異世界ワープ!
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時の政府の施設の会議室。その中で行われているのは、敵勢力に関しての軍事会議だ。室内はさまざまな意見が飛び交い、侃侃諤諤と議論が白熱する中、会議の参加者は皺だらけ、傷だらけの顔を歪めていた。
腰を下ろすメンバーはどれも堂々たる恰幅の紳士ばかりだが、ただひとり、豪奢な椅子に腰を下ろす少女。十代という若さで少将に昇進した実力者である彼女だけは、心底どうだって構わない、という風情で小さな欠伸を零した。そんな彼女のサポートを担う妖狐・こんのすけは、会議に差し支えのないよう小声で咎める。
「主さま、会議中ですよ」
「この会議は必要か? 時間と軍事費の無駄遣いにしかならんだろうに」
少女が面倒そうに頬杖をつき、溜め息を零したその直後。突如として爆音が響き渡る。その衝撃は凄まじく、少女の身体は吹き飛ばされた。
瞬く間に悲鳴と怒号が埋め尽くされ、一瞬で地獄絵図へと様変わりする。歴史修正主義者が時の政府の施設を襲撃したのだ。
会議室ごと吹き飛ばされ、少女はしばらくの間意識を飛ばしていた。それはこんのすけも同じだった。しばらくして目を覚ますと、少女は血に塗れた遺体に埋もれていた。
遺体は袈裟斬りにされたものや、首を刈り取られた状態のものなど、どれも明確な殺意を持って行われた犯行だということが伺える。
少女は、自身の職業が彼らと戦闘する職業であった。そのせいか、テロリストの犯行だと事件発生当初から察知していたので非常に冷静沈着である。
阿鼻叫喚と化した施設から自身の本丸へ帰還するべく、スイセンはこんのすけを連れ、すぐさまゲートへ向かった。しかし負傷した大勢の人が殺到し、ゲートへ向かう通路は元来細い造りというのも相まって、ゲートはパニック状態に陥った人間で溢れていた。
ここに留まれば恐らくすぐに捕まるなり、虐殺されるのが目に見えている。
とは言うものの、護衛の刀剣男士が連れていない丸腰の状態で武装しているであろうテロリストたちと交戦するのは、自殺行為とほぼ同意義だった。
「あ、主さま!?」
「一旦ここから離れる。静かに」
しばらくゲートから離れ、物陰に潜み様子を観察すべきだと判断した少女は、人の波を掻き分けて逆方向へ進む。
彼女の予想は的中し、時間遡行軍はゲートに殺到した人々を問答無用で斬り捨てていった。こんのすけはあまりに酷い光景に声を上げようとするも、少女が咄嗟に彼の口を塞ぐ。
粗方殺戮し終えた歴史修正主義者は生き残りを殲滅するべく、ゲートから移動し始めた。一人残らず移動したのを見届けたこんのすけと少女は、見つからぬように移動して転送装置を起動させる。
ところが、後少しというところで歴史修正主義者に発見されてしまい、刃を向けてきた。こんのすけは瞬時に結界を張って敵の一閃をどうにか防いだものの、それを破られるか否かは時間の問題であった。
「こんのすけ、あともう少しだ! 耐えろ!」
「も、もう駄目かもしれませぬ……! 主さまだけでも早く!」
「阿呆言え、一緒に逃げるんだよ!」
転送装置が起動し始め、眩い光がスイセンとこんのすけの身体を包み込む。それと同時にこんのすけの結界が破れ、歴史修正主義者が妖しく輝く日本刀を横に薙いだ。
爆音と黒い煙が周囲を包み込む。
煙が晴れた後、そこに残っていたのは、無惨に破壊された転送装置だけだった。
そして、彼女が目を覚ましたのは。真っ暗な空間だった。視界が突然明るくなったかと思えば、黒色の猫のような狸のような妖怪に、服を寄越せと炎を吐いて脅される始末。携帯している拳銃で応戦しようにも、手元にはなかったし、そもそも会議に出席していた際の軍服ですらない。
不幸中の幸いか、こんのすけだけはまだ意識を失っているだけで、彼女の腕に抱かれていた。
応戦できる術が無ければ、ただ逃げるしかない。戦略的撤退だ。狸のような妖怪に背を向け、ただひたすら逃げ回る。
三途の川ではないのなら、ここは一体何処なんだ。ひたすら逃げ回っていると、幾多の本が収められている部屋へ行き着いた。図書室だろうか。
こんのすけも目が覚めたようで、ここは? とこてんと首を傾げているが、少女自身も全く以て不明な状況だ。
「ふなっ! 見つけたぞ、オレサマの鼻から逃げられると思うなよ!」
ここで先ほどの火を放たれてしまっては、可燃物の塊である本に引火し、たちまち炎の海に変わるだろう。
歴史修正主義者に襲撃されて死んだかと思えば、今度は妖怪に焼き殺されるのか。まあさっき一度死んだようなもんだしなあ、と覚悟を決めて目を閉じた。その時だった。
あっという間に妖怪を雁字搦めにしたのは。ペストマスクの意匠を凝らし、それでいて仮面舞踏会の際に身に付けるようなアイマスクをした男だ。
妖怪に襲われたと思ったら今度は不審者に助けられた。一体何がどうなっているんだと混乱状態に陥っている少女を、アイマスクの男が叱りつける。
「扉を開けてしまうなんて。どれだけせっかちさんなんですか! もう入学式は始まっていますよ」
「お、お待ちください! 小官はっ……」
「はいはい、行きますよ」
男は少女の腕をがっしりと掴み、つかつかと連行していく。その行き先は、大きな鏡のある、目覚めた時の部屋だ。
部屋に入ると、一部から声が上がった。ゔぉ、とかゔぇ、とか、異臭を嗅いだ時の呻きである。
黒ミサの最中であろうか、何かフード付きの儀式の格好をした者たちが大勢いる。その中に、見知った声があった。かなり早口で捲し立てるその声は、少女にとってかなり親近感を覚えるものだった。