えに行くなんてあり得ない!」
「お言葉ですが、小官は黒色の馬車など目撃しておりません。誰かの間違いではありませんか?」
「ですがその式典服を着用しているということは、新入生……少なくともこのNRCの学生のはずです。とはいえ魔力のない人間が選ばれるのはここ百年でも事例が確認されてない。参りましたねぇ……」
「ふなっ! だったらその席を譲るんだゾ! そいつと違って、オレサマは魔法が使えるからな!」
グリムと名乗る妖怪が、青色の炎を放つ。少女は近くにいたターバンの男を咄嗟に突き飛ばした。
お陰で少女の式典服の裾が少し焦げた程度だが、ターバンの男は無事である。
「庇ってくれたのか? ありがとな!」
「……いえ。民間人の盾になるのは、軍人として当然であります。それに今は、あの妖を仕留めねば」
じっと暴れ回るグリムを睨め付ける少女。幼気な少女らしからぬ殺気が一機に溢れ出し、周囲を怯えさせる。それはグリムや庇った男だけでなく、周囲の人間を怯ませるには十分だった。
その隙にリドルと呼ばれた男が首輪をグリムに装着した。力ずくで取り付けたのではなく、魔法により、一瞬で。
「首を刎ねろ!」
「クッソー! こんな首輪、すぐに燃やして……あれ? 炎が出ねぇんだゾ‼︎」
「さてと、学園の外に放り出しておきましょうか。鍋にしたりはしません。私、優しいので」
グリムは嫌だと暴れ回るものの、それこそ猫が引っ掻くように、痛くもかゆくもないものだ。
抵抗も虚しく、首根っこを生徒に掴まれ、そのまま学園の外に放り出された。
「……少々トラブルがありましたが、無事入学式も閉幕しました。さ、鏡の前に立ってください。闇の鏡がアナタを家まで送り届けてくれることでしょう」
仮面の男に促されるまま、再び鏡の前に立たされた。彼の言う通り本当に紆余曲折あったけれど、これでやっと本丸へ、刀剣男士の元へ帰れるのだ。
安堵の吐息を零しながら、言われた通りに本丸のイメージを強く浮かべる。梅や桜、桃など色とりどりの花が咲き乱れ、水は何処までも見通せるほど透明な、まるで極楽浄土のような場所を。
しかし。闇の鏡が告げる言葉は、少女を絶望の淵にたたき落とすには十分だった。
「どこにもない……」
「え?」
「この者のあるべき場所は、この世界のどこにも存在しない……無である」
「なんですって? そんなことあり得ない! あぁもう、今日はあり得ないのオンパレードです! そもそも貴方はどこから、黒き馬車が迎えに来ないならどうやってこの場所に……」
「……恐らく、転送装置の不具合かと推測しております」
「転送装置? 何ですそれ。あぁここでは何ですので、場所を移動しましょうか。話は移動中でも出来ますから」
図書館までの移動中に少女は転送装置、そして歴史修正主義者による襲撃事件など、ここに来るまでの経緯を事細かに説明した。
今まで暮らしていた世界は時間旅行が可能なほど科学技術が発展していたこと、魔法はファンタジーの世界の代物であること、この狐は彼女の使い魔のような存在で、人語を解する知能を持っていること。
男は口元に手を当て、少し考える素振りを見せた後に納得した顔を浮かべる。仮面で隠れているせいで、他人にはあまりわからないが。
「……なるほど。貴方の地名はこの世界の地図どころか、有史にも存在しないものですから、異世界から来たという話も合点がいきますね。ところで転送装置のバグ、というのは?」
「転送装置の仕組みとしては、移動させるものを断片化して転送し、後に再構成するというものです。それが不具合を起こせば、小官のように見ず知らずの場所に飛ばされたりします」
「ただ今回は、このように生きている分まだまだマシな方でして……再構成されずにバラバラになった状態での転送や、結合不良の状態で転送されたりなど……まあ肉塊になって転送されるわけですね」
「ア゙ビャ゙ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー‼︎‼︎‼︎‼︎」
仮面の男はけったいな鳴き声……否、叫び声を上げたのも無理はない。彼はこのNRCの学園長を勤める男ディア・クロウリーだ。
魔法を扱うにはイマジネーションが必要。その学園長、しかも名門校となればその想像力は相当なものが必要とされる。こんのすけによって語られたグロテスクな話は、学園長をSAN値直葬するには十分過ぎる威力だった。